第6話 減量レシピ!ベオアルス卿の為のヘルシー献立!! 2
わたし達は馬車から飛び降りて、進路を見た。
道は争うゴブリンと市民で、ほぼ通行止めだ。
これ以上は進ませませんよって感じに、結界の壁もある。
でも、市民はガリガリにやせ細って、見た感じ異様だわ。
「なんであんなに痩せちゃったのかしら……」
エスメラルダが指さした。
「ラビや。市民だけじゃない。ゴブリンも、ガリガリに痩せ細ってるんだ。」
カイヤさんが、モコちゃんに振り向いた。
「モコ。呪いの範囲は、魔物達にも?」
「かかってるみたい。僕と同じ、夢幻師の魔族がいる印だ。しかも、村みたいな小さな規模じゃあない。街クラスを飲み込む呪い……上級魔族が行った呪詛だ。」
その時だ。
「チップー!ラビー!ニャビー!エスメラルダー!モコを隠して……あ!来ちゃってる!!」
呼び声に振り向くと、ラゴゥとクロウが戻ってきた。
「モコちゃんの仇ね?大丈夫よ、モコちゃんはニャビの魔術で守ってるから。」
ラゴゥは慌ててモコちゃんをマントで包み、わたしに尋ねた。
「ラビ、無茶し過ぎ。次期女王陛下のカイヤさんまで連れて来ちゃったのか?ダメだよ。国が傾いちゃうよ。」
クロウが舌打ちした。
「おい。嗅ぎつかれたな。」
クロウ達の背後から現れた、やせ細ったパーティに、わたし達は気づいた。
やせ細った、モヒカンのオネェの、軽装備戦士が、センターから歩み出た。
「ごきげんよう、猛女パーティ一行さん。わたし達はアニ村から来た勇者候補パーティ、わたしがリーダーのラテ=ジェラートよ。」
オネェの、勇者候補……!?
「あたしが猛女こと、エスメラルダだ。刃を収めてくれないかね?人間相手とはいえ、仲間に何かしたら、あたしゃ容赦しないよ。」
ラテ=ジェラートは悪どい微笑みだ。
「いいわ。取り引きといこうじゃない。わたし達は、食料が欲しい。連れてる魔族を渡しなさい?」
ギョッとした。
「食料……?魔族を、食べるって言うの?」
ラゴゥが慌てて説明した。
「皆、間違ってるだけだよ!この街は呪いで食料難で……」
ラテ=ジェラートは仲間たちに指示した。
「囲んで。アスタロト!いるんでしょう?気配でわかるわよ。散々人間を食ったアンタが、まさか人間に組みしてるとはね。お得意の洗脳かしら?」
わたし、囲まれて、ショートソードを抜いて構えながら、尋ねた。
「アスタロトって、なに!?」
モコちゃんはラゴゥのマントから飛び出した。
「力があった頃の、失われた名前かも!お姉ちゃん、空に指をさして!」
わたしは片手で空に指さした。
「こう?」
「僕の加護、教えたでしょ?叫んで!」
なんだっけなー。
ここは、ファイヤーアロー?それともホワイトミスト?
いいや。危ないんだから、攻撃にしよ。
「ファイヤーアロー!!!」
モコちゃんからわたしへと、魔力が流れ込む。
不思議。
わたしは魔術師でも何でも無いのに、指さした先から火の矢が複数現れて、空中からラテ=ジェラートのパーティを襲った。
「アチチ!!」
「ラテ!こいつら、契約してるぞ!!」
盾で防いだラテ=ジェラートもびっくりしたみたいだ。
「アスタロトが、人間に加護を?契約している……?その女の子、正気?」
チップが手を振った。
「こいつぁ、正気でも正気を疑う女だぜ?」
「ちょっと、チップ!わたしは正気よ!ラテさん?貴方みたいな、子供の魔族の胴体ぶった斬るような、倫理観に反する勇者、わたしはどうかと思うのよね!!」
クロウがにっと笑った。
「出たな肝っ玉。だが、この決断はこいつの信念だ。モコ、いや、アスタロトが生き延びたのは、この娘の寿命を分け与える決意によるからな。」
ラテ=ジェラートさんは、深ーいため息をついた。
「女の子が、寿命を分けた……じゃあ、アスタロトは改心して、女の子を守ってるのね?やめだわ。やめやめ。人間の味方なら、今更討ち取っても後味悪いし……ましてや、食料なんて無理よ。」
「ラテ!甘過ぎないか!?俺たちが飢え死にするだけだ!」
カイヤさんが挙手した。
ラテさん、受け付ける。
「若い女性戦士さん、何か?」
「あのー。アンタ達の食料難て、ラビさんの弁当が封印されたのと、関係はあるのか?」
あぁ!
すっかり忘れてた!わたし、お昼ご飯食いっぱぐれたんだった!
「大いに関係があるわ。どちらにせよ、今ここは魔境よ。入るのは容易くても、結界からは出られない。スルタ町に来なさい。この街の状況を説明するわ。」
街の中は、魔物の住み着くゴブリンサイドのエリア、そして元々の市民の住む市民エリアで分かれている。
市民達は、必死にカレーを煮込んでは封印され、チーズを投下しては封印され。
中には、水に浸したオートミールで飢えをしのぐ人々も見られた。
「うひゃあ〜。ご飯の封印騒動は、街全体だったのね……。」
ラテさんは、街の教会を指さした。
「これ自体が、変わり者の上級魔族ベオアルスの呪いなの。魔王軍でも扱いきれないトリックスター、ベオアルス。でも、実力的にはわたし達だけじゃ太刀打ち出来なかった。ベオアルス自体は、あろうことか、エルン=ファルファロ神の教会に巣食っているわ。」
クロウが舌打ちした。
「神を侮辱しやがって。神の森から裁きの風が息吹かんことを。」
「おぉ、珍しくクロウがプリーストらしいことを!」
ラテさんはわたし達に振り向いた。
「今までは防戦一方だった。今まではね。今日からは貴方達、猛女様御一行がいるわ。わたし達で組んで、ベオアルスを退治しない?ベオアルスを倒せば、食料の封印が解けて、スルタ町近郊から出られるし、馬車も進めるわ。」
エスメラルダが不安げに、皆を見た。
「あたしゃ、どうにも納得がいかないよ。道沿いで水に漬けたオートミールを食べてる人達も、いるじゃあないかね?そのベオアルスって輩は、全てを阻んでる訳じゃないんじゃあないかい?」
ラテ=ジェラートさんは、怒りでワナワナと震えた。
「そう。あいつは、余興をやって観客席だわ。許されるのは低カロリーだけ。でも、この街は食文化が違い過ぎる!」
クロウがピンと来て、レシピ本を開いた。
「低カロリー……確か、項目があったな。」
ラテさんが首を振る。
「レシピがあっても、食材が無いわよ。お米は皆食べちゃったし。もう、既に詰んでるのよ。」
ラゴゥがわたし達と目を合わせ、わたし達はアイトゥアイでなんとなく意思疎通。
「ラテさん、ベオアルスに確認を取るには、どうしたらいいですか?俺たちが市場を回って、なんとかします。」
ラテさんは唸る。
「ベオアルスの余興に付き合うつもり?余程じゃなければ、魔族は約束を守らないわよ。アスタロトだって命乞いと引き替えに生かしたら、人里を襲ったわ。」
モコちゃん、俯きながら、歩み出た。
「酷い言われようだけど、人間を食べないと生きられないのが魔族だからね?まぁ、でも、罵倒されっぱなしも嫌だし。ベオアルスとは僕が契約結んでくるよ。魔族は魔族との取り引きに応じる。下級魔族の僕でも、ベオアルスは応じる義務があるからね。」
チップがモコちゃんを撫で回す。
「頼むぜ、モコ!!そっちは任せるわ!」
「まっかせてよ!市場巡りはお願いねー!」
そしてラゴゥが、各自に指示を出した。
「なら、俺はモコの護衛につくから、エスメラルダとニャビ、チップとラビは市場巡りを。クロウとカイヤさんはレシピを作って。特に、カイヤさんは料理経験が長いですよね?」
「まぁ……太っちょのジェダイトの糖尿病も完治したくらいには。」
エスメラルダがびっくりした。
「え、ジェダイトが糖尿病だって?あたしを呼び出しても良かったのに、カイヤ。」
「母さんはライスボールでジェダイトを更に太っちょにするだろうし。減量に、炭水化物は天敵だからな……」
クロウがカイヤさんにレシピ本を見せた。
「おい、カイヤ。このページはどうだ?」
「悪くは無いけど。鶏肉はカロリー高い皮を剥がさないとなんないから。皮剥がしたら、かなり淡白な味かも。」
「不味かったら意味がねぇな。このページは?」
わたし達はラゴゥから財布を渡された。
「これ使っておいてねー!」
「ラゴゥ!ラゴゥが出さなくても、わたし達金貨袋があるのよ?」
「ラビとエスメラルダがたくさん使っただろ?金貨袋は温存しよ。王都アポロメルタンの後は、レニさんが待つエルンディアナまでの旅もあるんだし。俺の財布から出しといて。ベオアルスを納得させるぐらいの、そして街の人がたらふく食べれるような、ヘルシーな宴会をしよう!」
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