海賊の島8 強欲と暴食
「我を食せ!! 〝暴喰馬神〟」
「力を貸せ 〝強欲狐神〟」
上空に光る二つの黒い光 それを見た海賊達は次々と戦意を喪失する
「嘘だろ…… 神使いが二人……」
「もう駄目だ……」
次々と崩れる海賊達に容易く非常になれる二人 アルべトスは手を伸ばす
「強欲の下に全てを奪え……」
「マルクス!! 全員を転送させろ!!」
「っ……」
もはや耳に届きそうにない程までにマルクスの目は絶望に追い込まれていた
ドミンゴはそれを察し海へと潜る
「神級魔法…… 強欲富楽園」
手から放たれる黒白の光が海賊と奴隷が戦う戦場を覆い尽くす
「これは……」
一人の海賊が光で目を覆い そしてゆっくり開くと
そこには薄汚れた納屋の奥で料理をする一人の女性が立っていた
〝 あら帰ってたの? 手洗ってきなさい 〟
〝 お母さん…… 〟
〝 何?? 〟
〝 死んだ筈じゃ…… 〟
〝 何言ってんの 料理が出来るわよ? 〟
よく見れば 自分の身体は幼少と同じ頃の姿をしていた
〝 アンタ…… また町でケンカしたって聞いたわよ? 〟
〝 ………… 〟
ーー懐かしい
〝 聞いてよ母さん! 〟
〝 ん? 〟
〝 俺…… 自分が一番って言ってたけどさ
初めて尊敬出来る人が現れたんだよ マルクスさんって言うんだ 〟
〝 学舎の子? 〟
〝 ……そんなとこだよ 頭も良いし強いしそして仲間思いなんだ! 〟
〝 ………… 〟
〝 俺には父さんもいなかったから……
どうやって友達と仲良く出来るか正直わからなかった
でもマルクスさんが全部教えてくれて
母さん以外にこんな俺を助けてくる人は初めてで…… それが嬉しくて…… 〟
〝 分かってるわよ…… 〟
〝 え?! 〟
〝 だってあなた初めてじゃない? そんなに自分から話すの 〟
〝 そうだったっけ…… でも俺は彼みたいになりたい…… 〟
〝 ……さっ! 料理が冷めちゃうわよ 食べながらでいいから聞かせて 〟
〝 ……うん!! 〟
ーー夢だったのか?
分からないけど悪夢から目が覚めたようだ 清々しくて悪くない気分だ
この体験を忘れずに〝生きていこう〟
「マモンの強欲を幻術魔法と組み合わせた応用…… 恐ろしい業だね」
隣には下半身獣で上半身に神衣を纏うゲヘナがアルベトスを褒めちぎっていた
「いいなぁその業~~ よっこの神殺し!」
「貴様もだろ…… 神をも奴隷にする 我らが崇めるのはルシファード及びカナリアル様だけだ」
二人は目の前の景色に目もくれない様子
賑わっていた戦場も波を打つ音だけの静けさしかなく
辺りは微動だにしない海賊達が 時が止まってるかのように固まっていた
「ぶはぁ!!」
突如海から三人の海賊が疲弊して船に上がって来ると
「全員やられたのか……」
「何が起こったんだ…… 物理攻撃じゃないな」
辺りを見回せば 倒れている海賊全員が孰れも 喜びと嬉しさの表情を見せている
「幻術か?」
「死んだのか?」
現状が掴めず呆然と立ち尽くす三人とは逆に ルシファード側では何やら揉めていた
「ちょっと!! 危うく私達の奴隷までやられるとこだったじゃない!!」
「これは殺しの魔法じゃない安心しろ それより厄介なのがまだ生きている 気を抜くな!」
不貞腐れるサクバサの後ろに控えるルース隷団と二人の神使い
勝敗が決したと思いきや 思わぬ激流が確定された命運を揺さ振った
時は少し戻り 島の港近く
「見ろ!!」
虫の息の二人を前にして クロガネは港の方を指差した
その先には力尽きたアン・メアリーが海に浮かぶ光景が目に入る
「おいアン!! 俺との決着前に死ぬ気か?!」
近くで戦い続けるイングランが声を掛けるがアンは動かない その間にも巨人が次々と襲い掛かり
ーー私は死んだ 生きてたって意味が無い ボニーがいないんだから
「おいアン!! しっかりしろぉ!!」
ーー目の前に見えるのは黒い海かただの闇か……
アンは意識が薄れる中 海の底に向けて手を伸ばした
ーー町の不良だった私に あなたは手を伸ばしてくれた
あなたがいたから 真っ暗な海の上でも寂しくはなかった
暗闇とは交わることのない 白く透き通ったアンの涙が深海に零れ落ちる
ーーそこにあなたはいるの?
アンは静かに目を閉じようとした
「アイディー!! 行け!!」
「え?」
ニクロは鉄パイプを構え アイディーの前に立つ
「俺はお前が戻るまでこいつを食い止める!! だから早く行ってやってくれ!!」
「何言ってんだ 無茶だ!!」
「いいから行け!!」
その時 背後にいた私に振り向いたニクロの顔は 今までに見ない顔だった
「……くっ!!」
アイディーは脇目も振らずにアンのもとへと走る
「お前…… 俺を舐めてんのか?」
「男が女に助けてられてちゃぁいけねぇんだろ?」
それを聞いたクロガネの心情に 有り得ない感情が走る
「……フフ この俺が恐怖を感じた?」
彼の前には今まで無い目をしたニクロがいた それは覚悟を決めた眼差しだった
「魔蛍操作も使えないクズが……」
クロガネは右手の剣を溶かして元の手に戻した そしてニクロとの間を詰め
「何が来るか分かるか?」
ニクロは集中して待ち クロガネとの距離がパイプの届く距離までに迫ったとき
「そこだぁ!!」
ニクロは有りったけの力でクロガネの胴体をかっ飛ばす
「!!?」
ニクロの持っていた鉄パイプはクロガネの体を捕らえた しかし
「俺に物理攻撃は効かねぇ……」
クロガネの胴体はドロドロの液状の鉄へと化し 瞬時に固めて鉄パイプと同化する
「っ……!?」
ニクロは咄嗟に手を鉄パイプから離すが
彼の手もパイプから流れる鉄の液体に触れて固まってしまっていたのだ
「クソ…… なんだこれ…… 熱っ!!」
「つ~~かま~~えた♪」




