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第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 6

 わたし、走って走って、汗だくで。

 しかも、道をろくにわかってなくて。

 なんでチップに言われたのに覚えなかったのよ〜!!

 お城について、エスメラルダの部屋に駆け込んだ頃には、もうエスメラルダはドレス姿になっていて、全部やってたマリアンヌさんがクタクタに。

「ごめんエスメラルダ、ごめんなさいマリアンヌさーん!!」

 マリアンヌさん、クタクタながらも、背筋を正して、時計を見た。

「お説教も、謝罪も、後にしましょう。ペンテシレイア王女の会議が始まります、ご案内致しますわ。アシュリカ、わたくしと貴方は控えの女中として付き添います。ニャビはカイヤ姫の元へ送りました。難しい話ですから、適材適所です。」

「はいっ!行こうエスメラルダ!」

 エスメラルダは意気消沈したり、気を持ち直したりしてる。

「大丈夫?」

「大丈夫だ。行くよ。今あたしが行かなきゃ、王位継承権の話が、カイヤまで回らない。」


 三時!

 エスメラルダと大臣達の会議が始まる。

 ラゴゥ達近衛はエスメラルダの傍らにいて、わたしとマリアンヌさんはエスメラルダの背後に。

 大臣達は一人ずつ、深々と頭を下げて、名乗った。

「ペンテシレイア王女様。わたしはマロン=マロヌス陛下と、皇太后アンドロメダ陛下の政権亡き後、国政を代行しておりました。政務官グランデールと申します。無論、王女様の戴冠が終わり、執政が始まり次第、わたしは身を引きます。束の間ですがよろしくお願いいたします。」

「ありがとう、グランデールや。」

「ペンテシレイア王女様。わたしはマロン=マロヌス陛下の代から外務大臣を務めるローゲンブルと申します。外交や貿易のご命令は……わたしで続行をご希望でしたら、わたしにお申し付けください。」

「ありがとう、ローゲンブルや。時に……現状魔王軍からの被害で国産の食材は高騰してるが、安くて美味しい、アジアの商品は、ローゲンブルが仕入れたのかい?」

「はい。ライスの稲作はエルンファルファロ歴301年には大陸全土に広まっておりましたが、皇太后アンドロメダ陛下が、平民に優しい安くて美味しい貿易商品をご命じになり、特にアジア貿易に力を入れております。」

「母さんが……ありがとうローゲンブル、うちのパーティはだいぶ助けられたからさ。」

「身に余る光栄です。」

「ペンテシレイア王女様、長らくお久しぶりでございます。わたしは王女様の父王の代から軍事大臣を務める、将軍ガラングルでございます。隠居真近の老兵ですが、再び貴方様にお会い出来るとは……。」

「ガラングル……!!ガラングルだったのか!アンタには世話になりっぱなしだ……」

「身に余るお言葉にございます。わたしは、魔王軍打倒への軍事派遣や、勇者パーティの派遣、冒険者組合の経営をこなしております。そこなラゴゥルレッド達近衛兵も、騎士達も、わたしが統率しております。あくまで、戦時下の要員。わたしの代で、終わってくれたらよいのですが。」

「……ガラングル。バーナードは、先に天に召されたよ。」

「わたしも、じきに我が友に会いに行きますよ。天で、再会の祝い酒をしましょうぞ。」

 なんだか、しんみり来ちゃった。

 ガラングルさんは、ここでは話せないけど、きっとバーナードさんの協力者だよね。

 エスメラルダが帰るまで、断固として秘密を守り続けた、真の臣下だ。

 わたし、涙腺が潤んできた。

 ガラングルおじいちゃん、泣かせるんだもの。

 若い青年が歩み出て、頭を下げた。

「お初にお目にかかります。ペンテシレイア王女様、わたしは書記官のユーグリットと申します。主に、正式な会議の場で、発言を記録致します。どうぞ、いないものと思って、会議に集中なさってください。」

「大事な役職じゃないか。頼んだよ、ユーグリット。」

「有り難き幸せです。頑張ります!」

 まず、政務官グランデールが話し出した。

「ペンテシレイア王女様には、最重要案件がございます。戴冠式のことです。まずは、実権を握らなければ、国を動かせません。」

「その事なんだが、グランデール。あたしの娘では、戴冠出来ないのかい?」

「言わせてもらいますと、カイヤ姫の戴冠は可能です。ですが、若く美しいカイヤ姫が戴冠なさると聞けば、各国が黙ってはおりません。ペンテシレイア王女様の頃と同じ、平和協定の為の政略結婚に晒される恐れがございます。わたしとしましては、まずペンテシレイア王女様が戴冠し、名目上であれ、王位継承者を長男だと誤魔化し、カイヤ姫が王として立つその日まで、カイヤ姫の自由をお守りになるのが、最善かと思います。」

 エスメラルダは苦い顔だ。

「政略結婚を断ったら?」

「戦争です。それが怖くて魔王軍サイドと婚姻した王家があるほどですから。」

「なるほど。ならば、あたしほど最適な女王はいない。老齢だし、ダミーにクンツァイトの名を使えば、名目上はカイヤを匿ってやれる。」

「おっしゃる通りです。仮にペンテシレイア王女様が求愛されれば、それが真実の愛であれ、各国は金目当てだと非難しますから、それが良いブレーキの役割を果たすでしょう。」

「で。あたしからも本題だ。あたしは、短期間滞在するが、例え女王になっても冒険者を続けようと思う。魔王を倒すまで、だ。」

「……そう仰ると思っていました。貴方様が戴冠なされば、正規軍を従えて向かうことも可能ですが。あくまで冒険者として、魔王に挑まれますか?」

「冒険者として、自分のパーティで戦いたいんだ。だが、その場合、政治はどうすればいい?それから、クンツァイトとカイヤの立場がどうなるのか、聞きたいね。」

 政務官グランデールさんは、私利私欲無く答えた。

「貴方様が戴冠なされば、政権は貴方様が委任出来ることです。マロン=マロヌス陛下も、政権は皇太后様に委任なさいました。クンツァイト王子にはご迷惑をおかけせず、影武者を城に住ませればよいかと存じます。そしてカイヤ姫は政治を学んでいませんので、わたしが引退前に、姫が政治に慣れるまで補佐官になるなどすれば、政権はカイヤ姫でも充分可能です。」

「なら良かった。もっとややこしくなるかと思ってたが、助かるよ。グランデールはカイヤが政治に慣れるまで、補佐して欲しい。」

「かしこまりました。改めて戴冠式の後に、正式にご命じくださいますよう。」

「戴冠式は、いつだね?」

「明日にでも、明け方五時に馬車をとばして聖都へたち、まずはエルン=ファルファロ大聖堂で戴冠。貴族達が見届けます。王冠は王家の人間から頭に乗せるのが決まりですから、王冠はカイヤ姫から授かりましょう。戴冠式には、ご子息の王子様お二人にも知らせを飛ばしましたので、最前列で列席になられるかと存じます。」

「……戴冠の後も、さらに聖剣式だろう?」

「はい。戴冠式が終わりましたら、もう貴族達は介入しません。王家と大臣と、ご家族とご身内のパーティの仲間の方々のみで、聖剣式を行います。エルン=マロヌス神殿遺跡で真王の剣を引き抜く儀式ですが、これは形式上です。真王の剣は、抜けたことはありません。この神殿では王名を改めます。」

「えーと。エスメラルダでいいかい?」

「そのエスメラルダという名前は、どうか温存されますよう。この先、女王の身分を隠し、冒険者として、猛女エスメラルダの名が必要になるでしょう。ここでは無難に、神の名マロヌスを継ぐぐらいがよろしいのでは?」

「ふむ。確かに……じゃあ、ペンテシレイア=マロヌスあたりになるのかね。」

「この聖剣式が終われば、聖都から王都に帰還して、初めて女王陛下の地位を得ます。ふたつの神の加護あって、統治が始まります。そこからは、正式に女王陛下として、カイヤ姫に執政を命じていただき、バルコニーで打倒魔王の意思表明をしていただいたら、後はわたし達が、カイヤ姫と共に引き受けましょう。女王陛下は魔王城を目指して旅立った、と、一点張りで持たせます。しかし、本当にペンテシレイア王女様のパーティが全滅してしまった、では、済まされませんよ。」

「肝に命じておくよ。しかし、疲れた……会議ってまだ続くのかい?若い頃以来の国の話で、ちょっと頭が持たないが……」

「わたくしからは、以上です。」

 政務官グランデールさんは話を終えた。

 外務大臣ローゲンブルさんは引き下がってくれた。

「わたしは外交のお話なので、今すぐではなくとも大丈夫です。」

 軍事大臣ガラングルさんは、歩み出た。

「わたしからは、二件のお話が。戴冠式後、旅立つ前に、勇者候補ラテ=ジェラートの第23陣勇者パーティ容認をお願いいたします。実技試験、筆記試験は既にクリアしております。中々の逸材ですよ。」

「あぁ!そりゃそうだ、待たせちまってるのか!!早く戴冠しなくちゃあね!」

 ラテさん達!客室に滞在しているのよね?

 王位継承騒動に巻き込んじゃって、申し訳ないなぁ。

「それから、ペンテシレイア王女様のパーティリーダーであるラゴゥルレッド君には、此度からは近衛隊長として、女王護衛を兼任してもらいます。それが、老いぼれのわたしからの条件となりますが、如何か?」

 ラゴゥがガラングルさんに告げた。

「ガラングル様。申し上げますが、ペンテシレイア王女様は充分な実力のある戦士(ファイター)であられます。」

「いいよ。ラゴゥとは、ずっと一緒なんだし。ラゴゥがお目付け役なら、ガラングルの条件はクリアなんだろう?」

「仰せの通りです。わたしが剣術指南役をしていた頃から、王女様は向こう見ずな剣であられましたから。鎧と命が幾つあっても足りません。ラゴゥルレッド君からは、回避と防御もお習いくださいませ。」

 うわぁ!古老の忠臣!そんなに昔のこと、今も案じてくれるだなんて。

 ガラングルおじいちゃん、わたしの涙腺どこまで揺るがす気なのかしら。

「それでは、本日はペンテシレイア王女様がお疲れであられるので、解散いたしますが、明日は朝五時には正装のドレスを着て馬車にお乗りください。聖都への日帰り旅行のような工程になりますので。それから、本日夕方五時までに針子達の作った正装と普段着が届きます。明日は正装でおいでください。」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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