第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 1
フランク=バジリコ王国、首都!
花の都!
王都アポロメルタン、到着だァ!!
商業都市エルンディアナは行ったことあるんだけど、王都は初めてなのよね。
だって滅多に冒険者が立ち寄る場所じゃなくて、この都は、各、町や村の領主様である、王侯貴族の住まいや、魔王軍に挑む軍隊に指令を送るところだからさ。
もう、至る所に、立ち並ぶ衛兵!
歩いてる人は皆貴族!
ドレスにアンブレラ、ジュストコール!
すっかり萎縮したわたし。
「わ、わ、わたし達、浮いてない?貧乏人が歩くような街じゃないよね、ここ?」
チップが笑った。
「なーに、おまい?気遅れしてんの?シシシッ!!」
チップは王都の生まれだけど、こうして王都を改めて見たら、一体何処に住んでたってゆーのよ!?盗賊の居場所なんて、無くない!?
わたし達にラゴゥが言った。
「大丈夫だよ。俺がいるし、エスメラルダやカイヤさん、ラテさんは、正当な理由で来ているんだからね。」
「そちらの冒険者の方々ッ!!」
声が厳しくてびっくり!心臓張り裂けちゃうよ!!
衛兵から聞きつけたのか、軍隊のお偉いさんが直々に現れた。部下が数名ついてるし。
「王都アポロメルタンに何の御用で参られた!?この都は他の街と違い、決して許可無しに横行出来る場所では無いと、理解しておられるか!?」
どぇー!!
まさか、通行証とか必要なの!?
ラゴゥが敬礼して、わたし達の代表をした。
「軍事隊長サールマハル殿!お久しぶりです!イグニナイツ家のラゴゥルレッド・フォン・イグニナイツ、騎士の務めを果たし王都へ帰還致しました!!」
サールマハル殿、ムッとラゴゥに気づいた。
「まさか……ラゴゥルレッド君か!随分な長旅だったな!君のパーティがイグニナイツ家の屋敷に滞在するのは、無論構わない!そちらは?別パーティのようだが!」
ラテさんは深々と頭を下げた。
「事前に手紙が行っていると思います。アニ村より選出された、勇者候補のラテ=ジェラート・マッケンチーズです。正式な第23陣勇者パーティに認めていただくべく、参上仕りました。」
サールマハル殿、ラテさんの紹介状に目を通し、頷いた。
「うむ!歓迎しよう!!残念だが、王が不在の為、代理人が城で話を聞くことになるが……」
ラゴゥがエスメラルダの手を取って、サールマハル殿に歩み寄った。
「ん?なんだね、ラゴゥルレッド君、そちらの鎧の老婦人は。む……その顔、話題の猛女殿ではないのか?」
「あれ?その目元……どこかで……」
「……わたしも、彼女を知っている気がするな……」
サールマハル殿達は、きっと若い時の肖像画を見たのね。
「彼女を紹介させて下さい。」
「無論だ。猛女殿には各村が救われたし、国から勲章も恩賞も授けなければ」
ラゴゥは、振り向いた。
「クロウ!赤竜の眼を!」
サールマハル殿、ギョッとした。
「赤竜の眼だと!?」
クロウが赤竜の眼をかざすと、光はエスメラルダとカイヤさんを照らし出した。
エスメラルダは、気まずそうに、俯いた。
「おぉ……赤竜の眼が、王位継承者を照らし出した……!!」
「貴方様は……ペンテシレイア王女……!?」
エスメラルダが詫びた。
「今更だけど……責務を投げ出して、すまなかったよ……。」
サールマハル殿、絶句。
ラゴゥが声を張り上げて、告げた。
「ペンテシレイア王女、そしてご息女であられる王位継承者カイヤ=ナイト姫、王都アポロメルタンにご帰還なさいました!!」
サールマハル殿、口をパクパクさせる。
エスメラルダが赤竜の眼に手をかざすと、王都の守備に残していた竜が、空を飛び回った。
「竜が……!!これぞ、王家のみの御業!!」
人々は、貴族も衛兵も、エスメラルダに膝まづいた。
サールマハル殿、ようやく声を張り上げた。
「ペンテシレイア王女ご帰還の祝祭を!王都で二週間、国全土で一週間、感謝祭とする!!マッジオ!勇者候補パーティを城の客室へ通せ!わたしは至急、ペンテシレイア王女を王家の間へ!!ラゴゥルレッド君、昇格!!近衛隊長を任ず!!」
貴族達が口々に囁いた。
「ついに、王権復古の日が……!!」
「女王の戴冠だわ!」
「戴冠式はいつ?」
サールマハル殿、改めてエスメラルダに膝まづき、剣を捧げた。
「よくぞお帰りくださいました!我が生涯の忠誠は貴方様の身元に!!」
エスメラルダは引け目を感じて、後ずさる。
「ごめんねぇ……あたしゃ、逃げたっていうのに。」
サールマハル殿は顔を上げ、エスメラルダにハッキリ言った。
「お謝りになられますな!お逃げになられるしかなくなったのは、父王様が無茶な政略結婚を命じたからでございましょう!貴方様はちっとも悪くはございません!!ああ、とにかく相応しい服にお召し代えを!エルンスト、女中を呼んで来なさい!」
エルンストさん、動じた。
「あの〜、サールマハル隊長。マロン=マロヌス王は独身で亡くなり……皇太后様も亡くなって、城には高貴な女性はおりませんから、女中には、暇を出しましたよね?」
サールマハル殿、真っ青だ。
「これはいかん!誰がペンテシレイア王女の着替えや身の回りの世話を?男子禁制ではないのか!?だいたい、王位継承者のカイヤ=ナイト様もおられるのに!?」
顔を伏せていた貴族夫人が一人、スラリと立ち上がった。
大人な美人だ。綺麗な栗色の髪に、透き通る様な緑の目。だけど、すごい規律ただしそう。
「サールマハル軍事隊長殿。わたくし、ポンパドゥール侯爵夫人と申します。先代国王陛下マロン=マロヌス様と懇意にさせていただき、ゲームの仲間をしておりました。王宮のしきたりや、王家の決まりは熟知しておりますわ。わたくしがペンテシレイア王女の女中をしますから、そちらのお嬢さんにも手伝っていただけたら、カイヤ=ナイト様の側仕えも仕事は回りますが、如何でしょう?」
わたし?
わたし、素早く手を挙げて同意した。
「はい、はいッ!!わたしやりますッ!!女中頑張ります!!ポンパドゥール侯爵夫人、よろしくね!!」
ポンパドゥール侯爵夫人、魅惑の微笑み。
「やる気が素晴らしいですね。お名前は?」
「ラビがあだ名です!本名はアシュリカです!」
「冒険者の仲間であることから、気が緩むかもしれませんが、あくまでもわたくし達は側仕えです、アシュリカ。言葉遣いは気をつけなさい。貴族爵位の上下がわからないならば、わたくしが夜通し教えますから、ペンテシレイア王女に謁見を求める貴族を、易々と通してはなりませんよ。」
さ、最初からダメ出しされた!
「でも、わたしあくまで仲間であって」
「気を緩めずに、と言っているのです。心構えの問題ですよ。」
なによー!真面目過ぎて意地悪なんじゃないの!?
サールマハル殿、エスメラルダをエスコートする姿勢になって、振り向いた。
「ポンパドゥール侯爵夫人、頼みました!ラゴゥルレッド君、君はカイヤ=ナイト様をエスコートなさい!城へ!衛兵!道に整列ッ!!」
うっわぁ〜!!
圧巻!!!
城に向かうわたし達を、衛兵が並んで道になっているの!!
チップはともかく、クロウはプリーストのフリって顔で通してるし、モコちゃんは犬のフリって感じで、くぅーん、と素知らぬペットのフリだ。
ニャビだけは、そうもいかないのよね。
「らびぃ、にゃあたち、ろこへいくのぉ?」
ポンパドゥール侯爵夫人が、わたしに尋ねた。
「アシュリカ。女中職の間、こちらの幼い子はどうするのです?貴方が保護者では?」
「え、と。お絵描きしててもらう、とか……?」
「王家の間でクレヨンなど使われては困ります。仕方ありませんね……臨時メイドに雇用しましょう。仕事は、皆の癒しと、簡単なお皿運びで。ただし、イタズラはなりませんよ。お名前はなんて言うの?」
「にゃあは、ニャビらよ!おしごとなら、まっかせておっ!!」
「ふふ。頼りにしますよ、ニャビ。」
あら。
ポンパドゥール侯爵夫人たら、小さい子の扱いが上手いじゃないの。
宮廷だァ!!
見た目も憧れ通りのキャッスル感!!
中身は贅沢な代物三昧!!
わたしはチップをつついた。
「ねぇ、あのソファー、時価いくらぐらいするの?すっごいお宝じゃないの?」
「おまいが生まれ変わって姫にでもならんと、買ったり座ったりは出来んくらい。」
「のぉー!!」
宮廷を進む度、王家の肖像画に鉢合わせた。
若い時のエスメラルダ、わたしの空想通り、国一番の美人さんね。
「最後の王様はマロン=マロヌス陛下でしょ?本来は、飾られる絵画は、マロン=マロヌス陛下の肖像画にすり変わるものじゃないの?」
チップが鼻を擦りながら答えた。
「マロン=マロヌス陛下が、家族の肖像画を優先したんだとー。」
「さぁ、おしゃべりはそこまでに。アシュリカ、貴方はこちらですよ。」
「いてらー。」
わたしはポンパドゥール侯爵夫人に引っ張られ、召使いの着替えの間へ。
召使いとは言え、なんて綺麗なドレスのクローゼットルームなの!
ニャビは椅子に座って観察中だ。
「どえす、きえーらねっ!ぽんぽんふりん!」
「ふりんはおやめになって。夫人と言いづらいならば、ぽんぽんでよろしいですからね。アシュリカ、ニャビの本名は?」
「ニャビには、呼び名だけです。助けた時、一族が灰になってて、本名は不明なので、本当にニャビとしか……」
ポンパドゥール侯爵夫人は、ニャビを屈んで観察し、ため息。
「魔王軍の犠牲者なのですね。光の神エルン=ファルファロ様はエルフだと言う学者が多くいます。この子もどこか神々しい。辛い話をさせましたね。ニャビはニャビでよろしいでしょう。」
神々しい……??
そうかなぁ。わたしがニャビの美しさを見慣れただけ?
「さて、着替えです。皮の鎧では女中は務まりませんよ、脱ぎなさいアシュリカ。」
「え!?ひ、一人で着れますう!!」
「ここのドレスは皆、個人の中古で借り物です。ブティックのようにサイズを言えば出てくる訳ではありませんよ。」
わーわー。
きゃーきゃー。
ドタバタ揉めた挙句、わたしは深いブルーの慎ましいドレスに落ち着いた。
うぅ。裸見られたよぉ。
「アシュリカ、来なさい。髪を編みます。食卓で女中の髪が皿に落ちるなど、末代までの恥ですよ。」
髪を編まれて、アップにしてもらったわたし。
鏡を見たら、そこそこお上品じゃないの。
「さぁ、次はニャビですよ。お脱ぎなさい。」
わたしの時とは、雲泥の差だ。
ニャビはスポポーン、と、全部脱いだ。
少しは、恥じらいを持ちなさいよ!
ポンパドゥール侯爵夫人は採寸を測り、悩んだ。
「使用人はだいたい、側仕えにも年齢適齢期がありますからね……ニャビは幼すぎます。裁縫係を呼んできます。」
裁縫係さんが来るまで自由かな〜、と思ってたら、直ぐに戻ってきた。
「ローズ・ベルタンと申します。王家のデザイナーであり、ドレスや裁縫はわたくしにお申し付けください。お針子達の代表のようなものですから。サールマハル殿から、ペンテシレイア王女の採寸で行くように頼まれておりまして。」
「ベルタン嬢。わたくし達が仕上がらなければ、ペンテシレイア王女の採寸のお手伝いが出来ませんから。そこの小さい子の為に、仮縫いで構わないので、服を小さくしてくださいますか?」
「まぁ、本当に小さい子。こちらの幼い給使の小さなエプロンドレスを、小さく縫いましょう。仮止めにして、この子が寝てる時間に仕上げますから。」
ローズさん、速い!
ザクザク縫って、ニャビのドレス完成!
仮止めなんだっけ?
でも、このエプロンドレスを着たニャビ、お人形さんみたい!!
改めて、美しい顔立ちしてるわ〜!!
「かわいい〜!!」
「ふふふ。小さい子はいるだけで癒しですわ。」
ニャビはおすましして、かわいいポーズをした。
「かわいい?れも、にゃあはおしごとらよね?」
「偉いですね、ニャビ。きちんとわかっていますね。そう、貴方は臨時メイド、安全な場所で大丈夫そうなお皿を運ぶのが、貴方のお仕事ですよ。」
「うゆ!がんばゆねっ!!」
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