キメラの雷鳥さがし 345
音もなく1つの本棚が後ろに下がって引き戸の様に横へスライドした。
ヒンヤリした空間が、本棚の後ろに広がっている。窓の無い空間に本棚があり、そこに数冊の帳簿があった。
光の呪文で明るくして、帳簿の中身を確かめているファル。
その間に他に何もないのかと見回っていると、本来、窓際であろう壁の近くに小さな卵が1つ安置されていた。
「この卵って、精霊の卵?」
「うーん、どうだろう?」
『割らないでよ、ファル!』
親近感を覚えたチャチャが、ファルに慌てて物申している。
聞いてみたものの、その卵が鑑定もしていないのに精霊の卵だと判断したのは、無意識の見解だった。
ファルは黒っぽく見えるというけれど、私にはアクアマリンとエメラルドグリーンを混ぜ合わせた感じの色に見えていると話したら、目がおかしいと視力を疑われてしまった。
『私も同じ様に見えているから安心して、多分、チャチャにも同じ様に見えているわ』
「私の眼が精霊と同じものが見える様になっているってこと?」
『多分、ラピス様の恩恵だと思うわ』
ああ、ラピスが私と行動を共にしているし、その力を一部貸してくれているから?
いろいろ疑問点があったけど、それを明確に出来るほど精霊を理解しているとは思えない。まだまだ私にとっては、未知なる存在の精霊たちなのだ。
「ところで、この卵が精霊の卵なら保護した方が良いよね?」
「まぁそうなるよね。だけど、真っ黒だし中身は生きているとは思えないけどさ、親元に返してあげた方が良いかもね」
「ラピス、預かってもらっても良い?一番安全な気がするの」
『良かろう、卵をヒマリが持てば我が預かる』
ラピスの言った通りにすると、卵は私の手の中から消えた。目を閉じるとラピスが懐で温めている。
「ヒマリ、もしかしたらこの屋敷に精霊が囚われているかもしれない」
散らばった書類を片手に、ファルが低い声で唸る様に言ってきた。
「何か痕跡があったの?」
「この売買契約書を見てたら、卵の後に氷土竜を購入した契約書が出て来たんだ」
「それって、風炎鳥の王子が助けてあげてってお願いしていた子?」
ペラペラと帳簿と売買契約書を見て卵の日付が2年前で、氷土竜の日付が1年半前だった。
「たぶん、違う個体だね。精霊は全員救うんでしょ?だったら、何処にいるか探さないと」
「氷土竜って氷を操るの?」
「そうだよ、綺麗な純度の高い氷を作る精霊なんだ」
『氷の彫刻家と言われるくらい、とても美しい世界を作るので有名なの』
へぇ、凄いハイセンスな技術系の精霊なのね。
そんな精霊を買うって、キデン子爵はどんな目的で手に入れようとしたのか?
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