4.僕と猫と月と公園
………あーーーなにしてるんだろう。
見知らぬ土地で全力疾走。迷子にならない訳もなく。落ち着きを取り戻した頃には、見知らぬ公園に1人。僕は、完全に不審者と化していた。
「ちょうちょ公園」いい名前だ。なんて現実逃避をしてから、一通り公園をウロチョロする。
ちょうちょ公園には、ちょうちょが来そうな花が咲き乱れている…というより、落ち葉と花の残骸が枯れ乱れ、閑散としていた。枯れ果てているせいでなんの花が咲いていたのかすら分からない。
住宅街のど真ん中にあるこの公園は花壇に囲まれていて、転んだら痛そうな砂利の上にブランコと鉄棒、中央にはラスボスみたいな滑り台つきのでっかい遊具が幅を利かせている。ブランコに座ろうかと近づいたが、泥まみれのイスを見てやめた。立ち漕ぎした形跡のある土を、おろしたてのスーツにつけるのは流石に気が引ける。
僕は花壇の横にベンチを見つけてよっこらせと座り込むと、現在地の確認をかねてバッグからスマホを取り出した。
業務メール以外届かない通知欄を(念のため)確かめてから、g◯◯gleマップを開くとどうやら家からそんなに離れてないことが分かった。引っ越したばかりで土地勘もなかったが、隣町らしい。
「経路」とかかれた場所をタップすると、20分という数字とマップ上に青のラインで経路が示された。最近のスマホはハイテクすぎる。
これなら歩いて帰れそうだ。ほっと息をついて、自分の手に提げられたレジ袋に目をやる。
…と、目線をズラしたことで更にコンタクトがズレたらしい。ただでさえカピカピな上にズレてボヤける視界。これはまずいかもしれない。
僕はコンタクトが落ちないように目をつぶると、手探りでビニール袋から箱を取り出す。
苦戦しつつもなんとか中の目薬らしきケースを見つけて、薄目で確認。
「あなたの忘れたいことはなんですか?」
まず視界に入ったのは、こんなキャッチコピーがデカデカと書かれたラベル。
次に、ラベルが貼られた透明のケース。
…青い溶液。
どう見ても目に入れる色ではないが…。
背に腹はかえられない。
僕は空を仰いで、目薬を滴下。
途端、目に潤いが行き渡るのを感じた。
日頃の疲れが一気に取れるような。
心なしか瞼があたたかいような。
目を閉じて微睡んでしまう。
風が優しく頬を撫でる。
近くに川でもあるのかせせらぎが聞こえる。
虫の鳴く声と、車の走行音。犬の遠吠え。
…今日は疲れた。仕事でも沢山やらかした気がするのに、さっきの店員さんとのやりとりなんて…
黒目がちな瞳に見つめられて、僕はどうにかしてしまったのだ。目が離せなくなって、動悸は早くなって、まるで魔法にかけられたみたいな…ムーンパワー…
もう少し気の利いた事を言えればよかったのに、頭が熱くて完全にショートしていた。
全部空回りした会話も、可愛くて話しかけたくなってしまった出来心も、恥ずかしい。
ほんとに、
忘れてしまいたい。




