1.僕と猫と月と目薬
「…なんだこれ」
目でも悪くなったのか?
いや、目は確かに悪いけども。
悪いから、目薬を買おうと薬局に来たんだし。
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月が綺麗な夜だった。
僕は近年稀に見る普通のサラリーマンで。ただ少し人生に失敗が多いだけの独身で。
今日も退勤中の車内で、もはや恒例になりつつある『1人脳内反省会議』を開きながら、これまた恒例になりつつある寝落ちをしかけていた。
…いや、した。
起きた時には見知らぬ駅で、しかも寝落ちでカラカラに乾燥したコンタクトが悲鳴をあげていて。僕は急いで飛び起きて、ドアが閉まりかけていた電車から転げ降りて、とりあえず駅前にあった小さな薬局にこれ幸いと駆け込んだ訳だ。
本当に小さな薬局だから、目薬コーナーと呼べるものは入口すぐに見つかった。品数もさして多くない。それでもこんな小さい空間に押し入れるかってくらいの密度で陳列されている。古びた木製の棚が心なしか悲鳴をあげているような。
僕は少し低めの棚に目線を合わせるようにしゃがんでから、ゆっくりと商品を見ていく。
「ドラッグストアのスーってする目薬なんて、何入ってるか分かんないですからねぇ笑」
最近常連になりつつある眼科で言われたそんな言葉を思い出して、うーんと唸る。
せめて二類なら少しは信頼してもいいんじゃないか?コンタクト直すだけだし
そう思って、二類と書かれた商品を探していた筈なのに…なんだこれ、零類?なんこれ。
薬局に存在していい数字なのだろうか。もはやショーケースの中にとかいうレベルじゃなくて、神棚に飾ったほうがいいのではないか。
僕の手は一瞬宙を彷徨って、興味には勝てずに箱を取り出した。
【忘れたいものを忘れられる薬】
…やっぱり、神棚に飾るべき代物だった。




