キメラの雷鳥さがし 348
「氷室があんなに寒いなんて思わなかったよ。出てきちゃったけど、何か策でもあるの?」
転移術で屋敷の外に出て来た私は、外気にホッとしつつ屋敷を見上げた。ファルに言われて、堅牢な作りの外観を見渡して、ある一点を指さした。
この世界の平民の家は木造が多いけど、このノルウェーノの街は石と木を上手く使って建築している。そして特徴的なのが、壁を青白く塗って統一している。
現代でいうスペインのフスカルの様な街並みだ。ファルの前調査では、この街は氷の精霊を崇拝しているので、精霊の作る氷塊の色を模しているのだとか。
「崇拝しているのに、氷土竜を幽閉しているなんて変な貴族よね。調べに入っている悪徳貴族と街の人の信仰心には温度差があるのね」
「犯罪に手を染めている時点で信仰って何?っていう部類じゃない?ところで、あの壁が何か問題でもあるの?」
ギデン子爵の屋敷も、石積みで作られた屋敷の外壁を青白い色で塗られている。
「ファル、普通部屋には窓があるよね?」
「あるね。氷室や倉庫でないかぎりは」
「あの3階の窓が無い部屋の壁があそこ、その下の階もずっと窓の無い壁のまま、変だと思わない?」
じっと見つめていたファルが、何かに気付いたみたいだ。
「あの窓の無い部屋の下は階段?!でもあの部屋には入口が無かった‥‥」
「悪い人間って往々にして、自分の目の届くところに大切な物を隠したがるのよ。あの執務室の下の階はご令嬢の衣裳部屋があったでしょう?」
「それだ!衣裳部屋なら多少狭くなっていても上の階の仕切りが分かって無いから、気付かないってことだね」
身を乗り出して謎解きをしているファルは楽しそうだ。
「そう言う事で、私は子爵の執務室か隠し部屋に階段があると思うの」
「ヒマリ、ナイスな推理だよ。早速行ってみよう!」
その弾んだ声と共に、ラレーヌが転移術を使った。
再び戻って来た子爵の執務室。
静寂の中に煌びやかな調度品が独特な雰囲気を醸し出している。
ファルは隠し部屋から探し始めたけど、私は本棚や床をノックして回った。
「何してんの?」
「叩いて音を確かめているの。中が空洞なら音が違うから」
「へぇ、この部屋を探すってことは、ヒマリはこっちに有ると考えている?」
「ギデン子爵の様な人って猜疑心が強いと思うの。そんな人が自分の目の届かない場所に隠し階段なんて作らないと思ってね」
「確かにね、私だったらお尻の下に隠しておくよ」
笑いを取ったのだろうけど、ファルも途中で気付いたみたいだ。
2人で顔を見合わせて、ギデン子爵の大きな執務机の椅子を退かして足元を見た。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




