海賊の島10 守ったという実感
ニクロの周囲には白色の魔蛍がざわめき出していた
「ハァハァ……」
「白い魔蛍…… でも」
目の前にいたクロガネも思わず目を見開いた 驚くのは魔蛍達のその数だった
「こんなに魔蛍が集まったのは初めてだ…… お前は一体……」
アイディーの周りにも集まってしまう魔蛍はクロガネのところにも飛んでいく
「くっ来るな……!!」
クロガネは我に返り 寄ってくる魔蛍を次々と振り払う
「お前のことが好きらしい……」
「はぁ?」
「え?」
ニクロは少し口角を上げて優しく言う
「ニクロ…… お前今何て……」
「え? その魔蛍達がお前に好意を寄せてるって……」
ニクロの発言に二人は理解が追いつかない
「魔蛍が…… 〝話せる〟だと?!」
クロガネは剣を構えた
「もう遊びは終わりにしよう…… 俺はジキョクとメタラスを運んでこの島から出るんだ!!」
「……そうだな」
「二人ともぶっ殺せば 俺の憂さも張れるってもんだ」
「なるほど…… 君はそういう〝役割〟なのか……」
明らかに自分の話を聞いていないクロガネは怒りに任せて襲い掛かる
「死ねぇ!!」
両腕を同時に振り下げてバツを描くようにニクロの胸筋を抉った
「っ……!!!!」
斬られたニクロはそのままの体勢で身動き一つせず
「お前…… 逃げることを知らないのか?!」
「逃げたら…… アイディーが傷つくだろ?」
「…………」
「それに もう逃げる必要も無い」
「何だと!?」
ニクロはその場から何もしなかった
だが人知を越えた現象が二人の目に入る
「ハァぁ……」
ニクロが深呼吸したと思いきや
クロガネに付けられた傷 いやそれ以外の全ての傷も癒え始めていた
「どうなってやがる……」
「ニクロの身体が…… 元通りに……」
数十秒後 ニクロの身体は時を巻き戻すが如く完治する
「それで終わりか? クロガネ?」
「この……」
「馬鹿!! 挑発するな!!」
クロガネは有りっ丈の力でニクロの身体を斬り崩すが
「うぉぉぉぉぉあああああああああああ!!!!」
何十何百斬られただろう
しかしニクロは当たり前のように立ち上がる
「何なんだお前ぇ~~!!」
「何度も言わせるな…… 海賊だぁ!!!!」
ニクロは鉄パイプを構えて集中する
「まさか……」
アイディーが教えた覚えのない魔装を ニクロが目の前でしていることに驚愕する
ーー魔装は一朝一夕で身に付けられるものじゃない ニクロ…… 何かが変わった?
「腹を狙う…… 防御しろクロガネ!!」
「……上等だ」
クロガネは腹に魔蛍を集めた
「纏蛍の応用〝守核〟!!」
全身を流れていたクロガネの纏蛍だが 腹部に流動を集中させる全身全霊の守りに入った
「こうなったら全てを受け止めてやる
土壇場で魔蛍操作を囓っただけのガキには出来ねぇ業だ!!」
クロガネは準備が整う それはニクロも同じ
「ニクロ……」
「??」
後ろからのアイディーの震えた声がニクロの耳に入る
「あいつの業〝守核〟は……」
「いいよ 教えて貰わなくても」
ニクロは足を踏み込み クロガネ目掛けて鉄パイプを思いっきり当てた
「ぐっぅぅぅ!!!」
「うぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
結果は一方的だった
当たったクロガネの腹部はまるで生身の身体と変わらず
徐々にその場から離れ 山の頂上まで吹き飛ぶ
「な……」
激突した衝撃で山の岩肌が次々と粉砕し
町に次々と転がり落ちるという まるで天災を見ているかのよう
「これが…… 魔蛍の…… ちか…… ら……」
ニクロは力尽きその場に倒れた その身体をアイディーは横からそっと支えに入って
「ヘヘ…… 守ったぜ」
「…………」
アイディーは何も言わず ニクロの頬に唇を優しく押し当てた
「?!」
「助けて貰った女性からのお礼だよ……」
「何て言うの?」
「うるさい馬鹿!! 滅多に貰えないものなんだ 忘れんなよ!!」
アイディーは再び笑った ニクロは訳が分からずも顔にはこそばゆい笑顔が浮かび上がっていた
「お取り込み中失礼」
幸せな時間は一瞬で終わる
「な!?」
黒い影がニクロの背後へと回り 猛スピードで襲い掛かる
「ニクロ!!」
アイディーはニクロを突き飛ばした
黒い影はアイディーに衝突し アイディーの身体を建物目掛けて吹き飛ばす
「アイディー!!」
「ありゃりゃ…… 殺すつもりは無かったんだけどね~~」
ニクロが顔を上げると そこには下半身が馬
そして上半身が人間の姿をした巨大な怪物がその場にいた
「お前は……」
「元奴隷の分際で生意気なんだな~~ お前」
巨大な怪物は持っていた神器を振り上げてニクロに攻撃しようとしたその時
「こいつは殺させないよ」
急に光り出したと思えば ニクロの目の前にはマッドが現れる
「黒旗か……」
マッドは現れるなりニクロを掴んですぐ様その場から消えた
「チッ……」
「ゲヘナ!! 何をしている上だ!!」
「え?」
ゲヘナは上空を見上げると そこには神器を翳し地底より上空に溶岩を集めるラウルがいた
「神級魔法……」
ラウルは溶岩で長方形の柱を造り出すと 真下にいるゲヘナを狙っていた
「これヤバいんじゃね? アルべトスぅ!! 早くアイツに幻術掛けて!!」
しかしアルべトスはそれらしき行動には乗り出なかった
「あんなでけぇ魔法 そう何度も撃てるわけねぇだろ」
ラウルは全て承知の上だと思わせるような無表情で溶岩の柱を落とす
「突き刺され 〝炎神の火柱〟!!」
上空に浮く溶岩は自然に落下し始め ゲヘナの頭上へと急降下した
ーー刺さるレベルじゃ無くね?
ゲヘナはアホ面を見せているが 既に回避する手段は決まっていた
ラウル達がいる島の港の反対側の岸辺
「マッド!! まだあそこにアイディーが!!」
「それって後ろの子?」
ニクロは慌てて後ろを振り向けば そこにはアンとアイディーが横たわっていた
「あ…… ありがとう」
「次からはマッドさんね!」




