第十三話 星空テラスの夜に、全員が来た 語り手:モモンガ
星空テラスは、夜でも来ていい場所だ。
おれはここの常連だ。
夜になると広場のほうへ滑空して、テラスの端に止まって、星を見る。
今夜は、知らない子が来た。
いや、知らないわけじゃない。遠くから見たことがある。ノルウェジアンだ。
「おまえ、ここに来るのか」とノルウェジアンが言った。
「来る。常連だ」
「おれも来てた」
「知ってる」
「知ってたのか」
「木の上から滑空してくるの、たまに見えた」
「おれもおまえが来るのは知ってた」
「じゃあお互い知ってたのか」
「知ってた」
「なんで話しかけなかった」
「話しかけていいかわからなかった」
おれも同じだった。
「……おれも同じだ」
ふたりで星を見た。
「同じ星を見てたんだな」とノルウェジアンが言った。
「ずっと」
「おれは猫の路地から、おまえは木の根っこ村から」
「その前にも」
「何年も」
しばらくして、シンガプーラが来た。
「ここ、来ていいんでしたっけ」
「夜は来ていい」とおれは言った。
シンガプーラが隣に来た。
それからセキセイインコが来た。コールダックが来た。フレミッシュジャイアントが来た。ニホンザルが来た。柴犬が来た。三毛猫が来た。
気づいたら、テラスにたくさんいた。
犬の丘の子、猫の路地の子、ウサギ草原の子、トリの枝道の子、サルの森の子、木の根っこ村の子。
全員が、同じ星を見上げていた。
「……みんな同じ空の下にいたんだな」とフレミッシュジャイアントがしみじみ言った。
「そうだ」とノルウェジアンが言った。
「知ってはいたけど、こうして同じ場所で見ると、違う感じがする」
「そうかもな」
柴犬が空を見ながら言った。
「扉が開いてよかった」
だれも反論しなかった。みんな、そう思っていた。
ロシアンブルーの詩が思い出された。
「よるに そとに いると ほしが みえる おなじ ほしを だれかも みている かもしれない」
その詩を書いた子は、今日ここにはいない。猫の路地にいるはずだ。
でも、その詩が言っていたことが、今夜ここで起きていた。
おなじ ほしを。みんなが、みていた。
その夜、テラスにいた全員が黒板に刻んだ。黒板の枚数が大きく進んだ夜だった。
モモンガ:「何年も同じ星を見ていた。今夜は一緒に見た」
ノルウェジアン:「木の根っこ村の子とは、ずっと前から知り合いだったらしい」
フレミッシュジャイアント:「みんないる(泣きそう)」
柴犬:「扉が開いてよかった」
三毛猫:「来てよかった、と今は思っている」
セキセイインコ:「星がきれいだった!!」
ニホンザル:「星を見るのに温泉はいらなかった。今日だけだ」
コールダック:「農業と星は関係ないが、今日は農業のことを考えなかった」
シンガプーラ:「ここは、どのエリアでもない。だから全員が来られる」




