第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 14
マリアンヌさんが起きてから、素早くエスメラルダの部屋に行って、まずはエスメラルダの着付け。
眠たい目をこすりながら、我慢我慢!
王家の白薔薇模様のドレスに、ファーがついた白のマント。
マリアンヌさんがエスメラルダの髪の毛をアップして、わたしはエスメラルダの靴を。
今日のエスメラルダは純白の、この、白い薔薇がついた靴がいい気がする。
淡いパールのネックレスと、イヤリングをつけてー。
仕上がったエスメラルダに、わたしとマリアンヌさん、賛美のため息が出る。
「エスメラルダ、すっごい綺麗よー!!」
「アシュリカの言う通りです。優美なお顔は、肖像画の若かりしペンテシレイア王女のまま。白い正装を着こなしておられますわ。」
「そうかい?あたしゃ太ったし、眠たいけどね。」
マリアンヌさんがエスメラルダをお化粧したから、全然クマとかはカバーされてるし、やっぱりおばあちゃんだとしても美人の部類なのよ。
わたし達は今度はカイヤさんの部屋へ。
「着付け入りまーす!」
なんと、カイヤさんのベッドでニャビが寝ているではないか!
「ぐううう、ぐううう、すやぁ……」
「ニャビ!お仕事よ、ニャビー!!」
マリアンヌさんはニャビを庇ってわたしを止めた。
「幼いニャビに徹夜は無理です。仮眠させてから、わたくし達の着替えの時に一度起こしましょう、アシュリカ。」
まぁ、マリアンヌさんの言い分も一理あるよね。
わたし達はカイヤさんを正装にして、髪をまとめ、靴を選ぶ。
エスメラルダと色違いで、薔薇のついた靴があるー!あれがいいなー!
「時に……カイヤ姫が、ゲームマスターをなさったと聞きましたが……。」
「別に、上手くはないよ。弟を遊ばせる為に覚えただけで。」
「カイヤさんのゲーム、面白かったのよ、マリアンヌさん!」
マリアンヌさんは微笑んだ。
「どうなることかとは思いましたが、楽しめたならば何よりです。さて……」
わたしとマリアンヌさん、カイヤさんの正装姿に惚れ惚れ。
「キレーっ!!」
「一段と輝いていますわ、カイヤ姫。」
「そうか。わたしはもういいよ。ラビさんとマリアンヌさんも、着替えてきなよ。ニャビ連れてって。」
「うぇーい!がってんしょーちのすけよーう!!」
わたしとマリアンヌさんは、女中部屋で、まずニャビを起こし、着付けした。
「にゃあの……どえしゅ、ぴったりだお。」
まだまだ眠そうだが、これで良し。
「可愛いニャビ!ちっちゃい女中さんだ!!」
「さあ、ドレスを着崩れしないように、また寝ていてくださいね。次はアシュリカ、貴方ですよ。」
ふぁーッ!!
初のマイサイズドレスに感動しちゃう!!
胸元の白薔薇刺繍は、わたし達のお揃い!
マリアンヌさんが、わたしの髪をハーフアップにした。
「あれ?全部アップにしないの、マリアンヌさん?」
「本日の戴冠式は、食事の席ではありませんからね。皿に髪の毛が落ちるだなんて心配は、此度は有り得ません。ただし日帰り聖都の強行突破、食は携帯食で我慢になりますよ。」
そういえば。
お腹空いた……。
マリアンヌさんは自分でドレスを着て、自分で髪をセットしてしまう。
「マリアンヌさん、何かわたし、お手伝い出来ること、ないかな?」
「いえ、結構ですよ。貴方は休んでいなさい、アシュリカ……」
わたし、マリアンヌさんに色々恩返ししたいのになぁ。ぷぅー。
わたしがふくれたのに気づいたのか、マリアンヌさんが譲った。
「仕方のない子ですね。では、わたくしの髪にバレッタをつけてください。」
「うん!!」
マリアンヌさんのセットした髪に、黒いリボンのバレッタをつける。
近くで見ると、マリアンヌさんの髪ってとっても栗色で、光に透けて色合いが変わるの。綺麗ね。
「どうなさったのです?アシュリカ。」
「あ、ごめんね。髪の色綺麗だなって、見ちゃってたの。」
「貴方の方が綺麗な金髪でしょう、アシュリカ?」
「金髪っていうか赤毛っていうか……わたしの髪は中途半端だからさ。」
マリアンヌさん、苦笑した。
「人とは、持ちえぬものに惹かれるのです。貴方の金髪は充分綺麗ですよ、アシュリカ。その素敵な髪を、大切になさい。」
「ふわい!サボらず櫛通します!」
わたし達が仕上がったら、ニャビを抱え、カイヤさんとエスメラルダを呼びに行き、大臣達とも合流!
政務官グランデールが代表して馬車に促した。
「おはようございます。しかしながら、少々遅れております故、挨拶は聖都で致しましょう。さぁ、王家の馬車にお乗りください。」
王家の馬車、すご!
華美な装飾に、白馬が三頭!!
「四人乗りだ。ニャビは、誰かの膝でいいよね?」
マリアンヌさんが制した。
「ペンテシレイア王女、王家の馬車は、わたくし達女中が乗るものではございません。」
「えーと。あたし達は、馬車で寝るから。マリアンヌさんには、あたし達を起こす係を頼みたい。女中一同で、一緒に乗ってくれないかい?」
「……ご命とあらば、かしこまりました。」
わたし達は、エスメラルダ、カイヤさん、わたし、マリアンヌさん、膝にニャビを乗せ、馬車に乗り込んだ。
時間が押しているらしく、馬車が走り出す。
わたしは馬車に揺られてウトウト、眠たくなってきた。エスメラルダはぐうぐう寝ている。
そりゃそうだよね。わたしだって眠いくらいだもん。老齢のエスメラルダが徹夜でゲームって、かなり頑張ったよね。
外で、この馬車を警備して、馬を走らせてるラゴゥには、悪いんだけどさ。
わたしもぷっつり、意識が途絶えた。
「起きてください。起きてくださいまし、ペンテシレイア王女!」
わたしはマリアンヌさんがエスメラルダを起こそうとしている声で目覚めた。
やべ、涎でてた。
カイヤさんはもう起きてるし、寝なかったのかな?
「エスメラルダ、起きるのよー!」
いま、何時くらいなの?
時計を見たら、午後3時だった。
聖都って遠いのねぇ。
「むにゃ。……ふわああ。聖都に着いたのかい?」
「はい。グラン=ファルファロ大聖堂前ですわ。貴族達も着いております。」
わひゃー。外は馬車だらけだ!どんだけ貴族集まってんのよ。
「誰か、眠気覚ましはあるかね?」
カイヤさんがどこからかビスケットを出した。
「これをあげよう。カフェインたっぷりコーヒービスケットだ。」
エスメラルダ、もぐもぐ食べながら、苦い顔つきで言った。
「確かに目は覚めるけどさ、こりゃあまた、一段と苦いビスケットだねぇ。」
何だかめちゃめちゃお偉いさんの聖職者が、馬車のドアを開けた。
「王女様、姫様!皆さん待ちぼうけですよ、さぁ、降りてきてください!」
わたし達は馬車から降りて、エスメラルダが大聖堂に歩み寄ると、貴族達が道を開けた。
「ペンテシレイア王女だ」
「あの目!何十年経っても変わられていない!」
「皇太后様にそっくりだ。」
「なんと美しい……」
わたしは発見。
チップは貴族席にいるし、モコちゃんを抱えてる。
クロウは僧侶達の席にいる。
僧侶席の同列に、王家であるジェダイトさんとクンツァイトさん。きちんと正装して来てる。
ちょーっと、一旦解説するね。
各国似たもの同士だが、だいたい、すべての頂点は神様。エルン=ファルファロ神や、エルン=マロヌス神ね。
次に、王。
で、なんと言っても、聖職者。すごく偉い僧侶なんかは、神の代行者として、王にも発言権がある訳よ。
その次に、貴族。
そこから、かなり離れて下にいるのが、平民。
冒険者仲間だったりすると、そういうのは気にしないけど。
戴冠式を、僧侶が仕切っているのは、そういう訳なのよ。
ラゴゥ達近衛と、カイヤさんは、エスメラルダの後を着いて歩き、わたしとニャビは、マリアンヌさんに連れられて、女中の控えみたいなコーナーに立つ。
どえらい僧侶の人が、王冠を掲げながら、言った。
「戴冠式を始めます!」
皆、息を飲むように、静まり返った。
「汝、神の定めた王、ペンテシレイアなり。清き風、生命成す森の神、偉大なるエルン=ファルファロのお導きがあらんことを。神の祝福のもと、良き王、良き治世とならんことを。さぁ、プリンセスカイヤ、貴方様からペンテシレイア王女にこの王冠を授けてください。くれぐれも荘厳に行ってください。」
カイヤさん、王冠を受け取り、エスメラルダが屈むより早く、ヒョイッとエスメラルダの頭に王冠を乗せた。
「姉ちゃん!!」
ジェダイトさんがヒヤヒヤしてる。
「軽ッ!!」
「カイヤ!荘厳にって言われただろうに!」
カイヤさん飄々と告げた。
「だが、時間押してるだろ。だいたい、わたしは儀式的な発言、習ってないんだ。」
始めはいきなりのことに戸惑う貴族達だったが、やがて貴族達からコールが来た。
「女王ペンテシレイア陛下、戴冠!」
「ついに、王権の復活だ!!」
「ペンテシレイア女王陛下!我々にお姿を見せてください!!」
「嫌だねぇ……飾りじゃ無いんだがねぇ。まあ、やるしかない!」
エスメラルダが振り向いた。
貴族達は万歳コールだ。
「画家!スケッチ!肖像画を!!」
「女王陛下万歳!」
「王権復古万歳!!」
「わたし達の女王陛下の、なんと美しいことか!!」
ひとしきり貴族達は盛り上がる。
わいのわいの。やいのやいの。
大変だなぁ。うるさいし。
わたし、お姫様に憧れてたけど、なんか現実を思い知ったわ。
これが王家の責務なの?
エスメラルダがかわいそう。
見世物小屋じゃないのよ?
「ここまで!時間が押しております!」
政務官グランデールさんがエスメラルダやわたし達を連れてってくれた。
わたし達はまた馬車に帰った。グランデールさんは窓から告げた。
「お疲れでしょうが、お次はエルン=マロヌス神殿です。せめてこれを。ミルク風味のウエハースです。」
「ありがとう、グランデールさん。」
エスメラルダは既にぐったりしてる。
「見世物のタイガーにでもなった気分だよ。」
「大変だったね、ほんと。元気だして、エスメラルダ。次は関係者だけで、知らない貴族達はいないんでしょ?」
「うーん。お腹も空いたよ……。」
「レシピ集めも、一旦中断だしね。確かにお腹はぺこぺこだなぁ。グランデールさんにもらったウエハース食べよっか!」
マリアンヌさんが尋ねた。
「レシピ?レシピを集めているのですか?」
「はい!王都の役目が全部終わったら、皆のお金をあわせて買いたいレシピ本があるんです!」
マリアンヌさん、ふと言い出した。
「女王陛下のパーティの為なら、宮廷料理人達は、レシピ提供を惜しみませんが……。」
「え!!あの、わたしの大好きな、ゼリーとハムに包まれたムースのやつも!?」
「生ハムとブイヨンゼリー包みのフォワグラのムースですね?もちろん、可能です。」
わたし、カルチャーショックで霹靂が走った。
わたし、そんな高級食材食ってたんかい。
「マリアンヌさん。宮廷料理は、やめとこうかしら……わたし達のパーティじゃ、フォワグラとか買えないし……。」
わたし達は、ウエハースをがむしゃらに食べた。
腹ぺこ虫は治まらないけど、ひとまずこれで、間に合わせよ。
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