第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 13
「俺とルナルナは邪竜に乗り、上空から国中を焼き払う。反乱軍を抹殺してから国を乗っとりゃあいい。ラクディアとベガ=ギガルガは利用価値のある王家を捕獲し、安全区域に移動せよ!」
これが……魔王軍なのね。
焼き払ったり、王家捕獲なんて、なーかなか体感出来る遊びじゃあ無い!
わたし、こっちの卓来てよかった。
貴重な視点を得た気がする。
「ベガ=ギガルガにお任せあれ!魔王様はどうぞ、反乱軍の討伐を!!」
「わたくしとベガ=ギガルガで王城へ……異様な攻撃力の家臣とか、いらっしゃらないでしょうね?」
カイヤさんが言った。
「勇者の恋人、王城召使いのアメリがナイフを持ってラクディアに突撃!うわあああ!!勇者様の仇ッ!!ラクディアは防御力1だ、当たれば即死!」
どええ!?
「ベガ=ギガルガ、ラクディア様を庇いましょう!」
「ですが!ベガ=ギガルガ、貴方の底辺の素早さでは!」
「素早さ+(移動力×ダイス3個)で、うーん、予想外にベガ=ギガルガの素早さが底辺だな。ダイス3個で16は無いとラクディアが死んでしまう。ベガ=ギガルガと同時にラクディアの回避判定もしようか?」
わたし、ダイス3個振る。
「でぇりゃあああ!ダイス3個で17!初めて高い値が来ましたぞ!ラクディアお嬢様の危機に、ベガ=ギガルガ火事場の馬鹿力で護衛成功です!!」
「偉い!やりましたわ、ベガ=ギガルガ!娘からナイフを取り上げなさい!」
「召使いのアメリからナイフを取り上げるのに判定はいらない。」
「この娘、どういたしやすか?ラクディアお嬢様。勇者へのねっとりしっとりした愛から、凶行に走ったようですが。」
ラクディアお嬢様、気高く告げた。
「魔王様の邪竜は向こう。反対方向からお逃がしなさい。」
カイヤさんこと、アメリが言った。
「何故、わたしを殺さない!?」
「今の貴方はただの使用人。勇者の仇を打つその愛が本物ならば、貴方は腕を磨いて剣くらい学んでから、わたくしに報復にいらっしゃい。その時こそ、相手になって差し上げますわ。」
「ベガ=ギガルガによって、アメリは国から脱出した。」
「さすが、我が主ラクディアお嬢様!愛を尊ぶからこその英断ですな!」
「恋する乙女は、守られるだけのお姫様ではありませんもの。愛の為に武器をとってからが本番ですわ!ホーッホッホッホ!!」
なんだかもう、わたしにはチップがチップには見えない。ラクディアお嬢様としか。
魔王とカイヤさんは判定勝負。
「よし、国中焼き払った!魔王軍軍旗を王城へ!しばらくの仮の根城とする!!」
「魔王様の仮のお住いを、ゆっくりピカピカに磨くべく、ルナルナが城全体に防護結界行きますぅ!」
かくして、ソチシェ公国は魔王軍に陥落した。
めくるめく冒険の幕開けであった。
いざ、お隣のミカーニャ王国を攻めたら、そっちはノーガードの田舎大国!貧弱勇者パーティがいるだけの、みかん農業国だったのだ!
「本来の初心者ルートだったようですな?」
「ちなみに、みかんの魔力補給力は、僅かとはいえ、何も食べないより遥かにマシだ。」
わたし達は、ミカーニャ王国から輸入経路を作り、みかんの魔力補給を地味に続けた。
その他の国も攻略していく。
強い国、面白い国。
色んな国を討ち取って、ついに最終決戦!
しかし、わたしのベガ=ギガルガとラクディア姫は全然魔法使わないから、魔力消耗しないんだけど、もはや魔王様の危ういヒットポイントや、ルナルナの魔力の枯渇問題が発生!
「最後のひと踏ん張りですわ!」
なんやかんやあって、真の勇者ラファエルのパーティーの魔術師が、魔防が無いわたし、ベガ=ギガルガに攻撃魔術で大ダメージを与えた。
「ぬわああああ!わ、わたしの鉄壁が崩されるう!」
「転移でソーサラーにぶん殴りは効くか?」
「勇者パーティの魔術師は魔族だ。転移のイタチごっこになるが?そもそも、この魔術師は一撃で死ぬほど柔くは無い。」
ルナルナが提案。
「ルナルナ、敵魔術師にスキル封印をかけますぅ!」
ルナルナの判定は成功。
しかし、今のでルナルナの魔力は残り僅かだ。
魔力が無くなると魔族は死んじゃうから、ルナルナはここまで。
最終的に、魔王様もヒットポイントが残り僅かになって、ベガ=ギガルガの後ろへ後退。
ベガ=ギガルガを盾に、ラクディアお嬢様の猛火力の持久戦で、ついに勇者パーティを打ち破った!
「やりましたな、お嬢様!」
「魔王軍全国制覇ですわーッ!オーッホッホッホ!!」
肝心の魔王様はヘトヘトだ。
「終わりか?みかんの呪詛は解除だろうよ。酒をくれ。」
カイヤさんは酒瓶を魔王様の前に置いた。
「無事、みかんの呪詛は解除され、魔王軍は力を取り戻すだろう。魔王、統治のスローガンを。」
「木偶の人間野郎共よ。今日から世界は魔王軍の縄張りだ。崇めよ、さすれば与えられん。部下の野郎にまで愛される俺だ。とにかく……てめぇらの世界は俺のもんだ。世界中のお宝を貢ぎ、寵愛をこうんだな。」
「ただし、魔王様への愛の深さは、わたくし達にはかないませんわよ!しっとり!」
「魔王様へ送るハートのサインは我らのもの!ねっとり!!」
「そして魔王様の空想ラブ光線には、誰もがルナルナにはかなわないのですッ!!」
カイヤさんが拍手した。
「ゲームクリアだ。おめでとう諸君。」
「「やったぁァァァ!!」」
わたし達はハイタッチだ。
「生存出来たじゃねえの!それにおまい、途中から自力で計算しとったな。」
「カイヤさんが初心者向けにしてくれたからよ。マリアンヌさんに借りたルールブックの判定は、もっと複雑で、わかんないけどさ。」
「楽しかったけど、僕眠たいや。」
モコちゃんにクロウが同意。
「当たりめぇだモコ。俺だってまさか歳食っておきながら、ゲームで徹夜とは……」
「クロウの兄貴上手かったよなあ〜!」
「うん!形式上はハーレムだけど、魔王様まったく揺らがないし、指示も上手いしね!」
む?エスメラルダ達、まだ終わってないみたい。
「マロン=マロヌス陛下の卓、いまどんな感じな?」
「んー。エスメラルダのチャングと、ニャビのワンチェンの最終決戦だな。」
今までずーっと再戦して来たってこと?
「チャングが形勢不利だな。賢しいワンチェンには味方が大勢ついててよ。でも、一騎打ちだから、ダイス次第よ、ありゃあ。」
その時、ニャビのダイスが4、5、6を出した。
「4・5・6はクリティカルヒットだ!ワンチェンの剣はチャングの胸を貫いた!!チャングはヒットポイントゼロで、決着!!」
「さらばてんめいっ!さらば、わがえいえんのともよっ!!」
「グウウッ!!……見事!我が宿敵よ!わたしの敗北である……友よ……せめて、この命尽きるまでは……グと過ごさせて欲しい……!」
「かまわぬ。どのみち、われこそがしょうしゃなのだ。なんじにわがゆうじょうをしめさん。」
「ワンチェンの勝利に湧くワンチェン軍。チャングは血の道標を残しながら、部下達に支えられ、自陣にいる妻、グの元にやって来た。」
「あぁ……ああああああああぁぁぁ!!チャング様!!チャング様ぁ……!!」
わたしはグの迫真の演技に魅入ってしまった。
戦に出た最愛の人の、死の間際。
取り残される女性の、絶望感だ。
「愚かな男と笑うがよい、グよ……最愛の汝を残し、戦に走り、挙句、この世を去るわたしを……。」
「グは倒れ込むチャングの頭を膝に乗せた。」
「誰が貴方様を笑いましょうか……チャング様。せめて、間際だけは、わたしと共に……。」
「もはや目が霞むチャングは、残されるグの行方を案じた。」
「……わたしの亡き後に、汝の愛を……どうすべきなのか。……あぁ、グや、グ……汝を、……如何、せん……」
「天命の猛将、チャングはこと切れた。最期の在り処はグの元に。」
「あぁ、チャング様……わたくしも旅立ちます。あの世の果てまでも、貴方様を探しに行くわ。このグは、天でも、チャング様のみそばに……」
ラゴゥが短剣で喉をつく仕草をした。
「グはチャングを追うように自害した。しばらく後に、ワンチェンは事態を知る。ワンチェン様!妃に御所望であられたグ姫は、夫のチャングの後を追いました……!何にせよ、これで国の帝はワンチェン様であられます!!」
「チャングのみならず……グをも、われはうしなったのか……!」
「部下達が帝の誕生に舞い上がる中、悲しみに暮れるワンチェン。」
「なんというふもうなしょうりよ。わがあいも、こうてきしゅもうしなってしまった。われのせいは、かれらとともにあったのだ。くになどいらぬ。われは、かちぬいたがゆえに、すべてをうしなった、あわれなぬけがらにすぎぬわ。」
「ワンチェンは、帝となるが。」
「われのこころはまっくろに、かわってしまったのだ。たみをあっせいし、ざんさつする、あくおうとなろう。」
「すべてを失ったワンチェンは、圧政者となり、虐殺を繰り返した。国民の反乱で、僅か13年の治世で命を落とすのであった……!ゲームクリアだー!!」
「「やりきったー!!」」
なんか、あっちの卓めちゃめちゃ時代劇みたい!ラゴゥもすごいのね、迫真だったし!!ていうか、ニャビ!普段から頭を使いなさいよー!!
「にゃあ、かっこよくできたかなぁ?」
「かっこいいよ!ニャビちゃんのワンチェン、根回しはこすずるいのにさ、チャングへの義はずーっと重んじてて!!最高だよ!!」
「そうさね、すごく上手くできていたよ。ニャビにこんな語彙力があるとは、驚いたね。」
「ほんと!それ!!俺の読み聞かせ、きちんと覚えてるんだなぁ。」
「にゃあ、こういうのらーいすきらよ!」
ラゴゥとわたしは不思議がる。
「ワンチェンが出来るのに、なんで本人は舌っ足らずなんだろ?」
「あたしは?出来てたかな……?まぁ、ラゴゥがいたから、だいぶ助かったんだけどさ。」
「かっこいいよチャングかっこいい!!不器用で武骨な一本気!!グの元で死ねて……良かった、グスッ」
マロン=マロヌス陛下泣いてる!
なんてピュアな人なの!?
「俺はエスメラルダとニャビのサポートのつもりで入ったけど、全然手助けいらなかったね。俺も楽しんじゃったー!」
「グーッ!!ナイスヒロインだったよ、グ!!最期までチャング探しの旅へ……えーん!!」
ニャビも、思うところあったのか、一緒に泣き出した。
「うわあああ!!にゃあもっ!にゃあも、良かったけど、ないちゃうよ!!」
「えーん!チャングー!グー!ワンチェンだって辛いよぉ!!」
「つらいよぉー!!わぁーん!!」
ラゴゥはニャビを、エスメラルダはマロン=マロヌス陛下をさすった。
マロン=マロヌス陛下は大喜びだ。
「ぐすっ。……本当に、特別な日だ!生まれて初めて、お姉ちゃんと遊べた!」
エスメラルダは笑った。
「昔のお前じゃ、こんなにドラマチックなゲームは作れなかったろう。今だから、あたし達は遊べたんだよ。栗坊も成長したねぇ。良い世界観だった。楽しかったよ。」
マロン=マロヌス陛下、大はしゃぎだ。
「へへ……わぁーい!お姉ちゃんが僕を褒めてくれたァ!!」
「それにしても。ニャビ、途中でお前さん思いっきり舌噛んでたが、大丈夫かい?ニャビが夢中なのを見てたら……昔の栗坊を思い出すねぇ。」
「にゃあ、げーむ、らいすきらよ!!」
ゲームブック、買ってあげなくっちゃねー。
「小さいうちに、もっと栗坊と遊んでやれば良かった。恋愛しか見えてない姉で、ごめんよ。」
マロン=マロヌス陛下は首を振った。
「ううん。僕、国葬の三日後に目が覚めて、足が壊死したって聞いた時、最初は切断を拒んだんだ。怖かった。でも、長生きしていたら、きっといつか、お姉ちゃんに会えると思って……頑張って、手術に挑んだんだ。僕に勇気をくれたのは、お姉ちゃんだよ。」
「栗坊……」
カイヤさんが気づいた。
「あれ。なんか、鳴ってないか?ラビさんの方から。」
ん?んん?
「なんか音が……あぁー!時計だ、腕時計が鳴ってる!エスメラルダ、四時半!!マリアンヌさんを起こして、正装に着替えなきゃ!!五時に馬車よ!!」
エスメラルダは慌てて立ち上がった!
「何ーっ!?ね、寝る時間は!?すぐ戴冠式するのかい!?」
「寝るのは馬車の中よ!カイヤさんも着付けするから急いで!!ラゴゥは正装は?」
「俺走って自宅で着替えて、エスメラルダの馬車警護しながら馬で行くから!エスメラルダを階段の上に届けたら、先いくね!!」
「あーい!!」
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