第六話 ゴールデンレトリバーが全員を好きすぎる件
ゴールデンレトリバーは、イギリス生まれの大型犬だ。金色のふわふわした毛と、いつも笑っているような顔が特徴だ。だれに会っても全力で仲良くなろうとする。友達が多すぎて全員把握できていないことがあるけれど、それでもみんなのことを大切に思っている。悪意というものをほとんど持っていない。それがゴールデンレトリバーのすごいところだ。
「ニューファンドランド! 今日も泳ぎの練習してる?!」
「してるよ」
「すごい! かっこいい!」
「ありがとう」
「柴犬! 今朝もてっぺんにいたね! 毎朝えらい!」
「別にえらくはないが」
「謙遜しないで!」
「してない」
「バセットハウンド! においの図書館また更新してた! いつも助かってる!」
「まあ……そうか」
「フレンチブルドッグ! 今日も毛並みきれい!」
「……まあな」
「ハスキー! 今日もさむそうにしてたね! 夏も元気でよかった!」
「よくない! 全然よくない!」
「でも倒れてないじゃない!」
「それはそうだけど!」
ゴールデンレトリバーは丘を駆け回りながら、会う子会う子に声をかけた。みんなへの反応はばらばらだ。照れる子、困る子、うるさいと言う子。でもゴールデンレトリバーは全部受け取って、全部笑って、また次の子のところへ走っていく。
ボーダーコリーがため息をついた。
「あいつのエネルギーはどこから来てるんだ」
「わからん」と柴犬が言った。
「まあ……嬉しいけど」とプードルが言った。
「そうだな」と柴犬が言った。
ゴールデンレトリバーはそのとき、丘の下の扉のそばを走り抜けた。
広場へつながる、あの木の扉のそばだ。
ふつうならそこで少し立ち止まって、ちらりと見る。みんなそうする。
でもゴールデンレトリバーは見なかった。
そのまま走り抜けた。
だれかが「あっ」と思ったけど、口には出さなかった。
扉は静かに立っていた。向こうから、水の音がかすかに聞こえた。




