フランス西部ノルマンディー地域圏ルーアン上空
ルーアン上空に達した短距離弾道ミサイル〈プリュトン〉は、核反応を誘発するための爆発が起こると、その中心で原子核を構成する陽子・中性子間の核力が、一気に熱エネルギーや運動エネルギーに変換された。すると、量子世界の静寂の中に1点の光が生まれた。その光が輝き始めた時、時間がまるで一瞬止まったかのように見えていた。光は瞬く間に膨張する火球となり、表面に発生した衝撃波は爆風となって周囲に拡散した。その温度は数百万度に達し、全生物にとって致命傷となる強力な衝撃波によって周囲のすべてを焼き払った。それはルシファーでさえも例外ではない。死はあらゆる生命に公平に訪れ、ルーアンにいるすべての命を奪った。
核爆発による洗礼は、熱線や爆風・爆圧による建造物・兵器・人員に対する直接的な破壊に留まらず、残留放射線は物陰でわずかに生き残った命さえも無慈悲に遺伝子(DNA)の損傷を引き起こした。
ルシファーにとって捕食に対する特出すべき能力、それは優良な餌場への最短距離を同族同士の接合ネットワークで導き出す能力が仇になった。ルシファーはルーアンに集まりすぎていたのである。ルシファーは核の熱に耐えることが敵わないと知ると芽胞状態になって逃れようとしたが、膨大な熱量は芽胞ごと焼き払った。たまたま障害物の陰で爆発の直撃から免れていたルシファーすらも、残留放射線によって遺伝子(DNA)の損傷を受け死に至った。
こうして巨大に成長したルシファーの苗床は死滅したのである。しかし思考することがないルシファーにとって、それは単なる個体数の相対的な問題でしかなく、怒りも、悲しみも、恐怖も、何も感じることはなかった。単にこの世界に侵入したばかりの頃の個体数に戻っただけのことである。




