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なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第四章 トリの枝道でうたう ―― その声は、誰かの心にとどいている

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第五話 カナリアが歌わなくなった日



カナリアは、大西洋のカナリア諸島が原産の鳥だ。もともとは野生の緑がかった鳥だったが、長い年月をかけて飼い慣らされ、黄色い羽の美しい鳥になった。オスが特に複雑で美しい歌を歌う。その歌声は非常に豊かで、聞く者の何かを揺さぶる。


ただし、枝道のカナリアには困ったことがある。


歌うと、みんなが泣く。


泣かせたくて歌っているわけじゃない。ただ歌いたくて歌っている。でも歌い終わると、周りの子が目を赤くしていたり、黙ってしまったりする。




ある朝から、カナリアが歌わなくなった。


前の日、歌い終わったときにキバタンが大声で泣いていた。




キバタンは、オーストラリア生まれの大型の鳥だ。白い羽に黄色い冠羽を持つ。感情の起伏がとても大きく、喜怒哀楽が全部でかい。悲しいときは大声で泣く。




「なんで泣いてるの」とカナリアが聞いた。


「わからない! でも泣ける!」とキバタンが言った。


「何かつらいことがあった?」


「ない! でも泣ける!」


「……歌のせい?」


「そうかもしれない! でもそれがなんか嫌じゃなくて、でも止まらなくて!」


カナリアはそれを聞いて、少し考えた。


泣かせてしまった。


悪いことをしたわけじゃないとは思う。でも、だれかを泣かせるために歌いたいわけじゃない。


次の朝、カナリアは歌ステージの前まで来て、止まった。


そのまま、歌わずに戻った。




一日が経った。


「カナリア、今日は歌わないの?」とセキセイインコが聞いた。


「うん」


「なんで?」


「……泣かせるから」


「泣かせるって、みんなのこと?」


「キバタンが泣いてたから」


「キバタンはいつも泣いてるじゃない」


「歌のせいで泣いてた」


セキセイインコは少し首をかしげた。


「でもキバタン、嬉しそうだったよ」


「泣いてたのに?」


「うん。泣きながら「止まらない」って言ってたけど、顔は嬉しそうだった。少なくともわたしにはそう見えた」


カナリアはセキセイインコを見た。


「……嬉しいのに泣くことってあるの?」


「あると思う。すごく感動したとき、とか」


「感動……」


カナリアはしばらく考えた。


でも、すぐには決められなかった。泣かせていいのかどうかが、まだよくわからない。




四日目の朝、オカメインコがカナリアのそばに来た。


冠羽は、ゆっくり揺れている。穏やかな感じだ。


「歌わなくなったの、気になってた」とオカメインコが言った。


「ごめん、みんなを泣かせるから」


「泣かせることが嫌なの?」


「泣かせたいわけじゃないから」


「泣かせたくないから歌わない、ってこと?」


「……うん」


オカメインコは少し考えた。冠羽が少しだけ横に広がった。リラックスしているときの動きだ。


「わたし、カナリアの声を聞いたとき、泣かなかったけど、何かが胸の中で動いた」


「何が?」


「わからない。でも、その動いた感じが、気持ちよかった」


カナリアは黙っていた。


「泣く子は泣くと思う。それはカナリアのせいじゃないと思う。泣きたかったから泣いたんだと思う。カナリアの声は、そういう気持ちを引き出すだけで、泣かせようとしてるんじゃないから」


「……引き出す?」


「うん。押しつけてるんじゃなくて、引き出してるだけだと思う」


カナリアは、オカメインコの冠羽を見た。ゆっくり揺れている。


「……少し考える」


「うん」


その日の夕方、カナリアはまた歌ステージの前に来た。


少し立っていた。


それから、ゆっくり歌い始めた。最初は小さな声で。だれも近くにいない時間を選んだ。


歌いながら、これでいいのかよくわからなかった。でも声は出た。続いた。


歌い終わって、しばらく立っていた。


遠くで、キバタンの声がした。


「また聞こえた!! また泣ける!!!」


カナリアは羽を少しだけ膨らませた。


泣かせてしまった。でも、キバタンの声は嬉しそうだった。少なくとも、そう聞こえた。


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