第6話 減量レシピ!ベオアルス卿の為のヘルシー献立!! 6
わたし達はせっせと大人数分こさえて、街の人達とテーブル出して、皿を出してたら、あっという間に七時半!
モコちゃんが走り出す!
「あの人、時間制限にうるさいの!病気で八時以降は食べないって!呼んで来るから、支度お願いねー!!」
「行ってらっしゃい、モコちゃん!!」
カイヤさんがラゴゥに耳打ちして、ラゴゥが街の人達へ。
「皆さん。ご不満はあるかもしれませんが、今夜はアルコールは抜きに。アルコールはカロリーが高いです。黒烏龍茶は、確かにお酒とも、合うのですが……今宵は我慢をお願いします!」
「そうなのか」
「一晩くらい、我慢してやらぁ!」
「皆の街を、取り戻す為だ!!」
そして、街の皆さん、封印されていないご馳走を見て、目を輝かせた。
「ロックがかかってないぞ」
「これが、ヘルシー……!」
中には、泣いている人もいる。
断食もオートミールも、そりゃあ辛かったよね……。
「ラビちゃん、ベオアルスが来たわよ。主賓席は?」
「うーん。モコちゃんとベオアルスの戦いだから、二人を主賓席にしよう!」
わたし達が主賓席をふたつ、用意すると、ベオアルスが座って礼を言った。
「ありがとう、お嬢さん。わたしの余興の為に、君たちがこの素晴らしいメニューを?」
「仲間の力ですよ。きっと、ベオアルスさんの病気の力にも、なれるわ。」
ベオアルス、意外そうにわたしを見て、笑った。
「これは一興。わたしが怖くはないのかな、こちらのお嬢さんは?」
わたし、怖がるべきなのか考えたが、正直に言った。
「貴方は気まぐれで友達を殺すって聞いたから、警戒はしてるけど……基本はベオアルスさんは人間サイドなんだし。わたしの友達も、魔族のレニ=アリアさんだし、仲間のモコちゃんも、昔はアスタロトっていう魔族だし。魔族だから、病気が関係ないとは、思えないんです。貴方だって食べれなかったんだから、辛いでしょ?」
ベオアルスさん、納得した。
「なんと。懐の深い子だ。それに、レニ=アリアはわたしの同僚だよ。彼女が世話になったのか。君は誠意が感じられる。アスタロトが人間側についたのは、君の影響か?」
「うーん。モコちゃん、アスタロトの今の名前はモコちゃんなんですけど。この子は胴体切断状態で、死ぬ間際のところを、わたしのワガママで助けたっていうか……うちのプリーストの技で、わたしの寿命をモコちゃんに分けたんです。それでモコちゃん、自分を助けた人間に興味が湧いて、一緒に行動してたんだけど。本当に感情移入して、仲間になった正式な日は、今日なのかも。」
ベオアルスさん、わたしにニッコリして、拍手した。
「助ける、までは、他の誰かでも出来たが、アスタロトの内面に愛を知らしめたのは、君たちパーティの素晴らしい功績だ。いや、もはやアスタロトでは無いな。新生アスタロト、モコくんだ。さぁ、ここからは真剣勝負!たくさん喋ってしまったが8時10分前、8時以降は体重増加に繋がり病気に悪いからね!」
ラゴゥがフライパンを鳴らした。
「それでは皆さん!いただきます!!」
「「いただきます!!」」
ゲェ!
カイヤさんの減量ボロネーゼうどん、茄子がトマトソースしみしみ!!だから最初のうちに作って、時間置いたのね!?
「うんまぁ!!わたし、鶏のボロネーゼって初めてだけど、野菜の甘みもあってすごい美味しー!!ピーマン入れるのは意外だけど馴染むのね!!」
カイヤさん、やはりジェダイトさんを思い出してるのか、言った。
「ジェダイトが、茄子嫌いだったから。ジェダイトの大好きなトマト味にして、ジェダイトの好きなピーマンも同じサイズに切って、こう作ると、あいつは茄子を食べるからさ。」
モコちゃん、はぐはぐ食べながら、尋ねた。
「僕もトマト大好きー!でも、えのき茸が意外かなぁ。ツルツルで美味しいし、めちゃめちゃ合うけど、なんでボロネーゼにえのき茸なの?」
カイヤさん即答。
「それはな、モコよ。かさ増しのえのき茸だから。ジェダイト、太っちょだし、大食い辞められないからさ。」
クロウが反応した。
「えのき茸はカロリーゼロだ。かさ増しなら、キノコってことか。」
「まぁね。でも、主役は野菜だ。野菜を食べなければ減量生活にならないから。食物繊維とトイレの循環こそが体質改善に、むごご」
エスメラルダが慌ててカイヤさんの口を封じた。
「すまないね。あたしもそうだったけど、男の子の親ってのは、ざっくり言うから……カイヤ、食卓でトイレの話はするんじゃあないよ。」
わたし達は気にしないけど、まぁ、次期女王様だもんね。
「わたしは構わないよ。このお嬢さんの仰る通りだ。我々魔族は肉食文化で、どう野菜を摂取すべきか考えあぐねていたが、これは良い。美味しくとれる食物繊維は大切だ。」
ベオアルスさんも高評価!
ラテさんがレタスをちぎって何かオリジナルの食べ方をはじめた。
「ラテさん、何をレタスで食べてるのー?」
「蒸し鶏よ。ネギ塩レモンソースと肉汁を落としたくなくて、レタスに巻いたの。野菜の風味で臭みも無くて、美味しいわよ。チンゲン菜は甘くて美味しくて、売り切れ間近だしね。」
「わたしも食べる!」
「にゃあもー!」
ラゴゥが女将さんみたいに切り分けた。
「は〜い、た〜んと食べてくださいね〜。」
さっそくレタスに巻いて、頬張った。
「うまー!!レモン味たまらない!!白米欲しー!!」
「うままー!!くいすましゅ、こえでいいんらないのぉ?」
ニャビの言う通り、クリスマスにこういうチキンもありっちゃありだ。
チップとクロウは椎茸のシウマイと黒烏龍茶。
「たまには中国茶と点心も悪かねーや。老酒が欲しいとこだけどよ。」
「休肝日あっての酒だからな。点心に中国茶か……そういや、ラウムの時代に、散々献上されたな。」
「たはー。兄貴、チャイナギャングじゃん!」
わたしも一口。
「やばっ!椎茸ハンター、エスメラルダ!出番よ!!」
わたしに勧められてエスメラルダが椎茸のシウマイをパクリ。
「ん〜!!シウマイ自体の味付けもさることながら、肉汁をすべて吸収した肉厚な椎茸の旨みが、留まるところを知らないねぇ!」
エスメラルダ幸せそう。減量じゃなくても、これは度々作るべきよね。
街の人達、ガツガツ食べながら、気づいた。
「グギィィ……」
ガリガリのゴブリン達が、羨ましげに、陰ながら見てる。
「ゴブリン共だ」
「でも……こいつらも、呪縛で飯が食えなかった。俺たちと、同じだ。」
街の人達、なんと席を譲りはじめた。
「今夜でどの道お別れだ!俺は食い終わったから、来い、ゴブリン共!!」
「ギィィ?」
「今まで一蓮托生だったんだ。今日だけは、飯を分け合おうぜ。」
ゴブリン達はワラワラと集まって、ヘルシー料理を食べ始めた。
なんか、こういうのも、いいよね。
魔族も人間も、共に食卓を囲むのは素晴らしい。
食事会が終わると、ベオアルスは告げた。
「吟味させていただいたよ。久方ぶりの充実感、勝負は圧倒的に、君たちの勝ちだ。モコ君よ、君に正式にこの街を譲ろう。」
街の人達、満腹ながら、モコちゃんに注目した。
「解放じゃなかったのか?」
「新しい支配者がつくのか?」
モコちゃん、しっぽふりふり。
「名目上は、僕の領地だから、魔王軍も手出ししないからねー。でも、支配者って柄じゃないし、僕はお姉ちゃん達と旅を続けるから。自治は自分たちでやってねー。万が一、他の魔族が来たら、ここはトリックスターからアスタロトが手に入れた街ですって言えば、入って来ないから。」
街の人達は歓声を上げた。
「なんだか前より安全になったぞ!!」
「交易を再開しよう!!」
「ラゴゥさん!レシピを教えてくれ!自分たちで書き写すからさ!!」
ラゴゥの元に人々がやってきて、ベオアルスが出遅れた。
「ちょっとぉー。どきなさいよ君たち!わたしもレシピを書き写さなければ、まだ出ていけないんだがね!?」
チップは便乗してお店の宣伝だ。
「蒸し器〜せいろ〜こちらのお店、何でもあるよ〜!」
「俺たちにも、せいろがあれば蒸し料理が出来るぞ!!」
皆はチップのMAPを求めて、またしても人集り。
ついには、MAPが足りなくなって、ついにわたし達が道案内した。
「商売繁盛!今宵は素晴らしい日だよ!」
店主さん、ホクホク顔だ。既に大枚せしめた感じね。
「わたしにも!鍋付きせいろを、売ってくれるかね!?」
ベオアルスVS店主さん。
果たして、値下げ出来るのかしら。
「ベオアルスの結界は解決したわ。そろそろ、わたし達は行かないと。わたし達が乗ってきた、前の馬車の皆も飢えてるはずだわ。」
そうか。そうよね。
かくして、冒険者一同は馬車に帰って来た。
ラテさん達が乗ってきた馬車は、馬はピンピンしてる。馬の餌はヘルシーだもんね。
車掌さんはぐったり、やせ細ってた。
「おい。ラビ、おまいの弁当、譲ったれ。」
チップに言われて気づいた。
わたしのお昼ご飯のお弁当、封印解除されてるし、まだ悪くなってないもんね。
「ラテさんの馬車の車掌さん、これ食べて!事件は解決したから、食べたらなんとか次の町行って、乗客の皆さんとご飯食べてくんない?」
「感謝します……やってやりますよ……乗客の安全こそ我々の使命。わたしの馬車に乗せている皆さんを、次の町で食べさせなくてはなりませんからね。」
ラテさんがふたつの馬車を往復し、わたし達の馬車から4人のパーティが降りてきて、ラテさんパーティと入れ替わった。
「同じ馬車で、しばらくよろしくね。」
「こっちの馬車は今日来たばかりよ。ラテさん、ご飯抜きで王都まで行くの、大丈夫なの?」
ラテさん達は笑った。
「わたし達の猛烈な食べっぷりは見られなくて済んだらしいわね?わたし達は今夜、たくさん食べたわよ。旅は道連れ、だいたい、貴方たちが何故王都アポロメルタンを目指してるのかも、まだ聞いていないわ。馬車の夜は長い。道中、色々と話しましょう。」
「うん!びっくりするわよ、きっと!」
勇者候補と女王候補、同じ馬車で王都アポロメルタンへの旅が再開した。
わたし達の珍道中とグルメの旅は、まだまだ、続くよ!!
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