第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 8
酔っ払った迎賓を客間に案内し、晩餐会が終わると、わたしとマリアンヌさんとニャビ、残り物で夜ご飯だ。
「確かにめちゃめちゃ美味しいけどさぁ。エスメラルダとカイヤさん大丈夫なの?お腹の形、尋常じゃなかったよ。明日までに治るのかしら。」
ニャビはいつかの記憶から、わたしを厳しく注意した。
「らびぃ、らめなんらよっ!あかちゃんじゃないおなか、いっちゃらめらよっ!!」
うーん。わたし達が教えたことだもんね。
「痛い痛いのことよ、ニャビ。」
「いたくても、らめっ!いたいのと、おーきいのは、ちがうれしょ!?みぃんな、かわいくないたいんだおっ!?」
マリアンヌさんがニャビを撫でた。
「ニャビが正しいです。世の女性は皆、ウエストが気になるもの。心配はしてもよろしいですが、具体的なウエストのサイズ表現は、陰口に値しますよ、アシュリカ。」
なーんか、マリアンヌさんが言うと、しっくり来ちゃうのよね。
「そうかー。そうよねー。心配してても、お腹の大きさは余計よねぇ。ニャビ、わたしが悪かったわ。」
「きおつけよおねっ!」
わたし達、ご馳走の残り物は美味しいんだけど、やっぱりなんか落ち着かない。
「わたし、食べたらエスメラルダの介護に」
その時だ。
マリアンヌさんが倒れた!
わたし、駆け寄って抱き起こした。
「マリアンヌさん!?大丈夫!?マリアンヌさん!!」
よく見たら、マリアンヌさん本当に寝不足!
マリアンヌさんの夕飯のお皿だって、全然食べれてない!
なんでカイヤさんが指摘した時に気づかなかったのよ、わたし!!
マリアンヌさん、責任感から、何とか身を起こし、誤魔化した。
「大丈夫ですよ。心配をかけましたね、アシュリカ。持病の目眩です、すぐ治ります。」
これは……!
わたしがしっかりしなきゃだ。
エスメラルダも介護して、マリアンヌさんも見張らなきゃ。
マリアンヌさん、何かの義理堅さで、無理してるのよ。
夜更かしの理由は、絶対ある!
「ぽんぽん、びょうきらの?にゃあのくっきーたべたら、ながいきできゆ?」
わたしはニャビに耳打ちした。
「ニャビは早めに仮眠してて。マリアンヌさんの病気、今夜、わたし達で治すよ。」
わたし達がエスメラルダの部屋に行くと、既にエスメラルダはげっそりとやつれて、ベッドで腰を休めていた。
「エスメラルダ、お腹まだ痛い?」
「ううん。お腹の中身、全部吐いちまったよ。お腹は楽になったけど、まだ腰がね……。やっぱり歳だ、アルコールはもう無理なんだ。」
「吐いちゃったのか……。でも、辛いけど、出した方が楽よね……。カイヤさんは?」
「カイヤはトイレを詰まらせて、ギュッポンで奮闘してる。」
なるほどー。
「じゃあ、二人のお腹は治って、エスメラルダは腰を休めてる状態ね?」
「ラゴゥ達の部屋に、遊びに行きたいんだが……なんとか、ならないかねぇ……?」
「わたしもラゴゥ達に話があるの。任せて、エスメラルダ。」
わたしは今日クローゼットの奥で見つけた、車椅子を組み立てた。
「皇太后様のものかもしれないけど、借りてこ。さぁ、わたしが支えるから、車椅子に乗って!」
「助かるよ、ラビ。」
「途中でカイヤさんのトイレも直して、カイヤさんとも一緒に行こ!」
「頼りになるねぇ。」
エスメラルダを乗せた車椅子、段差で支えるにはなかなか重たいけど、押していきながら、カイヤさんの部屋へ。
「エスメラルダ。カイヤさんのトイレ直してくるから、待っててね。」
わたしはカイヤさんの部屋へ。
カイヤさんはトイレのギュッポンに苦戦して躍起になって、怒った顔でスカートがびしょ濡れ。
「カイヤさん!下がって、着替えは手伝うから!これはもう、ギュッポンじゃ通用しないよ。」
わたし、ポケットから出した固形の丸いのを、トイレに放り込む。
丸いのは溶けていく。
「水流さないまま、一晩おいて。トイレはエスメラルダの部屋で。この丸いのが、水道管の中身溶かしてくれるからね。」
「むぅ。マリアンヌさんの知恵か?」
わたし、振り向いた。
「そのマリアンヌさんだけど、倒れたのよ。夜更かしに何か義理立てしてる。言っても聞かないから、わたし達で止めようと思って、ラゴゥ達に話しに行くの。」
カイヤさん、怪訝な顔になる。
「確かに、あの人寝た感じしなかった。よし。わたしも行こう。なんなら、姫権限で止めさせるぞ。」
「ありがとうカイヤさん!その前に着替えちゃお!」
わたしはカイヤさんをブラックの肩リボンドレスに着替えさせて、エスメラルダの乗った車椅子を再び押した。
「行こー!早くしないと、ラゴゥ達寝ちゃう!!」
王家の部屋から客間は結構な距離。
「うわ!また段差だよ!!車椅子を支えて降ろすラビの苦労が……参ったねぇ……」
「大丈夫大丈夫!でも車椅子で良かった!ほんと、歩きだったら若いうちしか住めないよ、こんな城!手すりすらないじゃないの!」
「皇太后も年寄りになって暮らしてたはずだが……皇太后ってどうやって暮らしてたんだ?」
「謎でしかないよね……」
わたし達、えっちらおっちら突き進み、やっとラゴゥ達の客室へ。
「到着〜!ラゴゥ〜!みんな~!!」
なんと、中ではクロウが上裸でくつろぎ、寝ぼけ眼のチップが着替えているではないか!
「でぇ!痴女が出たっ!!兄貴の玉のお肌を見られたぜ!!」
「チッ。俺の肌は安かねぇぞ。」
わたしは慌ててドアを閉めた。
「あ、あんた達、早く服を着なさいよねーっ!!」
しばらくして、眠たそうなラゴゥがドアを開けた。
「俺、寝てた、ごめん。でも、明日は早起きして戴冠式だろ?何かあった?」
「覗きにきただけってこたあねーだろ、さすがに。」
エスメラルダは皆と合流して嬉しそう。
「あたしゃ、いつも通り、皆といたくて、ラビに頼んだんだ。でも、ラビとカイヤはそれだけじゃないね?目的があるみたいだよ。」
みんな、仮眠して酔いは冷めてるし、話して良さそうね。
「今日、カイヤさんの部屋でマリアンヌさんがフラフラしてて。夕飯の時は、床まで倒れちゃったの。近くで抱き上げた感じ、クマがあって、息もヒューヒューしてて。寝不足どころか、寝てないわ。誤魔化されたけど、根っから真面目で義理堅い人だから、きっと事情があるのよ。ねぇ、わたし達でマリアンヌさんを止めよう!?」
ラゴゥが真剣に考えた。
「……それは、本人の意思かもしれないよ?」
「だとしても!一日ぐらい寝てもらってもいいはずよ!事実、マリアンヌさんは倒れちゃったんだからさ!」
チップとクロウがヒソヒソ話。
「兄貴、夫婦の営みって線、ある?」
「ポンパドゥールが夫人個人で王家に仕えに来ているならば、夫の線はねぇ。ただし、愛人の線はあるな。」
でぇ!!
なんちゅう話をしてんのよ!!
「なぁラビ、おまい、愛人との逢瀬だった場合、どーする気よ?」
「あ、あ、愛人ですって〜!嫌だあ!マリアンヌさんにさわらないでッ!!それはそれとして、止めるのよッ!!」
「おまい、そりゃねぇよ。愛人逢瀬だったら、俺らは手を引く!いいな!?」
「ヤダーっ!!」
途中から起きてきたモコちゃんとニャビ、話を何か勘違いしている。
「にゃあも、ぽんぽんを、まもうおっ!おとこはらめっ!!」
「なんか、よくわかんないけど、お姉ちゃんはマリアンヌさんを取られたくないんだよね?愛人来たら、ホワイトミストで引き離しちゃおー。」
ラゴゥが参った顔してる。
「子供たち?ポンパドゥール侯爵夫人は、家柄だけの政略結婚だ。跡継ぎを生む使命を果たしていらっしゃる。恋愛は、彼女の自由意思を尊重しなくちゃ。」
「ヤダーっ!!」
ニャビ、真剣な眼差しで、言った。
「らごー、ちがうお。ぽんぽん、おとこがこあいんらよ。たすけなくちゃ、らめ!」
ニャビ……。
「わたしがいない時間に、マリアンヌさんと話したのね?」
「うゆ。ぽんぽんはゆめみるおうさまらけ。ほかのおとこは、こあいの。」
「夢見る王様……栗坊かい?ポンパドゥール、いや、マリアンヌさんは、栗坊の……マロン=マロヌスの友達だったから、あたし達の女中を引き受けてくれたんだよね。」
カイヤさんがボヤいた。
「だいぶしぼられたな。マリアンヌさんは、死んだ王様に、義理立てしてる感じか?」
チップは顔を洗い、酔い冷まし。
クロウは身だしなみを整えて立ち上がった。
「どの道、そろそろマリアンヌさんを見張らねーと。見つからなくなんぜ?」
わたし達、用意して、急いで進んだ。
ドタバタしたら、バレちゃうから、慎重に車椅子を押していく。
ラゴゥ達との合流前は一苦労だった段差も、ラゴゥやチップが車椅子を支え上げてくれて、スムーズに進める。
わたし達が真っ先に行ったのは、女中部屋。
ベッドがあったはずだ。
ひとつのベッドの上に、マリアンヌさんのイヤリングが揃えて置いてある。マリアンヌさんの髪を止めていた、バレッタもだ。
「ダメだ、いない。」
「手分けして探そう」
「墓場まで?」
その時。向こうの廊下を、女性のシルエットが通り過ぎた。
違う。
でも、わかるの。
「いま、マリアンヌさん、あそこ通った。」
「……髪の長い人じゃなかった?今の」
「髪を解いたマリアンヌさんだわ。」
わたし達、そーっと廊下に近づいた。
エスメラルダの部屋の、もっと向こうの大きな部屋がある。
エスメラルダはまだ王女。
カイヤ姫が王女部屋を使っているから、エスメラルダは皇太后の部屋に借りぐらしだが……
マリアンヌさんが入って行ったと思われる、大きな寝室は、国王陛下の部屋だ。
わたし達は覗いた。
マリアンヌさんはベッドサイドテーブルをどかして、地下への入り口の蓋を開けた。
そして、階段を降りていく。
「………!」
止められ無かった。
だってだって!
王様の部屋に、隠し通路なんかあると思わなくて!!
「まさか……栗坊のやつ。」
「エスメラルダ?」
チップが匂いを嗅いだ。
「マリアンヌさんのバスケットの中身、お手製サンドイッチだわ。旨そーな匂い。」
え?
食料運んでる?
「地下階段は不思議の国と繋がっていて、ワンダーランドでマリアンヌさんはお茶会に……て、ないない!!わたしわかっちゃった!義理堅いのは、誰かを匿っていたからよ!!」
ラゴゥはエスメラルダを背負った。
エスメラルダは段差が大の苦手、うちのパーティーはダンジョンだけは行かない。
「エスメラルダの階段対策、OKだよ!行ける!」
「よし!王家の地下階段、乗り込むわよ!!」
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