ギルド入社試験会場1 試験開始
月日は三ヶ月を過ぎた頃
バラを北へ進んだ王が住む街 王都【ヴァジュリア】
中心に建つ宮殿を挟むように西と東に分かれて地下闘技場とギルドが構えていた
そして今日この日 まさにギルドの入社試験が行われようとしている
募集参加・推薦招待枠 合わせて約三百人の志願者達
魔蛍操作は勿論のこと個性的な魔力を持ち合わせてきた猛者だ
会社から言わせると有能な人材がギルドの前に群がっていたそう
「朝寝坊しなかったのに もうこの人数が集まってんのかよ」
「印象を持って貰いたいんだろう 前に出てれば運良く顔も覚えてくれるだろうし」
「でも面接なんて無いだろ?」
最後尾で待つ二人の少年に もう一人の少女が飛び掛かって来た
「まぁ良いじゃん!! 私達も三ヶ月間みっちりやったんだし
五人の連携じゃそう負けやしないよ でしょ?!」
「何処行ってたんだよイリア」
ライトとダルタにイリアは袋に入っている物を見せる
「あの七大珍品のセラニムが売ってたんだ!」
イリアが掴む手には鮮やかな桃色の花が咲いていた
「花の秘宝だっけ? 花言葉は確か……」
「〝信頼と真の友情〟!!」
ダルタに強く言葉を投げ掛けるイリアに二人は少しだけ驚いた
今から気を昂ぶらせている彼女の目線の先には ヴェルとオグルも集合していて
「あとはニクロだけだね」
「あの自己中……!! 一ヶ月前から何処行きやがったんだ!!
能力も教えねぇで勿体振らせやがって……」
「先生! 先に受付を済ませましょうよ」
「あぁ…… それも含めて説明がある ニクロが来てからな」
試験が始まろうとしている空気がライトを焦らす
「ホントに来るんだろうな! ニクロ!!」
「呼んだか!!?」
突如頭上から声が聞こえるライトは咄嗟に上空に目を向けた
その大声は近くにいた多くの参加者達も見上げさせる
そして空から降ってくる影は姿を現して
「ニクロ!!」
空から落ちて来るニクロは両手両足に纏蛍を発動し 無事に地面に着地した
「お前…… どうなってんだ??」
そう思ったのはライトだけではなかった 周りにいる人達もニクロを凝視する
正確にはニクロが着地した地面に注目が向いていた
「コントロールは完璧のようじゃなぁニクロ」
「あぁ問題無い」
あの衝撃でヒビすら入っていない路面から立ち上がってみせれば
ニクロは明るい笑顔でライト達に手を振って合流する
「ニクロ変わったね」
「そうか?」
イリアの褒め言葉に照れを隠せないニクロに対して
ライトは色々な思いが込み上がって彼の頭を殴った
「試験はもう始まるってのに……」
「ハハハ…… 〝ごめん〟」
ーー!!?
ライトが聞き慣れない言葉を貰って戸惑う中
オグルはその場を割って入り 集まった全員に檄を入れる
「オマら!! 少し前とはえらい違くなっとることをまず自覚せい!!」
オグルは輪の中心に出て来るなりそう言い放つ
「三ヶ月鍛錬に注ぎ込んだんだから当然 試験内容をさっぱり教えて来んかった!!
なのでこれから行われる試験内容を説明する!!」
オグルは懐から紙をを持ち出し 簡潔にまとめて話す
ーーその紙…… ギルドの試験内容が書かれてたのか
ヴェルとダルタは心の中で呟く
「まず試験を受ける上での条件
1、魔蛍操作を身に付けてること
2、五人一組のチームを結成して受けること
3、神使い〈守護神を持つ者〉は予め受付の人に話を通すこと 以上だ」
「あぁ~~! だから俺達を見て「揃った!!」とか言ってはしゃいでいたのか」
「まぁ取り敢えず条件は揃ったって事だ 次に試験内容の事だが……」
オグルが読み始めようとするタイミングでヴェルからの質問が飛んできた
「気になるんだけど 合格出来る人数ってどのくらいなの?」
「あぁ~五人じゃぁ!!」
「「「 !!!? 」」」 「「 ………… 」」
オグルのさらっとした一言にライト達は驚愕する
「何じゃいうるさいの~~ ニクロ達を見てみろ!」
三人は驚いた顔をしながらニクロ達を見る
そこには平然と聞いていたヴェルとやる気に満ち溢れるニクロ
「なんだよ……」
ニクロのしれっとした発言に ライトも思わず対抗心を燃やしてしまった
「そうだぜ!! 俺達に敵うもんはいねぇよ!!!」
「ライト…… やせ我慢……」
「!?」
「まぁそう何人も入られても仕事にならんからの……
自覚せいと言ったじゃろうがい!! オマらなら大丈夫だ!!」
「「「 ………… 」」」
三人の自信喪失気味から生まれる沈黙を軽く破ったのはヴェルだった
「ところで先生…… 試験内容を早く教えてよ」
「そんなもんは書かれておらん」
オグルは箇条書きの下の白紙の部分をヴェルに見せた
「ワシが言った判断力 それはどんな時でも必要に迫られる
土壇場で仕事に失敗する社員などいらんじゃろうからな!!」
ワハハハとオグルが笑っていると 突如国中に響く大音声が発せられた
『ただいまお待たせしましたぁ!! これより試験開始しまぁす!!』
そのアナウンスを聞いた途端に三人は焦り出す
「やばいよ!! 受付まだしてない!!」
「あぁ心配いらんよイリア」
オグルが宥めていると ダルタは質問する
「どういうことですか?」
「受付はもうここに集まっとれば参加者として認められてるんじゃよ」
すると突然地面が揺れ始め 辺りの空気が変わった
「え……? え?! ちょっ…… どうなってんだよ!」
ギルドの前に集まっていた奴らは一瞬にして動揺を拡散させた
「この地面に細く入っている溝って…… まさか魔法陣か?」
ニクロが地面を触っていると ヴェルも同情して呑気に調べ始めた
「先生!! これどうなってるんですか?!」
「ワハハハ!! ではワシは参加者じゃないからの! ここでお別れじゃ……
オマらの実力を信じて気長に待っておるからの~~!!」
そう言うとオグルは異常な跳躍で10mくらいの距離をあっという間に離れた
次第に地震は強さを増し 数多くの者がそれに気付き始める
「浮いてる?」
それは五人にも判断が出来て 自然に姿勢は低くなる
ギルドの前にあった地面はどの建物よりも上昇し 人気のない空でやっと留まった
「よし! いいぞやれ!!」
「了解!」
次に地面を含むニクロ達の周りが光り出して
「一体何が起こるんだ?」
「これは……」
慌てる三人を前にして 冷静に何かに気付いたニクロ
ーーこの光 この感じまさか……!!
「〝転送させます!!〟」
ギルドの屋上にいた人物の声と共に その地面は跡形も無く消えた
「っ……!!」
ニクロがゆっくり目を開けると そこは今までの街中ではない
前も後ろも分からない樹海のど真ん中に立っていた




