2.僕と猫と月と薬局
胡散臭そうな金色の箱だ。表にはデカデカと商品名が書かれており、裏の成分表示には、ポピー、タツナミソウ、グラジオラス…生薬と呼ぶにしては植物名すぎる言葉が並んでいた。
お値段なんと100円。怪しさ万点である。
普段の僕なら買うだろう。怪しいものは興味がそそられる。100円ならお手頃だし、これで例えば頭痛とかに苦しんでも話のネタくらいにはなりそうだ。薬局で買ったなら出所はハッキリしてるんだろうし、、、見た事ない会社だけど。
そして今日の僕ももちろん怪しい箱を手に取って、棚の背後のごちゃごちゃしたレジに置いた。というのも、見た事ない栄養ドリンクだとか、ティッシュ箱だとか、レジ前には堆い商品が所狭しとレジの机を圧迫していて。
無人の古いカウンターには緑の机の上にいかにも骨董品な呼び鈴がちょこんと乗っている。
上から軽く押さないと音がペチャってなるタイプの呼び鈴だ。気後れする。
僕はカウンターの奥にある調剤室を眺めて人影を確認すると、声をかけるか3秒迷って、結局(なるべくソフトに、垂直に)呼び鈴を鳴らした。
チリーン
軽快な音ともに「はーい」と声が聞こえる。僕が呼び鈴が成功したことを密かに喜んでいると、店員さんがとたとた走ってきた。
「いらっしゃいませ〜」
のほほんとした声が店内に響くと同時に、小さな手が目の前の古びた引き戸を軋ませる。1人分のスペースをあけて滑り込んできた、淡い桃のエプロン。肩で緩く巻いた焦茶のボブに、白皙の頬にさした長いまつ毛、揺れる瞳…目が合う。
その瞬間、僕は雷にでも打たれてしまったらしい。建物の中なのに。
彼女を一目見て、僕は、おかしくなってしまったようだ。鼓動が早くなって、顔が一瞬で赤くなるのを感じる。胸の奥がむず痒くなって、いたたまれないような、愛おしくて、微笑ましいような。僕を見つめる彼女の大きな瞳から、目が逸せなくなってしまっていた。




