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なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第一章 犬の丘のにぎやかな毎日 ―― 走って、吠えて(吠えられなくて)、また走って

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第三話 ハスキーの「さむい」がうそくさい件

夏が来た。


犬の丘の草はぎらぎら照らされて、地面からもわっと熱気が上がってくる。


ハスキーは木陰で倒れていた。


正確には倒れているわけではない。ただ横になっているだけだ。でも横になり方が「倒れている」に近かった。四本足が空に向いて、舌がだらんと出ている。


「あつい……」


うめいた。


「あつすぎる……死ぬ……シベリアに帰りたい……」




シベリアンハスキーは、ロシアのシベリア地方生まれの大型犬だ。二層になった厚い毛皮を持っていて、マイナス六十度の極寒でも平気だ。もともとはそりを引く犬で、仲間と一緒に走り続けるのが得意だ。とにかく寒いところが好きで、雪が降ると目が輝く。夏だけが問題だ。




「おおげさ」


チワワが通りかかって、一言だけ言った。




チワワは、メキシコ生まれの犬だ。世界でいちばん小さな犬種で、体は小さいのに目と耳だけやたら大きい。そして、だれより勇敢だ。「小さいから」と思われることが大嫌いで、どんな相手にも真正面から向かっていく。もちろん怖いと感じることはある。でも絶対に前に出る。なぜかは本人もよくわからない。




「おおげさじゃない! おれはシベリア生まれだ! この気温は完全に想定外だ!」


「ここはシベリアじゃないから」


「わかってる! でもあつい!」


チワワはじろりとハスキーを見た。目が小さくなった。


「じゃあ聞くけど、冬は?」


「最高」


「どのくらい最高?」


「全身の毛が喜ぶ。霜を見るだけで元気になる。マイナス二十度がちょうどいい」


「なら我慢しろ。おれの半分の毛しかない子が我慢してる」


チワワがそう言って、木陰の向こうを顎で示した。


そこに、ショロイツクインツレがいた。




ショロイツクインツレは、メキシコ生まれの犬だ。古代アステカ文明の時代から人間とともに生きてきた、歴史ある珍しい犬だ。最大の特徴は、ほとんど毛がないこと。肌がそのまま見えている。体温がとても高く、そばにいるとほんのり温かい。「天然カイロ」と呼ばれることがあるが、本人はちょっと複雑な顔をする。




ショロイツクインツレは、静かに日向で座っていた。


毛がないから日差しがダイレクトに当たる。でも今日みたいな夏の日は悪くない。体温が高いから、太陽に温められる感覚がちょうどいい。冬のほうがつらい。これが正直なところだ。


「あつくないの?」


と、ハスキーが起き上がって聞いた。


「あつい」


ショロイツクインツレは素直に言った。


「でも冬よりまし」


「おれは逆だ」


「知ってる」


ハスキーはしばらく考えた。それから言った。


「……ならんで座ったら、どっちもちょうどよくなるんじゃないか」


ショロイツクインツレは少し考えた。


「……やってみる?」


ふたりは木陰と日向の境目に、ならんで座った。


ハスキーのふかふかの毛が、ショロイツクインツレのそばで空気をすこし冷やす。ショロイツクインツレの高い体温が、ハスキーにほんのりと伝わってくる。ぴったりではないけれど、たしかに、すこしだけ。


「……おっ」


と、ハスキーが言った。


「……うん」


と、ショロイツクインツレが言った。


チワワはそれを見て、何も言わなかった。でも、口元が、ほんのすこし緩んだ。


「「さむい」って毎年言ってるけど」


チワワは歩きながら独り言のように言った。


「いなくなったことは一度もないよな」


ハスキーは聞こえていたかもしれない。でも何も言わなかった。


しっぽだけが、ゆっくり揺れていた。




その頃、丘の下のにおいの図書館の前で、バセットハウンドがふんふんと鼻を動かしていた。今日の新しい情報をひとつ書き足した。


「プールの底より。海のにおいの石。どこから来たかは不明」


バセットハウンドはじっとその文字を見た。


海のにおい。ここじゃないどこかのにおい。


なんとなく気になったけど、今日はもういい時間だ。ゆっくりした足どりで、昼寝の場所へ向かった。


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