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フェアリーリング  作者: 坂井美春
第四章 ネーデルランド
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ベネルクス3カ国

 人々が気づいた時には、オランダ北部は蹂躙され、さらにオランダ南部からも人間が追い出されようとしていた。しかしながら、オランダだけでも約1700万人の人口を有し、全員を避難させるには時間が不足していた。ヴイーヴルの拡散する最前線と後発の避難民の移動がほぼ重なっていたため、避難民にもヴイーヴルによる犠牲者が出る有様であった。

 この状況になって事態の深刻さが理解され、オランダの西側では、ベネルクス3か国による地上軍がベルギー方面に西部戦線ともいうべき防衛線を構築することが計画された。一方、オランダの東側でも、ドイツ連邦共和国・オーストリア共和国の連合軍が東部戦線ともいうべき防衛線を構築し、迎撃の準備を整えていた。いわゆる、敵性来攻生物包囲作戦である。

 オランダの政府閣僚はすでに国外退避していたが、事務次官以下の官僚機構やオランダ王立陸軍は、国内に残って国民の避難の指揮をとり続けていた。その努力ゆえに、オランダ国内からは国民の避難がほぼ完了し、周辺国の一時避難所や一般宿泊施設などに分散して身を寄せていた。

 このように人々の目がヴイーヴルにのみ向けられていたが、放棄された都市の奥深くでは、次々と真正粘菌ルシファーの苗床が造られていたことに誰も気づくはずもなかった。真正粘菌ルシファーも、アムステルダムから着々と感染を拡大していたのである。

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