第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 4
翌朝、エスメラルダとカイヤさんの朝ごはんが終わると、わたしとニャビはマリアンヌさんと軽くパンを食べて、マリアンヌさんに言われた。
「ペンテシレイア王女と大臣達の会議は午後三時からです。アシュリカは二時には戻って、ペンテシレイア王女の着付けですよ。お昼は王家も軽食、わたくしが引き受けます。アシュリカは二時まで自由時間をお取りなさい。仲間にも、会いたいのでしょう?」
「いいの!?マリアンヌさん!?」
「女中は四六時中ではありませんし、昼食はわたくしとニャビで務められる範囲ですから。わたくしにも、ラゴゥルレッド様に連絡を取る余裕がございます。リーダーなのでしょう?ラゴゥルレッド様に連絡すれば、晩餐に迎賓として皆さんを迎えられますよね?」
「はい!ラゴゥがリーダーなので!!」
わたしが急いでパンを口に詰めて立ち上がると、慌ててマリアンヌさんが止めた。
「待ちなさい、アシュリカ!」
「はひ?」
わたしの手を取り、金貨を渡すマリアンヌさん。
「お昼ご飯代です。慌ててお昼抜きにするのではありませんよ、午後のお勤めを考えて、きちんとお食べなさい。」
わぁーい、わぁーい。
王都散策だー!
しかも、お昼ご飯代、ちゃんとしたランチが食べられるじゃないの!
発見!
王都アポロメルタン名物、銀の小鹿亭!!
チーズとろーりトマトハンバーグ?
テリマヨチキンステーキ?
迷っちゃう。
迷っちゃうけど……
「これだァー!!チーズたっぷりデミグラスオムライスー!!!」
周りがびっくりした。
しまった。
ここは庶民の街じゃなくて、貴族の街、王都なのよね。
「でぇ?うっそ、おまい、ラビか?」
わたしが赤っ恥をかいて固まっていると、わたしのデカい声で気づいたのか、チップが歩いてきた。
いつもと違う身なりで、しっかりしたシャツとベスト姿だ。
「チップ?なんでここに?」
「おまいなあ。ドレスアップしたら記憶も消えたんかい。温泉のマカトフ村で、レニさん言ったろ?王都であらゆる階級や種族のレシピ本が出たっちゅう話。」
わたし、ようやく思い出した。
「あー!!なるほど、そっちが書店だから……肝心のわたし達のお目当てのレシピ本は?」
チップが指さした。
でっかくて分厚い本が、積み重なっている。
「デカ!ええ!?高過ぎ!!金貨袋合わせて、買えるかどうかじゃない?だいたい、エルンディアナへの旅費もあるのに……」
「おまいらが散財したかんなあー。だいたいこいつ、あらゆる方面の学者達の研究の賜物のレシピ本な訳。正当な額でい。」
マジで、こんなに高い本だとは……。
うぅ、舐めてた。
「エスメラルダかカイヤさんが女王になったら、買ってもらう?」
「ダーメ。王家の金は国民の税金なの!エスメラルダが国民からアンチされちまうわ。」
「じゃあ、どうしたら?」
「節約と仕事だろ?皆で王都にいるうちに働いてお給金合わせりゃ、元の金貨袋に合わせて、なんとかならあ。」
「節約……この、ランチ代も結構な金額よね……王都だからランチが高いけど、エルンディアナなら3分の1、だし」
チップ、そのお金見て言った。
「ほい、その金しまえ。貯金!」
「え〜?わたしのお昼ご飯は、どうなるのよぅ!?」
チップがわたしの手を取った。
「おまい、俺ん家で食え。うちは大所帯だから食いっぱぐれはねーぞ。」
わたし、慌ててチップの手を離し、紅茶店を指さした。
「だったら離して、仲間の実家行くのに、手土産無しに行けないわよ!ちょっと紅茶のお茶っ葉買ってくるから!!」
「だァーらー!!金使ってちゃ、元も子もねーだろがい!うちは、いいの!土産も粗品も無くても、門下生共は和気あいあいとお袋の飯食ってんの!!」
躊躇うわたしを、チップは引っ張って歩いていく。
「申し訳無いよぉ〜。それに、ご両親いらっしゃるんでしょ〜?」
「でぇーい!やかましい!俺ん家に、余計な気遣いはいらんの!!」
どんどん歩いてくと、ものすごい佇まいの貴族屋敷が見えてきた。
チップが指さした。
「あれ、あの蒼い屋根の貴族屋敷、ラゴゥんちな。ほれ、窓からアイツ、手ー振ってやんの。」
二階の窓から、ラゴゥがモコちゃんと手を振ってた。
「えぇ!?どんだけおぼっちゃまなのよ!?」
向かいには、ラゴゥの屋敷程は行かないが、緑のレンガ作りが美しい、大屋敷が。
通り沿いの庭の花々を手入れしている、屋敷の人たちが、チップに手を振った。
「三代目ェ〜!!」
「おかえりなせぇ、三代目!!」
チップが指さした。
「おー!たれーまー!うち、ここな。道わかったか?困ったら、ラゴゥんちの蒼い屋根目指してけば見つかるかんな。俺とアイツお隣さんの幼なじみって訳。」
わたし、目を白黒させた。
「嘘でしょチップ!チップだけはわたしと同類だと思ってたのに……こんな大屋敷の、三代目〜ッ!?」
「おまいな。まぁ〜、いつもおまいのフォローに回ってんの、俺だし、しゃあねぇか……。オラ、入れ入れ!」
屋敷の中は本当に大所帯!
「皆さん家族?お弟子さん?」
「親父の弟子ってか、門下生の連中と、お。あれは俺の姉ちゃん。でー、あ、他は出かけとるわ。」
お姉ちゃん!
通りすがっただけで、ご挨拶出来なかった!
「で、クロウの兄貴は親父に歓迎という名の拉致に遭われちまって。昨日から会えてねーのよ。兄貴でーじょぶかなぁ……。」
さすがチップのお父さんというか……。
盗賊は、みんなクロウみたいな大物が大好きなのね。
チップは開けたアーチ型の入り口から、広く大きな食堂へ。
ズラリと並ぶテーブル、椅子、そしてまだまだお昼ご飯中の門下生、多し。
厨房は、なんと奥さん一人だけ。
「アズーロ!ボロネーゼグラタン上がり!!ファルコ!デミグラスハンバーグ定食上がり!!」
大急ぎで仕上げては、カウンターに皿を出し、門下生がカウンターから自分の分を持って行く仕組みだ。
「お袋ー!昨日話したろ、パーティの吟遊詩人のラビ来たー!昼飯作ってくんねー?」
お母さん、慌てて調理の火を止めてから、厨房から出てきて、ぺこりと頭を下げてご挨拶。
わたしも慌てて頭を下げた。
「うちの子が世話になって!しかも、ラビちゃんだ!!会えて嬉しいよぉ!うちの子ったら、冒険談もそこそこ、ラビちゃんの話ばっかりすんだからさ!どんな子なのか会いたいと思ってたが、こりゃどえらい美少女さんが来たもんだ!チップの気持ちもわかるってもんだね!」
ほへぇ。チップの血統はわたしが美人に見えるんだろーか?有難いこっちゃなあ……。慢心。
「うへぇ。わ、わたしが常にお世話になっているものですから!ピンチの時はラゴゥがニャビを、チップがわたしを、て決まりがあって。」
お母さん、チップを冷やかした。
「まー、うちの子は本望だろう?こんなに可愛いラビちゃんの担当でさ。ラビちゃん、婚活を考え始めたら、ぜひうちの子も頭の端っこに入れといてやってよ。あたしは大歓迎だよ!」
チップが怒った。
「バーローい!!こんの恋愛脳!!変な空気に持ってくなや!!俺たちゃ、単に飯を食いに来たのー!!」
お母さんは笑い出した。
「アッハッハッハッハッ。奥手な息子なんだ。さて、ラビちゃん、何が食べたいね?本当は食べたいランチもあったんだろう?」
明るく陽気なお母さん、一瞬で打ち解けちゃうよー。
「いえ!ぜひ、お母さんのお手製の料理の余り物でもあれば!」
「それだけじゃ不憫だし。どーせ、チップが貯金させて、食いっぱぐれたんだろう?言いなよ、出来る限りは再現するからさ。」
わたしは崇拝の眼差しになる。
チップのお母さん、後光がさしてるよ!
「実は、王都のランチ屋さんの、チーズたっぷりデミグラスオムライスを、狙ってて。」
お母さん、厨房周りとクーラーボックスを調べて、言った。
「ケチャップとライスだけ足りないんだ。この後買い出しの予定でね。でも、チーズたっぷりデミグラス・オム・チーズペンネなら、すぐ出せる。」
「ほぇ〜!パワーアップしたァ!!お母さん、正直そっちの方が食べたいですっ!!」
お母さん、ニコニコ、調理を始めた。
「食欲旺盛な子は気持ちがいいね。あたしは、男所帯の女将だから、発想もてんこ盛りだ。娘なんか、小さなタコライスとサラダくらいしか受けつけないからさ。おい、チップ!お前なんにする!?」
チップはわたしの隣に座った。
「テリマヨチキンステーキと、いつもの辛いペペロンチーノ。」
「あ!あの店のメニューだ、チップも気になったの?」
「そら、気になるわな。おまい、知らんかもしれんが、銀の小鹿亭は人気店だぜ?」
お母さん、笑いながら返した。
「テリマヨならうちでもやってんのに、店だと気になるんだよ、うちの子は。ペペロンチーノはいつもの、トウガラシ多めで温泉卵乗せかい?」
「そいつー。」
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