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なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第六章 はじめての広場 ―― ちがうから、おもしろい

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第七話 柴犬とニホンザル、広場で目が合った 語り手:柴犬



おれは広場があまり得意じゃない。


にぎやかすぎる。いろんな子がいて、いろんな声がして、落ち着かない。


でも今日は来た。


理由はうまく言えない。ただ、夜明け前に丘のてっぺんから広場の方向を見ていたら、来たくなった。




朝の広場は静かだった。


まだだれもいなかった。噴水だけが、さらさらと流れていた。


でかい木の黒板を見た。新しいページになっている。まだほとんど何も刻まれていない。


チョークを取って、少し考えた。それから刻んだ。


「よく見てるつもりだが、見えていないことも多い」


自分でも、なんでこれを刻んだのかよくわからない。ただ、そう思ったから刻んだ。




しばらくして、ニホンザルが来た。


朝の広場にはおれとニホンザルだけだった。


ニホンザルもおれに気づいて、止まった。


ふたりで、少しの間、向き合った。


「……犬か」とニホンザルが言った。


「サルか」とおれは言った。


「ここに来るのははじめてか」


「来たことはある。朝は初めてだ」


「おれも朝は初めてだ」


「なぜ来た」


「なぜ来たかわからない。ただ来た」


おれも全く同じ理由だった。それを言うのは少し癪な気がしたが、正直に言った。


「おれも同じだ」


ニホンザルは少し目を細めた。


「似てるな」


「そうか?」


「なんとなく」


おれは噴水を見た。ニホンザルも噴水を見た。


水が光を受けてきらきらしている。それを見ながら、なにかを話そうとして、やめた。何も言わなくていい気がした。


「温泉じゃないが」とニホンザルが言った。


「何が」


「この噴水の水のことだ。温泉じゃない。でも、水が流れているのを見るのは悪くない」


「おれは水が苦手だ」


「そうか」


「おまえは温泉が好きなんだろう」


「そうだ」とニホンザルは言った。「ただ、先日、温泉に他の子と一緒に入った」


「珍しいな」


「珍しかった。でも、悪くなかった」


おれはニホンザルを少し見た。


クールな顔をしている。おれと似た感じの顔だ。たぶん本人は気づいていないし、言わないほうがいい。


「また来るか」とおれは言った。


「朝は静かでいい」とニホンザルが言った。


「そうだな」


ふたりでしばらく、噴水を見ていた。


朝の光が斜めに差し込んで、水面がきらきらした。


何も言わなかったけど、それでよかった。




ニホンザルはチョークを取って刻んだ。


「温泉を少しだけ分けた。それだけで、悪くなかった」


おれはその字を読んだ。


「それだけで、悪くなかった」というのが、なんか、ニホンザルらしかった。


「また来るか」とおれは言った。


「朝は静かでいい」とニホンザルが言った。


「そうだな」




おれはその日の夜、丘のてっぺんで空を見た。


星が出ていた。


広場の方向に、でかい木の黒板がある。暗くてよく見えないけど、確かにそこにある。


何人が刻んだんだろう。どんな字が並んでいるんだろう。


柴犬は何も言わなかった。しっぽだけが、ゆっくり揺れていた。


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