オランダ北部マイケル湖
ドラゴン目撃騒動は世界中に飛び火し、オランダだけでなく世界中からドラゴンやそれ以外の伝説上の生物の目撃報告が発信されていた。しかしながら、証拠と言われたフィルム、ビデオ、写真に関しては、コンピュータによる解析などによる調査によって、いずれも、ボートの航跡、群れをなした水鳥、ボート、流木、あるいは小さな生き物の影であることが確認された。不届き物の悪戯の情報が混乱を助長していたのである。
したがって、世界中の関心は、確実にドラゴンが潜んでいるオランダ北部に集まっていた。そして、唯一の発見報告のあったオランダのマルケル湖では、オランダ王立海軍が捕獲作戦を実行しようとしていた。湖の底から追い立て、地上にて麻酔で眠らせ、捕獲するというものである。オランダ王立海軍は、この海域に三隻のホラント級掃海艇と一隻のフリゲート艦〈ファン・アムステル〉を派遣していた。
世界が注目する中、ホラント級掃海艇が、海の底から巨大生物を追い立てるために、ソーナーに反応のあった一帯に爆雷を投下することとなった。全世界が注目を浴びる中、爆雷を投下しながら進むホラント級掃海艇の後方では、水中の爆発により、いくつもの水柱が列をなして立ち上がった。爆雷は海面付近で起爆させているため、爆発のほとんどか水柱となって海面上に出るために攻撃としては弱いが、ドラゴンを追い立てるには効果があるはずである。
作戦は順調であり、ソーナーがとらえた巨大な反応が海面に向かってきていた。しかし、予想外のことが発生した。ソーナーの反応が2つに分かれたのである。そのひとつが、まっすぐにホラント級掃海艇の一隻に向かってきたのである。
ホラント級掃海艇は海底から突き上げられるように体当たりを受け、船体がへの字に曲がり、反動によって船体が逆方向の力が加わると、簡単にへし折れてしまった。艇内の裂け目から一気に浸水し、掃海艇がみるみると沈み始めた。
一瞬にして掃海艇を一隻沈められたが、ホラント級掃海艇だけでも、まだ二隻が健在である。
水兵が海面を指差すと、その先には……、よく目をこらすと遠くの方に海上から突き出した巨大な爬虫類らしき生物の頭の一部が見えていた。巨大生物は海中を雷のように高速で泳ぎ、海上に浮かぶ二隻目のホラント級掃海艇に狙いを定めているように見えた。
フリゲート艦〈ファン・アムステル〉の艦長は自船の進路を変えさせると、巨大生物をホラント級掃海艇から引き離すために、速射砲による艦砲射撃で牽制した。速射砲の攻撃は確かに命中し、湖水がドラゴンの鮮血でそまり始めた。にもかかわらず、ドラゴンは攻撃を止めようとはしなかった。速射砲が命中した瞬間こそたじろぐが、すぐに突進を再開するのである。命中弾を受けても、弱っていくそぶりもなかった。
「なぜ、死なない?」
誰しもが持った疑問であった。さらにフリゲート艦〈ファン・アムステル〉が無誘導で対潜ミサイルを発射するも、水中を自在に移動する巨大生物に、決定的な打撃を加えることができないでいた。
しばらくすると、ドラゴンは再び水中深く潜り、マルケル湖に静けさが再び戻ることとなった。ドラゴンの捕獲作戦は、湖中から引きずり出すことすらできずに、失敗に終わる結果となった。




