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4等分の彼女  作者: MOMO
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ep.1 新たなる旅路

 選ばれし勇者でもなんでも無い普通の子供が味わうにしては豪華過ぎる体験だった。


 あの時の夢のような光景を俺は未だに越えた記憶が無い。


 正直緊張し過ぎて食べた物の記憶なんて無い。


 年を重ねるに連れて他者との関わりを持つに連れてますます彼女達との思い出が脳裏に焼き付いたまま離れずに存在していた。


 然しながら眼前に座る男はその話を聞いたとて微動だにせず信じようともしなかった、無論その筈だったが。


 「和野殿、何度も言いますがそれは只の夢にござるきっと暑さで頭がやられていただけの話」


 「....」


 「普通に考えて可愛い女の子が現れるなんてスマホの見過ぎでござる」 


 「お前もそうだろ」


 普通に考えてみれば当たり前の事だった、異世界のゲートが開いた話なんて普通に考えてみれば信じる奴は存在しない。


 ただ、あの日主神が俺に伝えた呪病の兆候は目に見えて分かるようになっていた。


 俺は無言で胸元の方を指差すと相手は溜息を吐き校則に違反すると、今度の体育をどう乗り切るか悩ませていた。


 「その痣....本当にタトゥーでは無いので?拙者まだ信じられぬでござるが余りにもリアル過ぎるというか....いつ見ても身の毛がよだつ模様にござる」  

  

 次第に広がっていく皮膚の黒い変色がある起点にカーブを描き起点から中央に斜めに進み角から再び進み対象として元に戻る、線はやや凸凹であるが縁から軌跡がフレアのようにもしくは血管のように蝕みつつあった。


 「本当に助かるのでござるか?」


 「心配有難いが助かると聞いている、一応な」


 「一応って....命に関わる事なのに随分余裕に見えますが、タトゥーだと言って欲しいと、むしろそっちの方がまだマシにござる。しかも見てるとこちらの気分が....」


 「....」


 「和野殿?無視にござるか?」


 「....」


 「おーい?」


 考え事を少ししてた、おれの今後について治ったら治ったでまた他にやれる事が沢山見つかる筈なんだって。例え彼女達に永遠に会えずとも。


 ――それにしても妙に重苦しいな....身体が熱い気がするし安藤の声がぼやけて聞こえる。この気分は一体何だろうか


 あぁ、そうか確か軽減出来るだけだって言ってたような気が―――


 「和野殿!?和野殿!?今すぐ救急車を――」










######





 

 実生活において特に苦労した事は無い、俺自身がただ考えられるだけ考えて日常を過ごしていただけだ。


 正直に言えば此処に来るまで何度も死に関して恐怖を感じた事はあったしそれに絶望で上手くいかなくなった事もあった。


 でも今回ばかりはさすがに死を自覚した。


 そして次に現れたのはあの日見た夜空の世界だった。地面までも遠くの星々の青い薄光で照らされ足元の水が波紋を伝えている。


 中央の灯籠が存在していると、其処を起点として四つの星屑の道が続いている。その先には手綱がつけられた古びた鳥居が建てられていた。


 俺は中央まで進み灯籠に作られた窪みに嵌められた透明色の石が反射して青白く輝いているのを確認した。


 「....君がこうなる事は正直予想はしていなかった、というか多分無理だと思っていたがまさかやるとは思わなんだ....敢えて言おう、よくぞ繋いでくれた」

 

 あの頃と何ら変わらない姿の女が天頂に座り、俺を見下ろしていた。


 「....」


 「どうしても見捨てる事が出来なかったようだが、それは君の単なる哀れみからくる偽善的正義心なのかい?それとも思春期的性質で女の子の好感を買ってあわよくば付き合いたいとか思ってるとか?」


 俺は大方予想していた、昨今のライトノベルなんちゃらではこう言った展開は自分好みに上手く行くっていう感じで無双レベルで気持ち良く進んでいくのだろうと。


 だが現実で俺は世界の取るに足らないモブの一人に過ぎない。分かっていた事だが尚更何故に俺なんかを助けようという気になったんだろうか。


 「正直言えば君には興味は無い。本命では僕はその忌々しい呪いを探していたんだ」


 「それはかつて貴女を俺の世界から追放した誰かという事ですか?」


 「いや、僕は望んで君の世界との接続を絶った。代わりに厄介な一つの呪いである奴の復活が宿っているのがソレだ」


 主神が指をさしたのが呪病だ。これは紛れも無く事実であり主神が遺恨として完全に断ち切るべく転生先の俺を狙っていたのだった。


 「確かに主神の言う通り、俺は何もせず自分の世界に大人しく住んでいればこの胸の呪も無く元気に暮らせていたのかも知れないでしょうね、しかしこれと言ってそうとは限らなかったんです」


 「....聞こう」


 「貴女は眷属である彼女達の命と引き換えに俺を助けるんですよね?」


 なんとなく体感的に呪力がとうてい一人や4人の生命ではどうこう出来る問題では無い事ぐらい分かる。


 この主神はなるべく被害を減らす為に苦肉の策としてそうしたのだった。


 「それが本当なら責任は俺にもあります!何の罪も無い彼女達が俺の為に死ぬなんてそんな」


 「....仮に僕が汚らしい人間を代わりとして置いてたとしたらどうする?全く関係無い見ず知らずのオッサンに変えてもいい、そしたら君は助けに行くか?」


 「....」


 俺の沈黙に主神は舌打ちをして左手を俺の首元に差し出した。


 「っ゛....」


 勝手に締まりはじめ脚が浮き、身体は彼女の元へ運ばれる。


 「やはりそんな薄っぺらいもので....相手が女だったからとか言う下賤な理由で自分の責任がどうとか偉そうなセリフをよくも恥ずかしげもなく言えるな....僕が居なければ何も出来ない癖に、封印なんぞ解きやがって無能が」

  

 超常的能力、本来力を与えられ夢物語のような能力を発揮する。


 実際対峙してみるとこうも恐ろしいものか。


 チートを越える力を扱える者との圧倒的な格の違い。

 

 俺は今現在、彼女の裁量で生かされているのだ。


 「善意だと思ったか?お前は只の贄に過ぎない事を覚えておけ」


 やっと手を離された俺は地面に倒れ喉に支えてた物が咳となって込み上げていた。

  

 分かってるさ、所詮普通に生きて死ぬだけの人間に何も望まないだろうそんなのが何かするだなんて言っても信じるわけが無い。


 正直こうなる事よりも彼女達が頭を離れなくてどうしようもない。


 沸々と沸き上がってくる欺瞞のようでぼんやりとした抽象的な何か。

 

 俺はソレに駆られるように動かざるを得なかった。


 「最初からそのつもりで此処に居る事ぐらい分かってるだろ?」


 続いて主神は指を鳴らした。こじ開けられ引き裂き吸い取られるような低めの音程と共に鳥居の一つに異空間へと繋がるゲートが出現した。


 俺はこの道を知っている気がした、かつてナタを持ち興味本位で実家の歴史書から得た知識で大凡の位置を探り誰も寄り付かぬ獣道へ辿り着き、黒ずみ苔むした綱を一思いに叩いた。跳ね返されようとも何度も叩き断ち切れる頃には魂のようなうめき声が響き渡ったのを感じていた。


 もう後戻りなんて出来ない事ぐらい覚悟していた。


 その次の日の夕方頃に件の場所に呪が出現した。


 なんとなく共鳴している実感が湧いたような気がした。たった一度彼女達に会っていただけなのにまた会いたいと思ってしまう己自身を抑えきれなくなっていた。


 「その共鳴する条件こそが彼女達が望み君と分かつのを選んだ何よりの証拠なんだ、本当の苦労は此処からだと世界が伝えているように、しかし君は其れでも向かうのだろう?」

 

 俺は頷き拳を握りしめた。


 「あの人達を解放する条件を教えてくれ」


 主神は腰下までもある艶やかな髪を払い、脚を組み直した。


 「相手の最も望む事をしてあげればいい、そしたら一部が浄化されまた次へと道が開くだろう。まずは指し示した世界を進める、恐らく最も安全だと認識している この中ではな」


 「この先には何が?」

 

 「君を最初に迎え入れた娘が次期女王として務めている大国へ召喚しよう」

 

 最初はエリサと出会う事から始めろという訳か。

そして彼女の望みを実現し、呪いを浄化する。


 禄に実績を残しても無い俺が命をかける馬鹿馬鹿しい行為で危険な世界へ飛び出していく冒険がまさに今始まろうとしていた―――

 

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