イギリス海峡上空
イギリス海峡上空では敵性来攻生物の海峡越えを阻止する戦いが続いていた。ドラゴンの迎撃に用意されたイギリス王立空軍の戦闘機は、すべてユーロファイター タイフーンであり、超音速飛行が可能だけでなく、空中戦闘能力と対地攻撃能力の両方を1機種でカバー可能な最新鋭の機体である。もっとも優れた特徴は、耐Gスーツと加圧呼吸装置により急激な速度変化や旋回が可能であり、羽ばたきと尻尾の傾斜によって得られるドラゴンのアクロバット飛行にも十分対処が可能であった。
イギリス王立空軍はレーダーとCICによる航空管制を用いた本土防空システムを構築していて、防空の要であるユーロファイター タイフーンは、多機能情報伝達システムの端末を搭載しており、北大西洋条約機構の新しい標準的戦術データリンクであるリンク 16のネットワークに参加することができた。リンク 16は、海軍用のリンク 11と空軍用のリンク 4を統合する新しい規格であり、アメリカ合衆国軍の作戦機、早期警戒管制機、地上レーダーサイトに加えて、イージス艦、航空母艦、パトリオット地対空ミサイル部隊など他軍種の部隊との情報共有すらも実現するものであり、その情報を元に効率的な統合作戦行動が可能であった。
さらにイギリス王立海軍は、レーダーピケット艦と言える対空捜索レーダー搭載のピーコック級哨戒艦が大陸方向へあらかじめ進出しており、同哨戒艦からの報告で、ドラゴンは大陸上空を飛翔した瞬間から動向が把握することができた。インヴィンシブル級航空母艦群に配備されていた方位と距離を測定するSKレーダーと高度を測定するSM-1レーダーによって、正確な位置情報が割り出され、北上するドラゴンの動きがあれば、ただちにスクランブル警報が発動された。予測される飛行ベクトルから、ユーロファイター タイフーンが誘導され、攻撃に優位となるドラゴンの手前上空位置にて待ち受けていた。
上昇気流の少ない海上の上空では、敵性来攻生物の中でも大型のドラゴンは体重と翼の大きさから主に滑空による飛行となる。翼の羽ばたきによる飛翔では、筋肉疲労により数秒から数十秒しか持続できないからである。
滑空では単調な飛翔となる。イギリス軍は主力戦闘機と哨戒艦を集中運用することで、海峡を越えようとするドラゴンに集中攻撃を続けることで、次々と海に落とし、イギリス沿岸都市への到達を封殺することに成功することができていた。
アメリカ合衆国軍も本格参加すると、対地版早期警戒管制機とも呼べる機体であるE-8 ジョイントスターズがフランス北部沿岸のドラゴンにまで目を配り、移動パターンを基にして、相手の移動目的を推測することができるようになった。次第にフランス北部沿岸にドラゴンを釘付けすることにも成功するようになり、グレートブリテン島本土の南部海岸にも、強固な対空防衛線が構築されると、完全な迎撃体制が整った。
この結果、イギリス海峡上空の戦況はイギリス王立空軍側の有利に進み、制空権は完全にイギリス軍が掌握することになった。このため一度もドラゴンがイギリス海峡を超えることはなかったのである。こうして、イギリス海峡上空の戦いはイギリス王立空軍の勝利によって終焉した。




