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なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第三章 ウサギ草原のふしぎな話 ―― 信じてほしいことが、ある

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第一話 ネザーランドドワーフの几帳面すぎる計画

ウサギ草原は今日も、草がやわらかい。 走ると気持ちいい。転ぶと、もっと気持ちいい。 ただしアンゴラだけは、転んだことを気持ちよく思っていない。たぶん。




ウサギ草原について


ウサギ草原は、名前のとおり広い草原だ。


草が青くてやわらかくて、足の裏に当たる感触が気持ちいい。風が吹くと草がいっせいにそよいで、遠くまで波みたいに広がっていく。春には小さな花が咲いて、秋になると草が少し色づく。


草原の端に、備蓄小屋がある。


ナキウサギが管理している小屋で、草や食べ物がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。在庫ボードがいつも更新されている。小屋の中はひんやりしていて、地面の下をよく聞くと、かすかに水の音がする気がする。気のせいかもしれない。


草原のはずれに、ふわふわ毛玉の泉がある。


アンゴラが転ぶたびに毛が草原に落ちて、それが少しずつ溜まってできた場所だ。ふわふわの毛がふんわり積もっていて、疲れたときに鼻を近づけるとなんとなく気持ちがほぐれる。


ここに暮らすウサギは、十匹だ。


ネザーランドドワーフは、夜明け前から起きていた。


草原の真ん中に立って、ノートを広げている。今日の予定が、きっちり書いてある。


午前七時:起床・身だしなみ確認。 午前七時半:備蓄小屋の在庫確認。 午前八時:きまり帳の点検。 午前八時半:草原の状態チェック(草の高さを十か所計測)。 午前九時:全員への今日の予定共有。


「完璧だ」


ひとりごとを言った。




ネザーランドドワーフは、オランダ生まれのウサギだ。世界でいちばん小さいウサギの品種のひとつで、丸くてコンパクトな体に、小さな耳がついている。几帳面で、ノートをとるのが好きだ。きまり帳の管理者で、きまりに関することなら何でも知っている。草原の出来事を全部記録している。




「ねえ、ネザー」


ホーランドロップが声をかけてきた。


「なんだ」


「そのノート、今日の予定?」


「そう。午前九時から全員に共有する」


「何ページある?」


「今日分だけで十二ページ」


「……多くない?」


「多くない。去年より四ページ少ない」


ホーランドロップはたれた耳をぱたぱたさせた。それからゆっくり言った。


「みんな聞くかな」


「聞く。礼儀だと思う」


「礼儀は強制できないよ」


「でも、お願いはできる」


ネザーランドドワーフはノートを閉じて、草原を見渡した。


フレミッシュジャイアントが草原の端でのんびりしている。アンゴラがすでに一回転んでいる。ジャックラビットが草原の向こう側を猛速で走り抜けた。ユキウサギが草の上に座って、自分の毛を見ている。レックスとライオンヘッドが何かを話している。スマトラ縞ウサギが少し離れた場所に一匹でいる。ナキウサギが備蓄小屋から出たり入ったりしている。


全員がばらばらだ。


「……集めてくれる?」とネザーランドドワーフがホーランドロップに言った。


「声かけてみようか」


「お願いしていい?」


「うん」


ホーランドロップは草原を歩きはじめた。一匹ずつ声をかけて、じっくり話を聞いてから「ネザーが集まってほしいって」と伝える。フレミッシュジャイアントはすぐ来た。アンゴラは来る途中でまた転んだ。ジャックラビットは耳をぴくぴくさせながら来た。ユキウサギはゆっくり来た。レックスとライオンヘッドはならんで来た。スマトラ縞ウサギは少し間を置いてから来た。ナキウサギは「ちょっと待って、今ちょうど草を一束入れ終わったとこ」と言ってから来た。


草原の真ん中に、全員が集まった。


ネザーランドドワーフはノートを開いた。


「では、今日の予定を共有する。まずページ一から――」


ジャックラビットの大きな耳が、ぴたりと止まった。


「ちょっと待って」


「なんだ」


「今、草原の向こうのほうから、何か聞こえた」


全員がそっちを向いた。何もいない。草が揺れているだけだ。


「……なんでもないと思うが」


「いや、かすかに、水の音がした。地面の下から」


ネザーランドドワーフは一瞬止まって、ノートに素早く書き足した。「備蓄小屋地下水路:音量増加? 要確認。ジャックラビット証言あり」。


「記録した。今日の午後に確認する。では予定共有に戻る」


フレミッシュジャイアントがすこし身を縮めた。大きいのに、なんとなく心細そうな顔をしている。


「地面の下に、なにかいる?」


「わからない。だから確認する」


「こわくない?」


「怖くない。記録するだけだ」


フレミッシュジャイアントは頷いたが、耳がすこし下がっていた。ネザーランドドワーフはそれを見て、少し声を柔らかくした。


「大丈夫だ。今まで何もなかったし、今日もたぶん何もない」


「たぶん?」


「……九十九パーセント、何もない」


「一パーセントは?」


「記録してから考える」


フレミッシュジャイアントはまだ少し不安そうだったが、ホーランドロップがそっと隣に来て座ったので、耳が少し戻った。


予定共有は、結局ページ三まで終わったところで全員が別の話をしはじめた。


ネザーランドドワーフはため息をついた。でもノートに「予定共有:ページ三まで完了(来週に続き)」と書いて、それで満足した。


進んだのだから、よしとする。




その日の夕方、ネザーランドドワーフは備蓄小屋の地下に耳を当ててみた。


何も聞こえない、と思った。


でも、長くじっとしていると、かすかに何かが動いている気がした。水の音かもしれないし、気のせいかもしれない。


ノートに書いた。「地下の音:不明。引き続き観察」。


それだけ書いて、草原に戻った。


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