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第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 9

 地下階段、入っていくと、真っ暗過ぎ!

 とはいえ、光ってるほうは、マリアンヌさんが燭台で照らしてるってことだから、近づけない。

 ニャビが小声で詠唱して、小さな灯りをともした。

(ニャビ!ナイスファイン!)

 わたし達は息を潜めて階段を降りていく。

「やぁ!マリアンヌ!」

 なんか、この場に似つかわしく無い、明るい声がした。

「お待たせ致しました。まずは、お食事になさってください。」

「わぁーい!お腹ペコペコ!あのね、新しいシナリオを書いたよ!遊んでってね!!」

 わたし達は、部屋に飛び込んだ。

 間違いない!!

 田舎娘のわたしだって、肖像画で見たもの!

 それは車椅子に乗った、マロン=マロヌス陛下だ!!

 エスメラルダが叫んだ。

「栗坊ッ!!アンタ、政治から逃げて何やってんだい!!」

 マロン=マロヌス陛下は、老いたエスメラルダを見て、徐々に目を輝かせた。

「お姉ちゃん……その、変わらない目元は!お姉ちゃんなの!?わぁーい!ついに王都に来てくれたんだね!?」

 カイヤさんが、マリアンヌさんに尋ねた。

「マリアンヌさん。どういうことだ?マロン=マロヌス王は、国葬までされたはずだ。」

「……ここまで来てしまっては、隠し立ては出来ませんね。マロン=マロヌス様。お話をしても、よろしいですか?」

「いいよー。みんな、お姉ちゃんの友達でしょ?」

 わたし達はやたら広いテーブル席についた。

「円卓の騎士みたい。」

 なんとなくボヤくと、マロン=マロヌス陛下大興奮。

「そうでしょ!?円卓の騎士のゲームもたくさんやってきたよ、この卓で!!」

「マロン=マロヌス様。今は、大事なお話をしなければ。どうか、サンドイッチを食べながら、お待ちください。」

「……で?」

「ペンテシレイア王女様の父王バルバロイ3世は、王妃アンドロメダ様との間に、後継者を成しました。元々二人は政略結婚、ペンテシレイア王女がお生まれになり、勤めを果たしたと言えます。戦争主義の好戦的な父王様は、魔王軍打倒の為、数多の兵士達や、数多の勇者パーティを差し向けました。慌てて将軍ガラングル殿は冒険者組合を組織し、冒険者の支援に対策しましたが……安直に、早すぎる勇者パーティ達の度重なる投下は、次々と勇者パーティ達の死をもたらしました。今は亡き、彼らは、全20組に及びます。」

 エスメラルダが苦い顔をした。

「うちの父が……それを助ける為に作られたのが、ガラングルの冒険者組合なのか……。」

「この、好戦的な王様に、アンドロメダ王妃は愛情が及びませんでした。一子出生し、王妃の務めは果たされましたが、平和主義の王妃と戦争主義の王は、冷戦状態に入ります。そこで、王妃様を支えたのは、平和の為の協定を提唱していた騎士ブロッケン様でした。二人は、支え合いながらも、ついに一線を越えて、愛し合ってしまった。……王妃様の妊娠騒動で、王は真相を知り……騎士ブロッケンを魔王軍討伐部隊の最前線に送り、騎士ブロッケンは戦死。王妃様は孤独の中で、マロン王太子を出産なされました。」

 エスメラルダは口を両手で覆った。

 わたし達も、動揺が走った。

「栗坊とあたしは、父親違いの姉弟なのか?」

「はい。王家のスキャンダルを隠蔽する為だけに、マロン=マロヌス様の父親、騎士ブロッケンは殺され、マロン王太子は仮の王太子として、育てられました。しかし、当然ながら、王に愛されることは無く……ろくな教育も与えられず。王妃様の庇護下でのみ、ゲームブックを読んで遊ぶ幼少期でした。……無論ですが、マロン=マロヌス様は、王位継承権を持ちません。」

 エスメラルダは頭を抱え、自分を責めて唸った。

「あたしは、そんな栗坊を置いて逃げたのかッ!!!」

 カイヤさんがエスメラルダをさすった。

「母さん。まだマシだ。母さんの弟と、生きて会えたんだからな。マリアンヌさん。王位継承権を持たないマロン=マロヌス王は、確かに在位してたけど?」

「父王バルバロイ3世が亡くなり、ペンテシレイア王女も行方不明でした。マロン=マロヌス様は、ペンテシレイア王女の子供、カイヤ姫のような人が現れるのを待ち、王家の次世代までの繋ぎとなって、偽の国王になりました。しかし、マロン=マロヌス様が教育されたことは無く、政治はわかりませんし、自らは執政権も持ちませんでした。マロン=マロヌス様在位中の執政は、皇太后アンドロメダ様が執り行いました。マロン=マロヌス様は飾り物でありながら、王家の縛りを受け続けたのです。」

「栗坊……」

 マロン=マロヌス陛下はサンドイッチ食べながら、再会した姉にニコニコしている。

 よほど、エスメラルダのことが好きなのね。

 心は少年のまま。

 夢見る王様……まさに、そんな感じ。

 恨みつらみがあっても、おかしくないことなのにさ。

「それでも、マロン=マロヌス様は自己学習をなさって、努力はしました。一般教養が無ければ、ゲームだって作れませんし、王としてのスピーチの沽券に関わります。お飾りでありながら、国を支えたマロン=マロヌス陛下が、ゲームを愛することを、誰が口出し出来ましょうか。ゲームの世界では、マロン=マロヌス様は唯一自由になれたのです。わたくしも、マロン=マロヌス様に誘われて、その頃仲間入り致しました。しかし、皇太后アンドロメダ様が亡くなると、執政は行き詰まってしまいます。政治はあくまで王家のもので、マロン=マロヌス様には資格は無かったのです。マロン=マロヌス様は退位を決意し、国政を最も信頼出来る政務官グランデール様にお預けし、僅かな協力者達を信じて、毒をお飲みになられました。」

「……それは、麻痺毒?」

「もっと危険な毒です。お通夜、国葬から墓場まで、仮死状態が続く必要がありましたから。国葬が終わり、わたくし達協力者が墓を掘り起こし、解毒しましたが……危うく、本当の葬儀になるところだったのです。マロン=マロヌス様は、三日間生死の境を彷徨いましたし、最終的に、足を失いました。仮死状態期間が長く、足が壊死していたのです。」

 エスメラルダは改めて弟の足を見て、嘆いた。

 わたしもびっくりした。マロン=マロヌス陛下には、太ももの途中までしかなくて。

「足が……無い。栗坊!お前、足を切断したのか……?」

 マロン=マロヌス陛下は、サンドイッチを食べ終わっちゃった。

「いいの、無くしたのが手じゃなくてよかった!手が無かったらゲーム作れないもん。それに、お姉ちゃん帰ってきたんだ。僕、無駄な在位じゃなかったね!ねぇ、お姉ちゃんの子、どこ?僕の甥っ子?姪っ子?」

 カイヤさんが歩み寄った。

「わたしが姉ちゃんの娘のカイヤだ。貴方の姪っ子。」

「わぁ!大人だったのー!?美人さんだー!!そうか、そうだよね!お姉ちゃんももうおばあちゃんだもん!」

「コラッ!栗坊!!あたしはまだまだ現役戦士(ファイター)だよ!!」

戦士(ファイター)!?かっこいい!!すごいや、お姉ちゃん!!」

 ほんっと純真無垢!まったく悪気ないのね。

 マリアンヌさんが庇っちゃう理由は、よくわかった。

「事情はわかったわ!でもね、マロン=マロヌス陛下。マリアンヌさんは疲れすぎて倒れちゃったのよ。今日はマリアンヌさんには眠ってもらって、わたし達と遊ばない?」

「アシュリカ……まさか、その為に来たのですか?」

 わたしは地下室を見て回る。

 ベッドがあるじゃないの。

「そうよ。わたし達は、マリアンヌさんを寝かせに来たのよ。流れで王家の秘密を聞いちゃったけど……マロン=マロヌス陛下、あのベッド、マリアンヌさんに貸してくれない?」

「いーよー!そっかァ、マリアンヌは日中の仕事があったんだ。ごめんね?ゆっくり眠ってね!」

「いえ。わたくしの意思でゲームに参加しておりました。今宵は休ませていただきますが、どうか、お気になさらず。」

 マリアンヌさんを見送るわたし。

「おやすみ、マリアンヌさん!後はわたし達に任せて!」

「アシュリカ……戸惑ったら、これをお読みなさい。」

 ん?本だ。

「ルールブックです。おやすみなさいアシュリカ。」

「うん!頑張るー!」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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