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なかよしの設計図は作成中です。  作者: 鍵しっぽハンター
第二章 猫の路地のひみつ ―― 素直じゃないけど、ちゃんと見てる

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第三話 ターキッシュバンが水に落ちた日

ターキッシュバンが広場のほうへ向かったのは、朝だった。


水のにおいがする。


噴水のにおいだけじゃない。もっと下のほう、地面の下から、別の水のにおいがする。ターキッシュバンは水のにおいに、うるさいくらい敏感だ。




ターキッシュバンは、トルコ生まれの猫だ。白い体に、頭としっぽの先だけ色がついている。ほとんどの猫が水を嫌がるなかで、ターキッシュバンは水が大好きだ。池でも川でも平気で入る。猫の路地の全員に引かれているが、本人は全く気にしていない。




扉のそばの石畳に、丸い窓があった。


前から気になっていた。丸くて、縁がなめらかで、下をのぞくと水が見える。噴水よりも暗くて深い水だ。


しゃがんで、のぞいた。もっと近く。もっと近く。鼻先を窓に押しつけた。


その瞬間、水面に何かが動いた。


ターキッシュバンは飛び上がった。


後ろ足が石畳を蹴って、体が宙に浮いて、着地するとき噴水の縁に激突して、そのまま落ちた。


盛大な水しぶきが上がった。


ターキッシュバンは噴水の中で一瞬固まった。それからばしゃばしゃと泳いだ。


落ちたけど水なので、全然平気だ。むしろ気持ちいい。


ひとしきり泳いでから、縁に前足をかけて上がった。びしょぬれだ。


丸窓のほうを見た。


水面が少し揺れている。さっき何かが動いた。大きいものの気配がした。


「…だれかいる?」


返事はなかった。水が揺れているだけだった。


ターキッシュバンはしばらく丸窓の前にしゃがんでいた。


気配はある。でも声はない。


「また来る」


丸窓に向かって言った。


返事はなかった。でも、水面がまたすこし揺れた。気のせいかもしれない。




夕方、びしょぬれで路地に帰ってきたターキッシュバンに、三毛猫が言った。


「また落ちたの」


「違う。今日はちゃんと入った」


「どっちも同じじゃない」


「違う。意味が違う」


三毛猫はため息をついた。


「それで、広場に何があったの」


「丸窓がある。下に水が見える。中に何かいる気がする」


「何かって?」


「わからない。でも、いる」


「見たの?」


「動いたのを見た。大きかった」


三毛猫はしばらく、ターキッシュバンのびしょぬれの毛を見た。


「…また行くの」


「行く。気になるから」


「そう」


三毛猫はそれ以上何も言わなかった。


でも、ターキッシュバンが路地を歩いていったあと、ひとりで扉の方向を向いた。


丸窓。水。大きな何か。


「…いつか、わかるかもしれない」


独り言を言った。


夜の猫の路地に、静かな風が通った。


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