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第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 15

 次に馬車が止まったのが、エルン=マロヌス神殿だ。

 エルン=マロヌス神殿では、大臣達と、ラゴゥ、チップ、クロウ、モコちゃん、ジェダイトさんとクンツァイトさんと合流。

「姉ちゃん!馬鹿!いきなりやらかすよなぁ。俺ヒヤヒヤしたよ。」

「おいジェダイト、戴冠式に連れてた人誰だよ。」

「新しい彼女だよ。前の彼女の話すんなよ、姉ちゃん。」

 えぇ?

 ジェダイトさん、前の彼女と上手くやってたはずよね?

「姉ちゃん呆れて声も出んわ。コロコロ彼女変える癖をやめな、ジェダイト。」

 そんなにコロコロ乗り換えてんの?

 クンツァイトさんはエスメラルダの方へ。

「母さん、立派だった。だけど、女王は辞めるんだろ?」

「まぁね。カイヤが若くて美人なうちは、あたしが盾になる。グランデールは王位継承者を長男のお前の影武者で誤魔化して、カイヤを守る算段さね。」

「俺は構わないよ。そのほうが母さんはカイヤを守りやすいんだろ?」

「あぁ、ありがとうクンツァイトや。そして、魔王のいない世の中になったら、あたしはお前が守ってくれた、バーナードの家に、帰るよ。」

 わたしとチップは、マロヌス神殿をウロウロ。

「ここ、修繕中の、遺跡だよね……?」

「この遺跡から、古代文字が解読されて、石盤集めに至るんだとよ。」

 解明されたら魔族が困る古代文明、よね、確か。

 わたし、奥に意味深な光景を発見した。

「あそこ、岩……じゃない!水晶だ!水晶に剣が刺さってる!」

 ラゴゥが告げた。

「王は代々、聖剣の儀式があるんだけど、あの剣、抜けたことないんだ。たぶん、先に聖剣が置いてあったとこに、水晶生えちゃったっていうか。一体化してるし。」

「あれじゃ水晶取れないよねー!」

 なんて、話してるうちに、政務官グランデールさんがエスメラルダを案内してた。

「女王陛下、聖剣の儀を行います。エルン=マロヌス神官から祝福を受けた後、聖剣を引っ張って終了です。」

 エスメラルダの元に、エルン=マロヌス神官が来て、儀式台まで案内した。

「創造の神エルン=マロヌスの名のもとに、女王陛下の治世に神の御加護があらんことを。ご改名をなさいますか?」

「……あー、グランデールや!マロヌスをつければいいのかい?」

「マロヌスは無難ですが、女王陛下のお考え次第でございます。」

「……思いつかないよ。ペンテシレイア=マロヌスにする。」

 何より、エスメラルダって名前は今後のお忍びでも使うから、尚更思いつかないよね。

「それでは、神の名を継ぎしペンテシレイア=マロヌス陛下よ。聖剣を引っ張ってください。」

 エスメラルダ、困惑顔だ。

「抜けないのに、引っ張るの?」

「王位継承の習わしですから。」

 軍事大臣ガラングルおじいちゃん、目を細めた。

「いや。或いは……ペンテシレイア様には、抜けるやもしれませぬぞ。」

 エスメラルダはガラングルおじいちゃんに聞き返した。

「あたし、抜けるかな?」

「わしは、貴方様ならばと。武力と博愛を合わせ持つ王こそが、真王ですぞ。むろん、筋力的にも、ですがな。」

「ガラングルがそういうなら、ひとつ、やってみるとするか!!」

 エスメラルダ、聖剣の柄を握りしめた。

 そして、力を込めて、すごい形相に。

「ふおおおおおおおおッ!!!ぬぅぉぉおおおおりゃあぁぁぁぁッ!!!」

 バリバリバリ!!!

「なんと!?」

 ひび割れる水晶!

「聖剣が……ッ!!」

「うおおおおぉッ!!!」

 エスメラルダは聖剣を掲げた!

 わたしは思わず叫んだ!

「えぇーッ!!?ちょっと、抜けちゃったんだけど!?アレ、抜けないやつじゃなかったのー!?」

「見事なり!ほっほっほ!」

 ガラングルおじいちゃんは笑ってる。

「真王陛下……!」

「戦いを、終わらせる王だ……!」

 大臣達、大急ぎで家臣に手配。

「画家を呼べ!!頭の中は真っ白だが、このシーンは記録せねば!!」

 なんとエスメラルダ、剛力で水晶が割れるほど聖剣を引っ張って、聖剣を抜いてしまった!

「なんだ。びっくりさせるね。抜けるじゃないか。こりゃあ、サプライズかい?」

 エルン=マロヌス神官も、大臣達も、大騒ぎ。

 無事、手配した画家が入ってきて、素早く、聖剣を掲げたエスメラルダをスケッチ。

 ガラングルおじいちゃんは告げた。

「ペンテシレイア様の本領発揮ですな。見事、真王の域ですぞ。武勇と博愛、そしてあの筋力と、あのアクセサリー。わしの読み通りでしたな。」

「あ。」

 クンツァイトさんがぼやく。

 あ!

 わたしも思い出した!

 エスメラルダが肌身離さずつけているお花のバングル!

 あれは、クンツァイトさんからの贈り物、筋力二倍化アクセサリーだった!!

 元のエスメラルダだって怪力だけど、これはバングルのバカ力よね!?

 ガラングルおじいちゃんは、それ見抜いてたってこと?

「神よ、遂に貴方様の望む真王が聖剣をおぬきになられた!貴方こそがエルン=マロヌスの使いであられる!!」

「真王ペンテシレイア=マロヌス陛下……!!」

 神官も大臣達も膝まづいた。

 いやー……

 違うのよね。

 わたし達パーティメンバーは気まずく沈黙。

 だって、それは筋力ですって言ったら、水を差すような状況だもの。

 マリアンヌさんは状況がわからず、ただ膝まづいて頭を下げっぱなしだ。

「マリアンヌさん?ちなみに、あの聖剣抜くと、どうなるの?」

「不和と争いに終止符を打つ聖剣だとか……。勇者パーティを超える真王が、魔王を討つのかもしれませんし……とにかく言えることは、これは歴史的な場面で、前代未聞だと言う事です。」

 エスメラルダ、剣をブンブン振って水晶を更に砕いている。

「なに?エスメラルダ、ハイテンションなの?」

 エスメラルダ、怖がって言った。

「近づくんじゃあないよ、ラビ!!この剣、危ないやつ!そこそこの範囲に二回攻撃が入るんだ!!」

 えぇ!?範囲技で二回攻撃!?

「ちょっと待って!わたし考古学者さんの依頼の時に聞いたけど、エルン=マロヌス時代は相当な昔なのよね?本当にその時代の剣なの?魔術だって鉄の技術だって、未発達だったはずじゃない?」

 ガラングルおじいちゃん、わたしに告げた。

「ラビさんや。エルン=マロヌス時代には、こういう解釈もありますぞ。魔族が隠したがる程の、魔術の発展したロストテクノロジーである、と。ペンテシレイア様の振るう聖剣を見たら、その解釈はあながち間違いではありませんな。」

「そうなんだ。ガラングルおじいちゃん、何でも知ってるのね。」

「ほっほっほ。伊達に長生きはしとりませんからなぁ。」

 わたし達そっちのけで、エルン=マロヌス神官と大臣達は話し合ってる。

「聖剣は真王が墓まで持ち込むべきです。」

「しかし、今後の王位継承の儀はどうなります?」

 一方、ラゴゥは羨ましげだ。

「聖剣、いいなぁ……かっこいいなぁ。」

 ラゴゥも強い戦士(ファイター)だけど、ますます地味に……。魔剣の一本くらいは買ってあげなくっちゃね……。

 チップはクロウに尋ねた。

「ちなみに兄貴、聖剣て相場いくら?」

「各国でせりあうレベルだな。赤竜の眼より価値があるぜ。国を買ってお釣りが来るだろうよ。」

 あやつらは、まーた不謹慎なことをー。

「にゃあには?せーけん、にゃあも!」

「ニャビの剣は、大きくなってからね。」

 ラゴゥがニャビをあやしている。

 モコちゃんの様子がおかしいなぁ。

 犬のフリしたまま、なんか、うずうずしている。

 わたしはモコちゃんのとこで屈んで、ヒソヒソと尋ねた。

(どうしたの、モコちゃん?)

(あの聖剣ね、エルン=マロヌスが魔族と人間に与えた、二個の剣の片割れだと思うの。エルン=マロヌスは、魔族にとっても、創造の神なのね。ガラングルさんの解釈は間違ってないよ。あれ、解析されちゃうと、魔族の魔術の仕組みやら、色々バレて、魔族は弱っちゃうの。魔族の魔術の原点も、エルン=マロヌスだからさ。)

(エルン=マロヌス神って、そんなに桁違いの神様なの?)

 わたしから音が鳴り、大臣達からも音が鳴る。

 腕時計?

 政務官グランデールさんが告げた。

「いけません、今後の儀の話は後にしましょう。女王陛下、その聖剣を持ったまま、馬車へ!今夜のうちに王都へ戻らねば、明日には国民へのスピーチがあります!ダミーのクンツァイト殿下が王位継承者のフリをするのも、カイヤ姫に政権代行を命じるのも、その場です!」

 エスメラルダは不安がった。

「この聖剣、抜き身で持っていくのは、危なすぎないかい?鞘とかないの?」

「せめて布で巻きましょう。神官殿、布をくだされ!」

 神官は儀式代のテーブルクロスを譲ってくれた。聖剣の刃に、テーブルクロスをグルグルに巻いておく。

 わたし達は、またしても馬車に戻る。

 馬車は走り出し、再び揺られるわたし達。

 王家の贅沢な馬車とはいえ、ずーっと座ってるのは、なかなかつらい。

 ニャビは、すぐ寝ちゃったけど、エスメラルダとわたしとマリアンヌさんは起きてる。

「エスメラルダ、寝ないの?」

「腰が痛いし……寝ると、バトルの夢なんか見てこの剣振り回したら、危ないだろ?それに、お腹もすき過ぎて、眠れないよ。」

「確かに……王都アポロメルタンに戻るまで、耐久戦だわ。」

「今回の王位継承自体が、かなりの突貫工事でしたから……女王陛下のご意思は、近衛隊長のラゴゥルレッド殿が事前にお話してくださったらしく、大臣達も何とか素早く対応してくださいました。ですが、かなりのハードワークです。わたくし達だけでは無く、外務大臣ローゲンブル様も各国にかなりの牽制をしましたわ。王位継承者のダミーがいても、政権がカイヤ姫にゆくのですから、下手をうてば、カイヤ姫をめぐって国取り合戦が始まっていましたわ。」

 マリアンヌさん、全体を見ていたのね。

「そうだったんだ。でも、大臣の人達、いい人ばかりでよかったね。わたしなんか、カイヤさんが政略結婚させられそうになったら、戦う気で乗り込んだんだけど。」

 カイヤさんが返した。

「大丈夫。ラビさん。その場合わたしが戦うし。」

 マリアンヌさんはまだハラハラしていらっしゃる。

「今の大臣達は、マロン=マロヌス様に理解のある柔軟な方々だから、マロン=マロヌス様と皇太后様が彼等を抜擢なさったおかげです。しかし、大臣達が希望に添えても、国民達が納得するかは、女王陛下次第なのです。」

 そうか。

 そうよね。

 女王が冒険者するから姫様が政権を担う、てことだって、前代未聞だもの。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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