第2話 白菜とキノコの和風旨鍋 2
わたし達は峠の西ルート目指して、文句言わずにひたすら歩いていた。村長は馬車貸してくれるどころかベッドにこもって震えてるし、なんとかMAPだけでもいただいてきたんだ。
「クロウはなんでレニさんと世間話に?」
「レニ=アリアとは昔つるんでてな。勇者パーティを引っかけた共犯者ってところか。」
「クロウも勇者パーティに喧嘩売ってたの!?やめてよ、魔王の後にお礼参りされるぅ!!」
わたしの悲鳴を聞きつけたニャビとエスメラルダが参戦。
「くろ!かみしゃま、ごめんしゅんだぉ!!かみしゃまみてゆ!!」
うちのソーサラーはプリーストみたいな説教する。こんなに小さい子でもクロウを抑える神様の名前覚えてるんだから、クロウの暴走は頻繁てことよね。
「クロウ!あんたはカタギのラビを騒がせんなら、あたしが容赦はしないよッ!!」
エスメラルダの拳骨、クロウは避けた。
「避けんじゃない!神様のお仕置の代わりだ、喰らいなッ!!」
「さすがにお前の拳骨じゃ俺の頭蓋骨が割れるわ……チッ、昔のことじゃねーか。勇者パーティカチ割ったのなんてのはよ……」
「物騒な!勇者パーティのどこをカチ割ったのよー!!」
「俺は骨盤。レニ=アリアは頭蓋骨だったか。」
「障害者と死者が出てない?それ、僧侶の治療で治ったのかなぁ……?」
チップがニヤニヤしながら尋ねた。
「クロウの兄貴、そもそも何を狙って姉御と組んだんで?」
「赤竜の眼と呼ばれる、俺の拳大の宝玉があってな。俺のコレクションだったが、アジトを襲われたさいに、勇者パーティに奪われた。そいつを取り戻す為にレニ=アリアと組んだのさ。」
ラゴゥが食いついた。
「あ。知ってるー!赤竜の眼はこのフランク=バジリコ王国シュクルテル王家に代々伝わる家宝で、王位継承権をあらわし、竜をすべるんだ。うち騎士の家系でさ、今の空の宮殿を何とかすべくっていう家訓に、赤竜の眼探しがあるよ。」
チップが笑った。
「すげぇや!兄貴、王家から盗んだのかよ!!ラゴゥの宿敵じゃん!!!」
わたし、諌めた。
「クロウがその宝玉盗んだから、竜退治のクエスト溢れかえったんじゃない!!」
「バカモン。俺が盗んでやる前は、竜種は保護され、竜鱗ひとつ剥がすことを許されなかった。魔王と戦うのに装備も作れねぇ、馬鹿げた政治だったぜ。」
エスメラルダが頷いた。
「竜種の保護に関しては、確かに馬鹿な政治だったよ。冒険者の愚痴にも登ってたね。宝玉は返さなくてもいいんじゃないか?」
ラゴゥが手を振った。
「ダメだって返さなきゃ。栗の君、前王マロン=マロヌス陛下が亡くなってお世継ぎ不在、後継者問題があるんだから。赤竜の眼はその為に……」
「死んだか……あの栗坊がねぇ……」
クロウは異変に気づいた。
「クロウ、胸光ってない?」
クロウ、胸元から拳骨大の赤い宝玉を出した。
すると、宝玉はエスメラルダを照らしだしたのだ。
「あっ!!やだよ!!」
エスメラルダは木の影に逃げちゃった。
「えめらるだ、ろぉしたの?」
ラゴゥが震えながら、何かのピースがハマったらしく、エスメラルダに膝まづいて剣を捧げた。
「やだよ!!やめとくれ、ラゴゥ!!」
「ラゴゥ?」
「わかっちゃった。マロン=マロヌス陛下の姉君……正当後継者だ……行方不明だったペンテシレイア王女だよ。エスメラルダが。」
ペンテシレイア王女は、50年前行方不明になったとかのお姫様だ。本来、王として教育されたほうの姫。
「そ、それじゃあわたし達、竜退治敵無しパーティじゃない!?竜統べるんでしょ!??今の竜退治クエストの数々だと、儲けいくら?」
「おまいなぁ。クロウの兄貴をとやかく言うわりに、おまいが一番強欲なんだよ。今の話の本筋はペンテシレイア姫だー、これで国は安泰だー、だろ?無抵抗の竜種に何する気だこの鬼めが。」
わたしは真っ赤になって顔を伏せた。
「ご、ごめんなさい。そうだよね、無抵抗の竜種、殺すのもなぁ……」
エスメラルダはわたしを見て、尋ねた。
「あんまり驚かないんだね、ラビは。」
「エスメラルダの目元すごく綺麗だし、若い頃どんなに美人だったかよく考えてたから、お姫様説は既にあったかな。わたしには。」
エスメラルダは弱気にわたしの手を取った。
「あたしは……宮殿しか知らない馬鹿な娘だった。夫と駆け落ちして、子供たちと暮らし、病の夫を見送った。かけがえのないものだった。助けられてきたからこそ、あたしゃ今度は、自力で世界を歩きたいんだ。ラビ、あんたや、ラゴゥ達とさ。皆で戦って、皆でご飯作って、今も、あたしにはかけがえのないものなんだ。」
わたしはエスメラルダの両手を力いっぱい支えた。
「なら、帰らなくていいよ!今まで通りエスメラルダはうちの猪突猛進戦士でいいじゃない!!それにさ、エスメラルダのお子さんちが、貧乏ながらもエスメラルダを引き取ろうと、お母さん思いだったよ?王位、お子さんに継承しちゃえば?」
「そりゃそうだ!そういやうちの長男は今八百屋のパート、次男は蜂蜜農家、長女は次男の家で家事手伝いという名のニートしてたんだわ。これがあたしの苦労ばかりかけた娘でね。娘、女王にしちゃおうかね。」
「うぉぉ……ニートからの女王転職!噂に聞く転生賢者みたい!!」
ラゴゥ、口開けっ放し。
「じゃあ、俺が父上と共に剣を捧ぐのは、ニートの……?ちょ、ね、エスメラルダだったら俺喜んでお仕えするよ?剣の腕も認めてるし……」
チップが尋ねた。
「ばっかもん。家事手伝いのニートじゃ政治が務まるかわからんぞ。」
「ニートなんだから、まだまだ未経験だ。やってみなきゃわからないさ。」
「そーだそーだ!あれ、風強くない?」
途端に、森が翻った。
烈風だ!
「わわっ」
「ニャビは俺が!チップ、ラビを!」
「あいよ!」
凄まじい翼の音、突風。
風だけで吹き飛ばされそう!
チップが抱えてくれていなかったら、今頃あの川に落ちてる。
竜は想定より、デカい!
こんなの、古龍だよ!!
リファイラスさんがレニ=アリアさんを抱えて跳躍して来た。
レニ=アリアさん、大怪我だ。
血が、青い……魔族っていうのは本当なんだ。
だけど、だからなんだっていうの。
「クロウ!治療お願い!!」
「おう」
「すまん!村長をかろんじていた!確かに君たちのパーティじゃ死傷者が出る、これはLv60以上推奨クエストだ!逃げていいぞ!!レニ=アリアとマシューを頼む!」
「レニさん!!しっかりして!!」
ラゴゥが剣を構え、わたし達の護衛をしながら、リファイラスさんに尋ねた。
「リファイラスさんとドリエさんは、勝てそうですか?」
「生憎だが。四人揃ってたら勝てたやもしれんが、今は二人だからな。怠け癖が祟ったな、うちじゃ始末しきれん!俺とドリエでこいつを怯ませる、魔術師と僧侶がいたら、弱ったところを封印してくれ!!」
「あ……?」
クロウ、プリーストLv5。一向に半人前のままだ。
「にゃあら?にゃあのことら?」
ニャビ、ソーサラーLv5。吃音症でいざと言う時呪文が出ない。
「うちじゃダメだ……ッ!!リファイラスさん達、無駄死にしちゃう!!」
レニ=アリアさんが何か言った。
「……ない、で」
「姉御が何か言伝を!!」
「……行か、ないで、リファイラス……貴方の赤ちゃん……父なし子に……」
でぇ!!
レニさん、胸が豊か過ぎて分からなかった。
妊娠していたのね。
「だったら尚更、リファイラスさん達を置いては行けない!」
「クロウ!いい加減に意地を捨てろ!!」
ラゴゥがクロウを叱って、クロウが渋々、宝玉を出した。
「俺のコレクションだろうが……おい、エスメラルダ。くれてやる、竜をなんとかするんだな。」
エスメラルダ、宝玉を掴んだ。
「任せな。竜種の扱いだけは、若い頃もやったもんだよ。」
宝玉が光りだし、古龍は勢いを緩め、エスメラルダの指示で鎮まって、巣に……
いや?
飛んでいく。
色んな場所から飛んできた竜種に、空で混じって……
エスメラルダの命令なの?
「どこへ行くの?竜種」
「魔王城の方角に飛ばしてやったんだよ。これで少しは勇者パーティの援護をするだろうさ。」
空一面の竜種。
わたしは感動しちゃった。
感動して謎の小躍りをしながらヴィオロンをかき鳴らした。
「すごいーすごいーよエスメーラールダー
竜が魔王をフルボッコー
ちょっと勇者のーお株が上がるねー
クロウーのお礼参りに勇者がきたらー
ちょっーとーは恩着せがましく言ーえるーよねー」
「おい不器用吟遊詩人、その歌詞なんとかならんの?」
わたし達が村に帰ると、村の人が総員揃って出迎え……は、しなかった。
あえて言わないことにした。
村長はというと、
「王都で王位継承があったようで。竜は討伐した訳じゃないですから、報酬は出せませんな。」
と、これの一点張り。
「クソ虫め……てめぇの一家椅子に縛り付けて幼いのから順に心臓引き抜いてやろうか。誰が一番長く息してたかタイムを競い合うか?」
クロウにニャビがささやく。
「くろ。らめ。かみしゃま。」
「神も祝福しねぇし金にもならねぇ話だ。そんなパーツはムカついて握り潰しちまって、商売にゃならんからな。」
村長、すかさずわたしの背中に隠れる。
「ラビさん!竜種が飛んで行ったのは、わたしのせいでは!!ありませんよね!?」
「村長のせいじゃないけど……クロウだって自慢のコレクション消費したんだから、村長だってクロウに誠意見せれば?言い方はアレだけどさ、報酬無しなんて、怒るのは当たり前なんだから。」
「いや。報酬辞退しようって言ったじゃん、俺……」
こればかりはラゴゥに任せられない。
村長、倉庫に篭ってドタバタ、ゴソゴソ。
青ざめて震える顔して、何か持って来た。
「魔導書かな」
「祖母のレシピ覚え書きです……!!」
クロウ、目敏く手を伸ばした。
「貸してみろ。」
中を数枚読む。
「おい。あんたの祖母は料理が上手いらしい、これ以外にもリスト分けして書いているな?」
「よ、よくこんなに早くお気づきで。」
「ズボラな奴が一番相応しい覚え書きを、倉庫から探せ」
「えー……」
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