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なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第六章 はじめての広場 ―― ちがうから、おもしろい

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第三話 ウサギと、トリと、広場の真ん中で 語り手:ジャックラビット



おれの耳は、だいたいうるさい。


常に何かが入ってくる。鳥の声、風の音、遠くの会話。聞きたくないものも全部聞こえてしまう。


でも、あの日の広場は、うるさくなかった。


噴水の音と、風の音と、石畳に足音が響く音だけで、それがちょうどよかった。




最初に広場に来たのは、ネザーランドドワーフだった。


「調査が必要だ」と言っていた。きまり帳に「広場には入ってはいけない」とは書いていない。「他のエリアに入ってはいけない」だから、広場はどのエリアにも属していない。だからきまり的にはグレーゾーンだ、とネザーランドドワーフは結論づけた。その結論を聞いて、おれは広場に来た。


入ってみると、空が広い。


耳を広げると、いつもよりよく聞こえる気がした。遠くの音も聞こえる。犬の丘の方向から、何かが走る音がする。猫の路地の方向から、シャムの声がする。サルの森から、ホエザルの声がかなり大きく聞こえる。


でも全部、遠くの音だ。うるさくない。


そのとき、はばたきの音がした。


セキセイインコとキンカチョウが降りてきた。


「広場に来てみた」とセキセイインコが言った。


「ウサギもいた」とキンカチョウが言いながら日誌に刻みはじめた。


おれとセキセイインコは向き合った。


「どうも」とおれは言った。


「どうも!」とセキセイインコが言った。テンションが高い。


キンカチョウは広場を見渡して、でかい木の黒板に近づいていった。鼻先で文字を追った。「こんにちは」が何個か刻まれている。「犬も こんにちは」「猫も こんにちは」もある。


「記録する」とキンカチョウが言って、刻みはじめた。


「おれも刻んでいいか」とおれは黒板に近づいた。


「どうぞ」


チョークを取った。何を刻もうか少し考えた。


「ウサギの耳は よく聞こえる」


刻んでから、少し恥ずかしくなった。なんでそれを刻んだんだ、おれ。


「おもしろいね」とセキセイインコが言った。


「そう?」


「うん。「こんにちは」だけじゃなくて、自分のことを刻んだのが初めてだ」


キンカチョウが「それは確かに」と刻みながら言った。


おれはもう少し恥ずかしくなったが、消さなかった。


セキセイインコがチョークを受け取って刻んだ。「トリは 空から見てる 怒ってないよ」


「怒ってないよ、って何だ」とおれは思わず聞いた。


「よく「見下してる?」って思われるから。怒ってないってことを刻んでおきたかった」


「なるほど」


キンカチョウも刻んだ。「今日の広場を観察した。静かでよかった」


三匹でそれを読んだ。


「なんか、いろんな子が刻むと面白いな」とセキセイインコが言った。


「うん」とおれは言った。




耳がまた、ぴくりと動いた。


風の中に、何かが届いてくる。


カナリアの声だ。


遠い。とても遠い。でも、聞こえる。いつもより鮮明に聞こえる。広場は遮るものが少ないから、音がよく届く。


声は一本の線みたいに、まっすぐに来た。


高くはない。低くもない。ただ澄んでいて、どこかすぐそばで聞いているような気がする。


「どうした?」とネザーランドドワーフが近づいてきた。


「……カナリアの声。聞こえる」


「どこから」


「トリの枝道の方向。でも今日はここで聞くと違う感じがする」


「違う感じ?」


「いつもは遠くの音だと思って聞いてた。でも今日は……広場にいるせいかな、なんか、同じ場所にいる気がする」


ネザーランドドワーフはしばらく黙った。


「同じ場所、か」


「うん。知らない子なのに、知ってる気がする。遠くに友達がいる感じ」


広場の噴水が、さらさらと流れていた。


声は、また届いた。


おれはしばらく、そこに立ったまま聞いていた。




その夜、ネザーランドドワーフはきまり帳に書き足した。


爪の先で、丁寧に刻んだ。


「広場:中立地帯。おきての「他のエリアには入らない」の対象外と判断。以後、自由に利用可能」。


それから少し考えて、もう一行刻んだ。


「ただし、だれかが「やっぱり入ってはいけない」と言いだしたら、その時点で再検討する」。


几帳面だ、と自分でも思う。でも、それがきまり帳の係の仕事だから。


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