表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第三章 ウサギ草原のふしぎな話 ―― 信じてほしいことが、ある

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/50

第六話 ユキウサギが今日も誰かに「誰?」と言われた

ユキウサギは、北アメリカから北欧にかけての寒い地域に生きる野生のウサギだ。冬になると毛が白くなり、雪の中に溶け込む保護色になる。夏になると茶色に戻る。後ろ足が大きくて、雪の上でも沈まずに走れる。


ウサギ草原のユキウサギが困っているのは、この毛色変化のせいだ。


毎年、驚かれる。


毎年、「誰?」と言われる。


自分でも、たまに忘れる。




その朝、ユキウサギは草原を歩いていた。


今は秋の終わりで、毛が少しずつ白くなってきている。


「おはよう」と声をかけてくれた子がいた。


「おはよう」と返した。


その子がびっくりした顔をした。


「……誰?」


「ユキウサギ」


「え、ユキウサギ?! 毛が白くなってる!」


「なってる。毎年なる」


「そうだったっけ!」


毎年驚かれる。毎年「そうだったっけ」と言われる。


ユキウサギはため息をついた。


「毎年なるよ。秋の終わりから冬にかけて白くなって、春になったら茶色に戻る」


「すっかり忘れてた!」


「わかった。来年も同じことを言う」


「来年は驚かないようにする!」


「去年もそう言ってた」


「……ごめん」


「いいよ」と言って歩き続けた。


怒っているわけじゃない。毎年こうだから、もう慣れた。ただ、少し、さびしい気がすることはある。毎年同じ自分なのに、毎年新しい自分みたいに扱われる。




草原のはずれで、アンゴラが声をかけてきた。


「ユキウサギ、毛が白くなってきたね」


「うん」


「きれい」


ユキウサギはアンゴラを見た。


「驚かないの?」


「毎年なるから」


「みんな忘れるのに」


「わたし転ぶたびに助けてもらってるから、人のこと忘れないようにしてる」とアンゴラが言った。「ユキウサギは毎年白くなる。それ、ちゃんと覚えてる」


ユキウサギは少し黙った。


アンゴラの毛がふわふわで、風に揺れている。


その子が転ぶたびに、みんなが来る。転んだことをきっかけに、だれかを覚えていく。アンゴラの転倒は、そういうふうに、いろんなものを残してきたのかもしれない。


「……ありがとう」


「ユキウサギが白い間、並んで歩くとわたしたち似た色になるね」


「そうだね」


「嬉しくない?」


ユキウサギは少し考えた。


「嬉しい、かも」


「よかった」


ふたりはしばらく、ならんで草原を歩いた。


白いユキウサギと、白いアンゴラが、草原の緑の中を歩く。


遠くから見たら、ふわふわした白いものがふたつ動いているように見えた。


ネザーランドドワーフはそれを見て、ノートに記録した。「ユキウサギ、本日の白化確認。アンゴラと並んで歩いていた。どちらも白かった」。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ