海賊の島2 信頼の形
「大丈夫かニクロ?」
「ゲホッ!! ……なんとか」
「チッ……!!」
イングランは不機嫌な態度で椅子に戻る
「そろそろ本題に入る その前にだが……」
ウィリアムは数秒の沈黙をしたと思いきや その場の空気が一気に重くなった
「「「「「 !!!? 」」」」」
ーーなんだこれ…… 身体が地面に……
ーー押し潰されそうだ
その場にいた皆が空気に押し潰されるかの様 床に寝そべるように倒れる
その中でも耐えていたのはドラモンド団艦隊関係者とクロガネ含む八人の船長だけ
「今後勝手な行動は慎んでもらおう…… 俺達はこれから同盟を組むんだ」
周りの強い重力場は消えたが 空気の重さは消えなかった
そんな重い空気を振り払うウィリアムの部下は 酒を注いだ十本のグラスを持ってやって来る
「どうぞ」
クロガネはグラスを受け取り 他の船長全員にも行き渡ると
ボニー「アンだけずる~~い!!」
アン「仕方ないでしょ 盃を交わすだけだから」
マッド「〝ソレイユブルー〟 別名 山吹の神酒 盃を交わすときに定番の酒だな」
グリル「だが世界七大珍品酒の秘宝に登録されてると聞く……
そうそう手に入る代物ではない」
蔡「この際どうでもいいこと 肝心なのは儀式だ」
彼がグラスを上に掲げる
「この度同盟を組んだのは他でもない あの七大国にとって我ら海賊はちっぽけな存在だ
それは何故か? 理由は簡単だ 同じ海賊ですら敵対しているのだからな!!」
「「「「「 ………… 」」」」」
「だから我らは同盟を組む やることはあいつらと一緒だが
ここを中心に海を渡る同志達を引き寄せ 奴等に劣らぬ組織を作ろうではないか!!」
ウィリアムの合図と共に船長十人が一気に酒を飲み干した
「ではもう解散でいいんですね?」
テーブルにグラスを置くマッドは即 入り口まで足を運ばせた
「もう行くのか?」
「えぇ 目的がある航海の途中だったので失礼!!」
マッドが去った後は他の船長達も解散するが ほとんどはこの島に数日間停泊する意向だった
その晩 海賊達は同盟を組んだことで宴を楽しんでいたが
ニクロはクロガネの船で仰向けで寝そべっていた
「お前は参加しないのか?」
「……アイディー」
ニクロの隣にアイディーが座る
「お前…… 俺を騙してたのか?」
「騙す? いつ俺がお前を騙した?」
「……じゃあなんであの町で何度も助けてくれたんだ?」
「お前に〝助けれてる〟なんて感情があったのかぁ」
「「 ………… 」」
「お前の本性ってどれなの?」
「別に偽ったこと無いけど?」
「……分からねぇことだらけだ」
「お前は学ぶ事が多いな」
「そうだな…… あっち戻らなくていいのか?」
「ナンバー6だからね 意外と自由なポジションだよ」
アイディーも仰向けで寝そべった
「お前はどうするんだニクロ?」
「この目の前に広がる気味悪い海流からどこに行けと?」
「別に今じゃなくてもさ…… 望むところがあるなら乗せてくよ? 船あるし!」
「それは助かるな」
「こっちも助かるよ
せっかく同盟が上手くいったのに他の船長に喧嘩売るんじゃぁ大変だからな……」
「質問しただけなんだ……」
「皆俺みたいにすぐに教えてくれるわけじゃないよ~~?」
「……アンタは奴隷側だな」
「はぁ?」
「別に人間以下とか言いたいんじゃないんだ…… 上手く言えない……」
「…………」
「怒ったなら謝る」
「ニクロは…… 俺を信用してる?」
「まぁ奴隷やってきたからだけど…… でも…… 信用したい」
「そうか……」
静かな空に揺れ動く船 ニクロが星を見ているとアイディーに呼ばれて
「こっち見てニクロ」
「ん?」
ニクロが横を振り向くと 上半身の服を脱いだアイディーがいた
「お前……」
「驚いたか? 俺はあの二人の女海賊のように強くは無いから
海賊やるには男装するしかないんだよ」
「…………」
ニクロは数秒間 アイディーの身体をずっと見ていた
「別に恥じらいは無いけどさ…… 見すぎじゃない?!」
「あ…… ごめん…… 寒いから早く服着たら?」
「わかってるよ!!」
「それで質問していいか?」
「あぁ? 良いぜ質問馬鹿!! 何でも答えてやる」
「女って何?」
「え??」
「…………」
「本気で聞いてんの?」
「女という言葉は知ってたけど…… 俺ら男と何か違うのか?」
「……フッ!」
「??」
「アハハハハハハハ!!!」
「どうした?」
「あ~~お前やっぱ面白い!! 俺もお前信じるわ」
「はぁ? 結局何なんだよ女って……?!」
「俺はあっちに戻るよ 今度教えてやる」
「えぇ…… あ! あともう一つ気になることが……」
「何?」
「お前の身体と俺の身体 あんま変わんないんだが違いがあるのか??」
その瞬間ニクロは思いっ切り顔を殴られた
「なん…… で……?」
「悪かったな…… 胸が無くて!!!!」
「それ…… どういう…… 意味……」
ニクロはその言葉を最後に朝まで眠った
アイディーは宴に戻ったが 戻り際に顔を赤めらせていた
ーーあんなに馬鹿な奴がいるんだな なんで俺…… 服脱いだんだろう……
夜が過ぎていく
この静かな海の波音が まさか明日の夜に聞けなくなることなど まだ誰も知る由もない
海賊の島より遥か北の方角
「良い情報が入ってきたもんだな」
「この機を逃したらカナリアル王からどんな罰が下されるか……」
「幹部を降ろされるだけでは済まないぞぉ…… なぁサクバサ?」
「そうね……」
五十隻を超える船と 背景に出現する大きな影がニクロ達のいる島に向かおうとしていた




