第三話 コザクラインコがべったりすぎる件
コザクラインコは、アフリカ生まれのインコだ。「ラブバード」という別名を持つ。つがいへの愛着が非常に強く、一度仲良くなった相手のそばをほとんど離れない。一人になると不安になるタイプで、仲良くなった相手にはどこへでもついていく。
コザクラインコは、今週からセキセイインコのことが大好きだった。
「セキセイインコ! おはよう!」
「おはよう」
「今日の朝ごはんは?」
「まだ食べてない」
「一緒に食べよう!」
「いいよ」
「どの木の実が好き?」
「あの丸いやつ」
「じゃあ一緒にとりに行こう!」
「いいよ」
朝ごはんを一緒に食べた。昼になった。
「セキセイインコ、昼ごはんは?」
「まだ」
「一緒に食べよう!」
「いいよ」
夕方になった。
「セキセイインコ、どこ行くの?」
「少し一人で飛びたい」
「一緒に飛ぼう!」
「…………」
セキセイインコが止まった。コザクラインコがきらきらした目で見ている。
そのとき、ホーランドロップが枝道の外れに来た。
ウサギ草原から来た。なんとなく立ち寄っていた。ホーランドロップはそういうタイミングで来る。
「コザクラインコ、ちょっといい?」とホーランドロップが言った。
「え、でもセキセイインコと」
「相談があって」
コザクラインコはセキセイインコとホーランドロップを交互に見た。
「……少しだけ」
「ありがとう」
セキセイインコはほっとした顔をしながら、申し訳なさそうにしながら、飛んでいった。
コザクラインコはホーランドロップの前に降りた。
「相談って何?」
「うん」とホーランドロップはたれた耳をぱたぱたさせながら言った。「コザクラインコに聞きたかったことがあって」
「わたしに?」
「一人になるのが怖い?」
コザクラインコは少し黙った。
「……怖い、というか。不安になる。だれかと一緒にいると落ち着く。一人になると、何かが足りない感じがする」
ホーランドロップはじっと聞いていた。
「一緒にいたい気持ちはいいことだと思う」とホーランドロップは言った。「でも、一緒にいる相手が少し疲れてしまうことがあるかもしれない」
「……疲れてた? セキセイインコが」
「疲れてたかどうかはわからない。でも「少し一人で飛びたい」って言ったよね」
コザクラインコはうつむいた。羽がすこし体に引き締まった。
「……気づかなかった」
「気づかなかっただけだよ。悪いことじゃない」
「でもずっとくっついてたら、嫌がられる?」
「嫌がられるとは思わない。ただ、少しだけ間を作ると、また会ったときに嬉しい気持ちが大きくなる、ということはあるかも」
コザクラインコはしばらく考えた。
「……間を作る」
「無理にじゃなくていい。ちょっとだけ、違う子と話してみる、くらいで」
コザクラインコはホーランドロップを見た。
「ホーランドロップって、よく話を聞いてくれるね」
「好きだから」
「相談があるって言ってたけど、わたしのことが相談だったの?」
「そう」
「それって相談じゃなくて、心配してくれてたってこと?」
ホーランドロップはたれた耳をぱたりと揺らした。
「どっちでもいい」
コザクラインコは羽を少しだけ膨らませた。
夕方、セキセイインコが戻ってきた。
「コザクラインコ、さっきはごめんね」
「ごめんは、わたしのほうだよ。くっつきすぎた」
「そんなことない」
「あった」
「……少しだけ」
「知ってた」とコザクラインコが言った。
「知ってたの?」
「今日、ホーランドロップに教えてもらった」
「また来ていい?」とコザクラインコが言った。
「いいよ。でも、たまに一人になりたいときは言う」
「うん。そのときは、別の子のところへ行く」
「そうして」
コザクラインコの羽がほんの少し、ふくらんだ。
満足した感じのする、小さな動きだった。




