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フェアリーリング  作者: 坂井美春
第三章 アムステルダム
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アムステルダム市内

 アムステルダムに朝がきた。ベムスター干拓地ミサイル爆発事故以降続く原因不明の曇り空以外は、いつもと変わらない朝であるはずが、市内から小動物が消えていた。犬、猫、小鳥、ありとあらゆる小動物が、市内から姿を消していた。普段は市内の騒音で気にもならなかったが、小鳥の声が聞こえないだけで、妙に変な気持ちだった。

 アムステルダム市内では、神隠しともいうような行方不明者が出ているとの噂が広がっていた。隣人が、友人が、いつの間にか姿を見せなくなっていた。誰も、旅行に出かけるとも、引っ越しをするとも、なにも言わずに忽然と姿を消すのである。

 ひとり、ふたりと、いつの間にか姿が見えなくなっていく人が増えていた。市内の異変に気づいた人が現れたが、ほとんどの人が自分には関係ない事としか考えていなかった。

 幽霊を見たという噂も広がっていたが、話を誇張してふれまわっている不謹慎者の仕業に違いないと誰もが思っていた。

 しかし、次第に行方不明者の数が増え、社会問題となると、本格的にオランダ国家警察が調査に乗り出した。主の消えた家に、手掛かりを求めて、連日のように家宅捜査が行われた。すると、警察官にも姿を見せなくなった者が現れるようになった。

 姿を見えなくなった人たちが消えたのは、たった数日前のはずであるのに、台所、風呂、トイレといった水回りの場所が、不思議なことに、まるで何年も放置されていたかのように、カビのような菌糸によって、壁や床がびっしりと覆われていた。すぐに真正粘菌ルシファーとの関連が疑われ、家ごと閉鎖されることとなった。


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