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なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第五章 サルの森のさわがしい毎日 ―― 独り占めしたい気持ちと、手放す勇気

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第二話 チンパンジーの発明が失敗した日



チンパンジーが発明工房の前に集合をかけた。


集まったのはカニクイザルだけだった。


「今日はこれを完成させる」とチンパンジーが言った。


木と蔓と石を組み合わせた装置がある。「水を遠くまで飛ばす仕組み」らしい。


「前回と何が違う?」とカニクイザルが聞いた。


「石の角度を変えた」


「前回も石の角度を変えた」


「今回はさらに変えた」


「どのくらい」


「十五度」


「前回は何度変えた」


「十度」


「五度しか違わない」


「五度は大きい。おまえにはわからないかもしれないが、角度は重要だ」




チンパンジーは、中央アフリカから西アフリカに生きるサルの仲間だ。ヒトと最も近い動物で、道具を使い、仲間に使い方を教える文化的な行動を持つ。知能が非常に高く、問題解決が得意だ。


カニクイザルは、東南アジアに広く分布するサルだ。海岸近くに暮らし、石を使って貝を割って食べることで知られている。道具を使う能力が高い。




「試してみよう」とチンパンジーが言った。


「割っていい部分はあるか」とカニクイザルが聞いた。


「今日は割る部分はない」


カニクイザルは少しがっかりした顔をした。


チンパンジーが装置を動かした。石が動いた。蔓が引っ張られた。木が傾いた。


水が飛んだ。真横に。


チンパンジーがまともに受けた。


「……」


全身びしょぬれで、動かなかった。


カニクイザルはそれを見て、少し間を置いてから言った。


「割っていいか」


「何を」


「石を」


「今は関係ない」


「気が紛れるかと思って」


「…………どうぞ」


カニクイザルは石をたたき割った。


チンパンジーは水を払いながら、装置を見た。


「……二十度にすれば正面に飛ぶかもしれない」


「また試すのか」


「試す。これは試作品だ」


「失敗したのでは」


「失敗ではない。試作の途中だ」


「それは同じじゃないのか」


「違う。失敗は終わりだ。試作は続きがある」


カニクイザルはしばらく黙って、それから頷いた。


「……そうか」


「手伝うか」とカニクイザルが聞いた。


「割る以外でできることがあれば」


「蔓を押さえておく」


「それはできる」


ふたりは一緒に装置を直した。チンパンジーが角度を調整して、カニクイザルが蔓を押さえた。


もう一度動かした。


今度は水が、まっすぐ前に飛んだ。


ふたりとも、少しの間、その水が飛んでいくのを見ていた。


「……飛んだ」とカニクイザルが言った。


「飛んだ」とチンパンジーが言った。


それだけだった。それだけで、十分だった。


「割っていいか」とカニクイザルが言った。


「お祝いに石を」


「どうぞ」


カニクイザルは地面の石をたたき割った。それがその日のお祝いだった。


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