第3話 母の味ライスボールと、クンツァイトさん自家製はんぺんチーズフライ、大葉の包み揚げ 2
わたし、帰ってからお皿を洗っていた。
クンツァイトさんの一人暮らしに押しかけたんだから、お皿洗いぐらいはね。
「エスメラルダはどうなの。」
エスメラルダ、お皿を一緒に洗いながら、瞬き。
「何がだい?」
「クンツァイトさんとの話し合いさぁ。クンツァイトさん一理あるよ。お母さんの身の安全考えたら、普通なんだし。」
「……そうさねぇ。あたしがどれくらいの腕かは、知らせてやらなきゃ、わからないのかもね。」
クンツァイトさん、お風呂から出てきた。
「次の人ーバスタオルと着替え、置いときましたからー」
「クンツァイトッ!!」
「ほぇ」
わたし達、びっくりして固まった。
エスメラルダの並々ならぬ覇気、厳しい猛女の形相……
喧嘩?
エスメラルダ、剣を投げた!
「剣を持って表へ出な!!」
クンツァイトさん、冷や汗かきながらも納得したみたい。
「なるほど。剣で納得させる気だ。」
二人、剣を持って表に出た!
チップが道行く人を誤魔化してる。
「なんだいなんだい?」
「喧嘩はやめとくれ」
「のんのん。こいつぁ、村の銅像になった猛女様の決闘だから!見れるヤツは幸運!神様のお導きよ!!」
「そうなのかい」
「ほんとだ、猛女様だ!」
「で、どっちに賭ける?今なら猛女の息子の倍率パないよ〜!!」
わたし、チップの頭をどついた。
「デェッ!なにしやがんでぃ!?」
「エスメラルダの大事な戦いなのよ!ふざけてないで誤魔化すだけにしなさいよ!」
ラゴゥが告げた。
「いや。もし賭けてたって、クンツァイトさんは少しも劣らないよ、ラビ。」
「え……わかるの、ラゴゥ?」
「うん。剣扱ってたら見ればわかる。構えや型だけなら、エスメラルダのほうが不利だな。クンツァイトさんはきちんとした期間を師匠付きで修行した人だよ。」
「それじゃ、エスメラルダが負けちゃうじゃない!?」
「だからこそ挑んだんだよ。」
エスメラルダとクンツァイトさん、遂に剣を打ち合った!
エスメラルダ怯まず猛進!!
クンツァイトさんからの脇への一撃を、鎧で弾く!!
エスメラルダの突きをかわすクンツァイトさん、すかさずカウンターを入れて来て……
あぁッ!!エスメラルダが転んだ!!
クンツァイトさんが歩み寄った。
エスメラルダ、尻もちついたまま回し蹴り!!しぶとい程の執念だ!!
さすがに戦闘態勢を解除してたクンツァイトさんは転んだ。
「え、ズルくない?」
エスメラルダ、飛びかかった。
「生き死にの場にずるいなんて言葉は通じないよッ!!」
ああーッ!!
エスメラルダの絞め技でクンツァイトさんが青くなったー!!!
ラゴゥが飛び出した。
「クンツァイトさん、ギブ!??」
「ぎ、ぶ……!!」
「エスメラルダ、離して!!クンツァイトさんに勝ったんだ!!」
エスメラルダ、雄叫びを上げて剣をかざす。
「ふおぉおぉぉおおおお!!!」
「勝者、エスメラルダーッ!!!」
村人達が歓声を上げた。
「悪役レスラーみたいだぜ!!」
「かっこいいよぉ、猛女様ー!!」
エスメラルダはクンツァイトさんをクロウの元まで運んだ。
「母さん……」
「わかったかクンツァイト。母さんは、お前の反抗期に泣いたけど。でもお前をこうして背負って歩いてきた。今は、ラビもニャビも、皆を守る母さんなんだ。お前も母さんを信用しちゃくれないか?母さんは、魔族なんかにゃ負けないってさ!」
「ふふふ……俺も、母さんも、馬鹿だな。ぼこぼこにしないと通じ合えやしない。」
「でも、クンツァイト……お前は確かに言い得ていた。母さんは、受け身ぐらいは鍛えてみるよ。」
「そうしなよ。鎧頼りは今日まで、な。」
「ああ。いい教訓になったよ。ありがとう、あたしの自慢の息子や。」
エスメラルダは村人に担がれて、皆で麦酒を乾杯し、お祭り騒ぎだ。
クロウが淡々とクンツァイトさんを治療している。
「で?なんで隙を見せた?」
「……勝って欲しかったんですよ。母さんは、旅をやめる気はないんだから。」
「口で言えば済むだろう。」
「不器用なんで。……母さんに似たんですかね。」
ふふ。クンツァイトさん、やっぱりお母さんが大好きな、良い人なんだよね。
「にゃあ、こあかったよう。えめらるだ、くんつあとーをやっつけちゃうかとおもったんよ。」
「ニャビ。実はわたしも怖かったのよ……。どっちが勝っても複雑だしね。」
「うゆ!えめらるだ、くんつあとーに、たーくさん、いいこいいこ、しらきゃね!!」
その晩、クンツァイトさんの部屋で、軽い二次会をした。
とはいえ、わたしはお酒あんまり得意じゃないから、お腹ぺこぺこなのよね。
「腹減っただろう、ラビ?お前さんあまり飲めないからね。待ってな、腹持ちするもの作るからね。」
エスメラルダーほんと気が利くよね。
「母さん、おかずは俺が適当に揚げるから。そっちは任せる」
クンツァイトさんが揚げ物を揚げてる。上手いなぁ〜。
エスメラルダは、ラップでライスボールを作ってた。わたし達は、ライスボールのお手伝いだ。
「クンツァイトは器用だろう?揚げ物さばきはお手のもんさ。わたしは、不器用な母親だからね。クンツァイトに教えられた母の味なんて、ライスボールくらいさ。」
「でも……エスメラルダさ、具材が……めちゃめちゃ美味しそうよ?」
「そこだけはこだわらなきゃねぇ。それに、塩加減。子供たちにしてやれることは、あたしにはあまり無かったからね。」
そんなこと言いながらライスボールを握るエスメラルダの目は、母の慈愛に溢れている気がした。
・エスメラルダのライスボール
キムチーズおにぎり(小さめ)
キムチ 適量
スライスチーズ 半分
お米 90g
食塩適量
明太子チーズおにぎり(小さめ)
明太子 一欠片
クリームチーズ 適量
お米90g
食塩適量
枝豆チーズおにぎり(小さめ)
枝豆 適量
塩昆布 1つまみ
カッテージチーズ 適量
お米90g
食塩適量
ラップにお米を平にして具材を真ん中にのせ、包み込むように握る。
少しばらけなくなったら、食塩を適量まぶし再度握って完成。
・クンツァイトさん自家製!
はんぺんのチーズフライ
(2人分)
はんぺん4枚
スライスチーズ4枚
小麦粉 適量
パン粉 適量
卵 2個
卵は溶き卵にしておく。
はんぺんは斜めで半分に切って、横からポケットを切り込む。
小麦粉をまぶす。
小麦粉を全体にまぶしたら、卵液に全体を浸す。
スライスチーズ1枚を折り、はんぺんのポケットに挟む。
パン粉を全体にまぶしたら、熱した油にいれ揚げる。
すぐ焦げ目がつくので、気をつけながら両面と断面を揚げる。
しっかり焼き目が着いたら完成。
ソースなどで食べるとおいしい。
・これまたクンツァイトさん自家製!!
大葉の包み揚げ
鶏肉ひき肉400g
大葉1パック(多め)
ゆかり 適量
片栗粉 適量
食塩 適量
フライパンに油を入れ、熱しておく。
鶏ひき肉に食塩を適量まぶし、全体を捏ねる。ゆかりを混ぜて、まんべんなく捏ねる。
全体が混ざったら、大葉で出来るだけ鶏ひき肉を包んでいく。(大葉から溢れすぎ無い程度に。)
ひき肉を全てつつみ終わったら、片栗粉を底が深いお皿に適量いれる。
油が温まったら、大葉とひき肉の全体に片栗粉がつくようにしっかりまぶし、フライパンに入れ揚げる。
お皿に油を吸わせるキッチンペーパーを敷き、全て揚げてお皿に盛り付けて完成。
お好みで醤油、または醤油マヨなどにつけて食べる。
ライスボール、やっぱりめちゃめちゃ美味しかった!
特に、枝豆塩こんぶ×カッテージチーズは初めての味かもしれない。
それに合わせたかの、クンツァイトさんの揚げ物の相性よ!!
お酒は得意じゃないけど、良いとこの居酒屋ご飯って感じ!
「美味しいー!!止まらなーい!!」
「こりゃ、ライスボールでもフライでも酒が進んじまうな!」
「違ぇねぇ。麦酒だな、こりゃ」
「はんぺんチーズフライも美味しー!俺もちょっと飲もうかな?」
「やら!はんぺん、にゃあの!!にゃあにちょーだい!!」
ニャビがすっかりはんぺんチーズフライを独占してしまう。まぁ、確かに美味しいのよ。ずるい。
「鶏のジューシーな肉汁と、大葉の良い口当たりだね。醤油が一番だけど、しょうゆマヨもいいかね……うーん、どっちも美味しい!!」
わたしはしょうゆマヨかな。ほんと、時間も遅いのに、ガッツリパクパク、美味しいご飯は一瞬で。
食後、エスメラルダがクンツァイトさんに尋ねた。
「クンツァイトや。本当に王位継承はしないのかい?厳しい暮らしだけど、貧乏だけは抜け出せるんだ。あんたは、あたしの思い出の場所を守るだけで、ずっとここにいなくてもいいんだよ。我慢ばかりさせてきたが……」
「いいよ、そういうの。俺は王都には行かないし、気ままなバイト暮らし続けながら、母さんの帰りを待ってるよ。でなきゃ、親父の残したもの、なくなっちまうだろ。これが俺の守りたいものだよ、母さん。」
「そうか……そうだね。魔王を倒したら、あんたのいるここで、スローライフも、悪かないかね。」
「俺は行けないけど、こいつは連れて行って。記念日おめでとう。」
クンツァイトさん、あの贈り物を出した。
わたしはヴィオロン持って待機してたから、かき鳴らした。
「おめでとー
おめでとう
エスメラルダおめでと〜!」
「何の捻りもねーのな。」
と、これはチップ。
エスメラルダは小箱を開けた。
「綺麗なバングルだね。あたしゃ、この花が好きだよ。」
「どんな花ー?」
「この村のあっちの森に群生しててね。あっち……」
エスメラルダの指が壁を削った。
「え?」
「そのバングルは筋力二倍化アクセサリー。きっと母さんを支え、そして今まで以上の猛女になるだろう。自分の身は自分で守るんだ。」
「あんたにしちゃ可愛い贈り物かと思ってたら、これだ。」
「ま、まあまあ。戦闘には役に立つよ?」
「一体いくらしたんだい!!事と場合によっちゃ返品だよッ!!」
わたし、いたたまれなくなって、鞄から金貨袋を出した。
「クンツァイトさん、これ。わたしの今日の荒稼ぎ、おさめてください。多分、今の為にわたしの鞄にあったんだよ。エスメラルダ、落ち着いて?母親を思う気持ちなんだよ!」
「ラビ……あんたがそれでいいんなら、いいけどさ。いや、そんな大金でクンツァイトを甘やかしていいものかね」
「エスメラルダ、どうどう。今はお金じゃないの!ハートの問題でしょ?」
「ハートか……そうだね。このバングルで、魔族から身を守る。それが条件なら肌身離さず装備するか。」
チップ、わたしをつつく。
「あの石盤そんなにもらえたんかい!」
「だから言ったじゃない、お宝の宝庫だと。」
クロウがボヤいた。
「思い出した。あの洞窟、ラウムで独占したんだっけな……。」
「え、またクロウの盗賊団?」
「適当な協力関係の魔族に守らせたが、あれ以来すっかり忘れてたな……」
「魔族の協力者に魔法解除して貰えない!?すっごい稼ぎになるのよ!!」
「無理ゆうなや。その場合魔王軍サイドに逆戻りだぜ?」
わたし、諦めきれない。
「魔王軍って、顔さえ知られなきゃ、一瞬くらい肩入れしてもダメなの?」
チップがわたしを抑えた。
「やめい、強欲女!!おまいが一番魔法に取り憑かれてんぞ!!」
「待ってクロウその魔族の連絡先だけでも!」
わいのわいの。ぎゃーすかぎゃーすか。
その晩もわたし達は賑やか。
美味しいものと、貧乏パーティー。
冒険はまだまだ、続くよ!!
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