海賊の島3 夜明け
翌朝 停泊していたクロガネの海賊船鬼九の日号
「起きろや密航人!!」
看板で倒れて寝ていたニクロの頭を蹴る船員
「痛ってぇ……」
「ただで乗せてると思うな! ほらモップ持て!!」
「っ……」
日の出前の時刻にニクロを含めた船員六人が朝掃除を始めた
「寝む~~……」
「お前寝てた方だろがぁ!」
ニクロは疲れが取れていないのか
欠伸をしながらモップを片手に 船員の一人と共に船の床を拭き歩いていた
「クロガネ…… 船長はまだ寝てるのか?」
「あぁ宴はついさっき終わったばっかだからな」
「え……? じゃぁアンタら寝てないのか?」
「当たり前だろ!!」
船員は寝ぼけたニクロの前で大声で怒鳴った
「おいローラン!! 手が止まってぞ!!」
「へ…… へい! すいません!!」
船に荷物を運ぶ船員に怒鳴られ ニクロの隣にいた船員が頭を下げている
「これだから万年掃除係なんだよ!!」
「へへ! よせよ あんなんでも〝雑用係長〟だぞ 敬意を示さねぇとなぁ!」
ゲラゲラ笑いながら倉庫の中に消える船員をローランはただ黙って甲板を磨く
「いいのか? あんな年下に言われたままで」
「無駄口言う暇があるなら床を拭け! おめぇのせいで怒られちまったじゃねぇか」
「…………」
ニクロは掃除しながらも腑に落ちずにいた
掃除が終わると彼はアイディーに会いに行く
他の船でも活動が始まっており 夜明け前なのに既に賑わいを見せていた
ーー皆眠くねェのか……?
ニクロは昨日の会場を目印に山の中に入ると
ーーあれ??
ニクロがまっすぐ進むと横に並ぶ建物に突き当たった
「ここに建物なんてあったっけ?」
「邪魔だよ!!」
ニクロは突然の声に驚き 瞬時に後ろを振り帰ると
そこにはあの女海賊アン・メアリーがいた
「…………」
「……何か?」
「え?」
「……ハァ」
アンは溜息を吐くと思いきや腰の短剣を抜き ニクロの首寸前に突き刺す
「!!?」
「品が無い奴は嫌いだね…… お前みたいな三下に構ってる暇は無いんだよ」
短剣を退くとニクロの肩に自分の肩を強引にぶつけて前に出る
「まったくこれだから男は嫌いだ」
彼女は建物の小さな窪みにさっきとは別の短剣を突き刺した
すると建物に亀裂が入り そこを中心に建物が横にずれてゆく
「……!!」
「こんなのにあのアイディーがね~~…… 私は見込み違いだと思うね……」
開いた通路をアンはそのまま進んで行ってしまった
「すげぇ……」
ニクロは見とれていた 建物が動く光景など生まれて初めての経験だった
そして数十秒経つと建物は勝手に閉まってしまった
「入るの忘れてた……
でもあの海賊女怖かったな…… 女って怖い生き物なんだな」
「そうだよ 女に逆らったら後が怖いんだぜ」
後ろにはアイディーがいつの間にか立っていた
「アイディー!? いつの間に?」
「アンさんと一緒に飲んでてね 先に行かれちゃったけど」
「あの怖い奴と一緒にいたのか?」
「女には優しいんだよ 品もあるし 男より男だと思うね!!」
「そう言えばお前……」
「な…… なんだよ……」
「なんで昨日の夜 殴ったんだ?」
「…………」
「まったく殴られた理由がわからないんだ! 怒ってたのはわかる」
「ハァ…… 殴って悪った」
「え?」
「ほら! どいてどいて…… 俺もこの中に行かなきゃならいんだ」
アイディーは短剣を窪みに差し込んで慌てて入る
「あ! このこと他言厳禁な! 秘密なんだから普段は来て良い場所じゃないの」
「あ…… おぅ…… あの~~質問いいか?」
「え?! 何?」
「その…… 男と女の違いって何かな~~って 昨日教えてくれねぇし」
「あぁ後でな! 今忙しいからゆっくり出来る時間のときで頼むわ!!」
アイディーはそう言って通路を走って行ってしまった
「……さてどうしようかな~~」
ニクロは何もすることが無くなったので港に戻ることにする
彼の向かった先は船が停泊されていない港の端の海岸
そこにある岩に座り 暫く海を見ていた
「隣いいかい?」
「…………?」
突然ニクロの隣に一人の海賊がやって来た
「確か…… ニクロだったよね?」
「…………」
「警戒しないでよ~~ 俺はマッド よろしくね!」
ーー…………!!?
ニクロはふと気付いてマッドの方向に目を向けた
「とっくに島から出てる筈じゃぁ……」
「アハハ!! 船員は皆避難させたよ~~」
ニクロの驚いた顔を見てマッドは満足そうに笑う
「いやぁ君とはね 一度話し合ってみたいと思ってたんだ」
「??」
「ちょっと知り合いに似ててね~~」
「…………」
マッドは隣に座った
「君ぃ 〝ラウル〟って男知ってる?」
「……知らねぇ」
「そうか……」
「誰なの?」
ニクロはマッドに不意に聞く
「昔は一つの目標だけに突っ込む子供だったんだけどね…… 今はもうその面影もありゃしない」
「…………」
ニクロは何も考えてはなかったが 脳裏に今までに無いほんの一瞬の映像が横切った
「なぁ…… それってどんな……」
ニクロが横を向くと そこには不気味にニヤつくマッドがいる
「こうなる展開か……」
ニクロはゆっくり海の遠く向こうを見た そこには
「敵船だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一人の海賊が叫ぶと共に 港の海賊が一斉に海の方を見た
「何だあの船の数は?!」
「お頭に知らせろ!! あれは……」
「着いたな……」
先頭の船の船首手前に立つ一人の男
双眼鏡を片手に持ち 島が見えるやいなや高笑いを始めた
「これより海賊狩りを始める!! 〝奴隷砲〟を用意しろぉ!!!!」




