ギルド入社試験会場9 また一緒に
少し時は遡って衛生班待機所
外でアタランテらが警備をしている中
テントの中ではライトを看病するイリアとダルタがいた
「うぅ……」
ライトがゆっくりと目を覚まして近くの飲み物に手を出そうとしたが
上手く掴めずに溢してしまう
「ライト…… まだ動いちゃ駄目だって」
イリアがライトを寝床に戻し ゆっくりと飲み水を彼の口に流して上げた
「……カーソンさん達 大丈夫かな?」
「あの人達なら大丈夫だよ 僕らより経験が違う」
そう言ってイリアを安心させ ダルタは立ち上がるとテントの出口まで歩く
「外を見て来る ライトを頼む」
「わかった」
ダルタはライトを看病するイリアの顔を見てテントから出る
三人でいる時間が一番平和だったと再確認した彼の密かな笑顔は
外に出ると同時に一瞬で消えてしまった
「なんだ…… これは……」
ダルタの目の前には獣にやられたような痕跡を残した現場が
ライト達三人を残した衛生班全員がその場に倒れていた
辺りを見渡すと微かに動く人を見つけて
「アタランテさん!? どうしたんですか…… こんな…… 音も無く……」
「ダルタ…… 逃げろ」
「何があったんですか!?」
すると突然 ダルタの背後で何かが落下する音がした
ダルタは恐る恐る後ろを振り向くと 先ほど出てきたテントが
複数の大岩によって無残にも押し潰されていたのだ
「ライト!! イリアぁ!!」
目の前に広がる絶望 岩の上にはラングールが冷酷にも無表情で座っている
「やはり脆いな…… 人間と言う生き物は」
ダルタは悲しみと怒りの形相でラングールを睨みながらも アタランテに治癒を施していた
「アタランテさん 逃げて下さい」
「ダルタ…… お前が逃げろ……!!」
「僕は…… アイツを許せない それにまだライト達も生きてるかもしれないので……」
「やめろ!!」
アタランテはダルタの腕を強く握り締めた
ダルタも理解はしていた 目の前の相手には勝てない 無謀なことを言っていると
ーーだけど……
ダルタはアタランテを抱きかかえてゆっくりと立ち上がる
「仲間を置いて逃げるほど 二人といた時間は短くないんです」
ダルタの顔は既に覚悟しており ラングールの方を真っ直ぐ見る
「軟弱な人間共が……」
ラングールは地を蹴り 一瞬にしてダルタの眼前まで距離を縮めた
「…………」
その瞬間 ダルタは脚に溜めた込んでいた魔力を一気に活用し
すれ違いでライグールの背後を取り ライト達のいる大岩のもとへと駆け寄った
負傷したアタランテの身体をその場にそっと置く
「ダルタ…… アンタ……」
「ゆっくりでいいです…… 岩を一つ一つどかしてライト達を助けてやって下さい」
ダルタはそう言うとアタランテに背を向け ラングールに向けて右手を前に出した
「神具」
ダルタはアタランテと大岩を囲う魔法で創られた透明な壁を出現させる
そしてもう片方の左手で別の魔法を放つ
「神力」
左手から放たれる紫の光が透明な壁に吸収され 分厚い防御壁へと強化された
ーー魔蛍の組み合わせって面白い
俺はどっちかって言うと科学者の方が向いていたのかな……
「これは…… すごい…… すごいよダルタ!!」
アタランテの目は高揚していた 目に映る神秘的な現象を前にして
「人間の分際で…… 自然の理に手を出すな!!」
ラングールは突如怒りを立ち昇らせ ダルタの貼り巡る壁に突進した
壁との衝突で少しヒビが入ったが 彼がすぐに修復させる
「アタランテさん…… ライト達をお願いします」
ダルタとラングールが攻防している中で アタランテは負傷した身体を精一杯動かし
大岩を少しずつ 持てる範囲で山になっている箇所を崩していく
ーー長くは持たない そんなことはやる前から判っている だけど必ず助ける!!
一方大岩の下ではライトが意識を取り戻していた
「クソォ…… 痛てぇ……」
岩で身動きが取れず 背中の傷は開き まさに地獄の状態
「ハァ……ハァ…… イリア!!」
ライトは我に返り 暗闇の中でイリアの名前を叫ぶ
「イリア!! 大丈夫か!!?」
「ライ…… ト……?」
「イリア!!」
声のする方へとライトは顔を向け 自身の魔法で明かりを灯す
「ライトの火…… あったかいね……」
「イリア…… コントロールは出来てんだ…… これくらい……」
「ライトは……手足……動……く?」
「左半分はまったく感じねぇけど…… まだ右半分動くから大丈夫だ!!」
「そっか…… 良かった……
私ね…… 全身がもう動かないだ……」
「イリア…… 何言って……」
「私はもう……」
「何言ってんだ!! まだ生きてるだろ!!」
ライトの必死の掛け声にイリアは首を横に振る
「待ってろよ!! こんなとこすぐに……!!」
ライトが必死に身体を動かすが 微かに動く程度では岩を退けることは出来なかった
「ライト……! 痛い……!」
「あっ…… すまん!!」
気を遣って動くことを止めるライトにイリアは弱々しく笑顔を見せる
「ウソウソ…… 感覚無いから大丈夫だよ……」
「イリア…… お前……」
「…………」
イリアは力尽きそうなのか 笑う力も無くなりゆっくり目を瞑ろうとする
「寝るな!! お前まだ……」
「…………」
「ダルタに想いを告げて無いだろぉが!!」
「……!」
ライトの必死の声に イリアは少しだけ目を開く
「知ってたんだ……」
「当たり前だろ…… お前と何年一緒にいるんだよ…… 単細胞な俺でも分かるっての!!」
「ごめんね…… ライト……」
「はぁ?」
「ライトは…… 多分私のこと好きだったんだよね?」
「イリア……」
「何年も一緒にいるんだよ? 気付かないわけないじゃん……」
「…………」
「ダルタもそれを知ってた 私の気持ちは気付いてくれなかったけど」
「アイツも意外に馬鹿だからな……」
「……エヘヘそうだね ……最後に笑えて良かった
出来れば三人一緒にこれかも…… ずっと一緒にいたかった……けど……ね……」
イリアの頬に涙が伝う その顔を見てライトにも涙が
「何言ってんだよ…… ここ抜け出して!!
ダルタと……!! オグル先生と……!! あの憎たらしいニクロとヴェルと一緒に
またあの高台で楽しくやろうぜ!!」
「ホント…… 楽しかったね…… 修行は辛かったのにホント楽しかった……」
「頼むから!! もうそんな死ぬみたいに言わないでくれよ!! イリア!!」
「ホント……… 楽しかった…… ねぇライト……」
「何だ?!」
イリアは最後の力を振り絞ってライトの目を見ると
「私を好きになってくれて ありがとう」
彼女は静かに目を閉じ その笑顔を二度と見れないことを悟った
「くぅぅ…… ぅぅぅ…… うぁああああああああああ!!!!
うあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ライトの叫びは岩の外にまで響き渡った
すぐ近くにいるアタランテも ラングールから目を離さないダルタも
悔やみ切れない思いと共に涙を流した
その思いを背負った紅き炎が岩の隙間から噴き出す
その炎はライトの感情を表すかの様 空に向かって燃え広がった




