無法の俗領島3 海賊のゲーム
ニクロはアイディーと共にクロガネの情報を探すべく 最初に寝ていた酒場に戻っていた
「そういえばアイディー」
「何だ?」
黙々とこの町の地形などが書かれた本を調べているアイディーに
ニクロはベッドに寝っ転がりながら聞く
「さっきの海賊ゲームって何なんだ?」
「お前知らないのか!?」
「誰も教えてくれねぇんだよ!」
「ハァ……」
アイディーは本を読むことを一旦止めて椅子を動かし ニクロの方を向く
「海賊の攻守奪還戦
平らな地で最大二百人で行われる海賊と海賊の賭け事ゲームだ」
「ルールを知りたいんだが……」
「……なんで知りたいんだ?」
「なんとなく…… 初めてゲームというものを知ったから」
「…………」
アイディーのなんだか言い辛そうな顔を見てニクロは察した
「こっちがなんか情報やらないと話さないんだっけか?」
「……フッ いいよ教えてやる お前何も知らないみたいだしな!!」
アイディーは鼻で笑い 海賊ゲームのルールを話し始めた
「片方が二十人以上であれば人数の条件は満たされる
そして肝心なゲーム内容だが…… 描いた方が良さそうだな」
アイディーは黒い版と白い石を持ち出して来た
「それはなんだ?」
「原始人か!! ……いちいち突っ込むのも面倒いからいいや
この黒い板がまんま黒板で この白い石がチョーク 異国の言葉で白墨って言われている
そのチョークでこの黒い板に文字や絵が描けるんだよ」
「へ~~ 初めて見た」
「まぁ今は海賊のゲームだろ? まずは聞け!」
「……おぅ」
アイディーは溜息を吐きながら説明を再開した
黒板には四角い10×10マスの絵が描かれ始める
「このゲームにはこういう形のフィールドで勝負する
まぁそこらの海賊は毎回毎回地面にフィールドは描かない」
「どうやってその…… マスを把握するんだ?」
「魔蛍操作によって魔蛍達が揃って簡単にフィールドを作ってくれるんだ」
「!!? ま……待て!! 魔蛍操作!? 魔蛍!?」
ニクロは突然訳の分からない言葉に動揺して思わず立ち上がった
するとアイディーは手のひらをニクロに見せる
「ここ見ててね……」
「?!」
ニクロはアイディーの手のひらを見つめる
その手からは蛍の様な光る白い色の光子がフワフワと突如出現した
それを見たニクロは再び驚くが 心の内に今までに感じたことの無いものが湧き上がってきた
「すげぇ……」
「これはまた今度の説明でね
海賊ゲームのルールに深く関係しないから…… はい! すぐベッドに座る!!」
ニクロは慌てて後ろのベッドに座る
「次は駒だ」
「駒……」
アイディーはフィールドの左右両端の二段ずつにいろんな形をした駒を描き始めた
「ピースや大体の奴はカードとも呼ぶ
そしてこの沢山のカードを動かして 敵陣に襲い掛かるのがこのゲームの戦い内容だ」
「ほぉ…… ん?? そのゲームをあの海賊達は港でやるつもだったのか?」
「そうだよ」
「あんなど真ん中で? しかも片方の海賊は相手の人数を見て絶望してなかったか?」
「どこでやるのも普通だし 絶望するのは必然じゃないか!?」
「???」
「勘違いしてるようだけど カードの役割は人間だからね」
「はぁ!?」
ニクロはアイディーの予想外な言葉に言葉を失う
「人間が…… 駒!?」
「まぁ海賊のゲームだからね…… 命を賭ける度胸の無い奴は海賊にはならないよ」
「…………」
ニクロは突然立ち上がり ドアから出て行こうとした
「お…… おい! 何処行くんだ?! まだ説明終わってないぞ!!」
「もういい…… クロガネの居場所が分かったらよろしく」
ニクロはどこか冷めたような感じで部屋から出て行った
ーーなんだあいつ………
「…………」
ニクロは思い詰めた顔で酒場の出口へと歩いて行く
ーーホビー…… 俺は勘違いしてた
海賊ってのは船で航海して新しい島を見つけるだけの遊びかと思ってた
簡単に命を落とす…… 命を……
急に吐き気に襲われた
外を出て石壁に撒き散らしたが吐き気はまだ襲ってくる
「ハァハァ…… なんで……」
奴隷だった頃 何も感じなかった人の死
今になって些細な事でも 人の死に連想すること全てに吐き気がした
ーー……俺 こんなに弱かったのか
しかしニクロにはもう一つの条件で発症する記憶が
ーー……爺い こんなに気持ち悪いのに 助けを求めるようにアンタを思い出しちまう
〝 人の死に何も思わぬ者は心が空っぽな奴じゃ
得体の知れない何かから自覚があろうが無かろうが逃げてると言っていい
しかし人の死を目の当たりにして
その日から考え始める奴は死の尊さを本当の意味で受け入れようとする努力をしている
違いは一目瞭然じゃが
儂が言いたいことは今の話で自分がどう思ったか 今この一瞬が大切だということだ 〟
〝 おい爺さん…… 何言ってるかさっぱり分かんねぇよ 〟
ーーホントに何言ってんだか
〝 全てに置いて意味があるってことですか!? 〟
ーーホビー?
〝 その通りだと言いたいが少し違う 〟
ーー??
〝 監視員は今いないから言えるがお前達は若い
いつの日かここから逃げられるチャンスが来るだろう
その時に備えて今から希望を失わないでほしい
この世界にはお前達の知らないモンが山程ある
外に出ればきっと…… 今は無い思いも寄らなぬ感動が待っているぞ!! 〟
〝 ここから出られたらの話だけどな 〟
〝 確かに……… 〟
ーー死んだ皆の懐かしき憧憬が吐き気の次にやってくる
今の俺の唯一の助け…… 気付いたときには気が楽になっている
ニクロは壁に向かって決心を固めた




