世界のたった一坪2 自由への切符
言葉はあのうるさい爺ぃから教えて貰った
なんやかんやで子供の頃はよく監視員の目を盗んで話を聞きに行ってたっけ
あれが楽しみだったのかは分からない
今日も煉瓦運びだと 何の疑いも無く思っていた
「おい…… なんだあれ?!」
奴隷の一人がふと空を見上げた
それと同時に俺も無意識に顔を上げる
「!?」
そこには黒装束を着た人間が一人 宙に浮いていた
「侵入者だ!!」
監視員全員はすぐに周りに知らせて迎撃態勢に入る
「おい奴隷共!! お前達は牢に戻れ!!」
監視員の言葉通りに奴隷達は牢のある巨大な建物の中に避難しようとした
「始めていいの?? リーダー」
『あぁ…… 奴隷は殺すなよ』
リーダーと呼ばれる者に合図を確認する 宙に浮く謎の人物は両手を下に向けた
「光河の梅雨!!」
手から放たれる無数の光る物体 それは建物や橋に向けて降り注ぐ
「くっ……!!」
「うぁぁぁぁぁぁ!!」
降り注がれる物体は辺りを破壊し続け 監視員は次々と負傷する
ーー……俺達奴隷には当たらない?!
ニクロは逃げつつもそう思った しかしニクロの逃げた先に思いもよらぬ事態が起きる
「っ……!! 橋が!?」
先に逃げた筈の奴隷達が橋の入り口で立ち往生していた
「クソッ…… 橋に火の手が……!」
目の前を覆う火の海 橋の手前にいる奴隷達は退路が断たれてしまっていた
「これじゃぁ逃げられない……」
話せない奴隷が多数の中で話せる少ない奴隷達が助けを求める
「おぉい!! 助けてくれ! 火に囲まれた!!」
助けを求める奴隷を見て皆は分かっていた 奴隷を助ける者が何処にいると
「!?」
ニクロはふと焦った
ホビーの時と同じ訳の分からない感情
ーー……クソッ!!
「おい! 何してる!!」
火の海を前にしてあたふたしている奴隷達を突き破り 一人飛び込む奴隷が
「クソがぁ!!!」
体中の熱さに耐えてニクロは火の外に出た
「イかれてるぜ…… アイツ」
「待たせたな!」
奴隷達の背後には先とは雰囲気が違う黒装束の人物が現れる
「お前は……」
「奴隷になった人間を助けに来た 生きたきゃ今すぐ俺達の船に乗れ」
希望を抱く者 飼い主が怖い者
約半分が船に逃げ込み 半分がその場から動かなかった
「くっ…… そぉ……」
側で倒れていた監視員が無理やり黒装束の人物を見上げる
「貴様は…… その黒ずくめの衣装は…… 革命反士だなぁ?!」
「ご名答 ……でも違う」
黒装束の人物の隣に宙にいたもう一人の仲間もやって来た
「俺達は革命反士じゃない 〝放旅者〟だ」
そう言い残して二人も船に戻る
「もう出すの?」
「あの橋での作業はここにいる奴等でもまだまだ掛かる
だから橋の上に総出で駆り出されている奴隷で全員の筈だ」
「リーダー!! アイツは置いていくの?」
『アイツの任務は終わって無い 先に船を出せ』
「わかった!! よし出航!!」
炎上する建物内
「ハァ…… ハァ……」
息が苦しい中 ニクロは業火の中を一人突っ走る
ーークソ!! 何処にいやがんだ爺ぃ!!
牢屋を一つ一つ見てる暇は無い だからって何で今日に限って橋にいなかったんだ?
ニクロが通路を右に曲がると そこには荷物を持っていた老人と監視員がいた
「爺ぃ!!」
「貴様!! 貴様も荷物を運ぶの手伝え!!」
「!!?」
慣れというものは恐ろしい 一瞬〝はい〟と言うところだった
いや奴隷ならここで従うのが正解なのかと洗脳されている
「うぅ…… ニクロ……」
「!?」
動揺が隠せないニクロに 老人は弱々しくも笑顔で言う
「今の状況に気付け…… お前は自由になれるチャンスだぞ」
「!!」
「この期に及んで何言ってんだお前!!」
監視員は老人を懲罰棒で思いっきり叩く
「うぐぅ……」
老人はその場に倒れ 監視員に足で何度も強く蹴られている
ーー俺は…… 何をしてるんだ…… 動け…… 動け動け動けぇぇぇぇ!!!!
その時だった
「ぐぁぁぁ!!!」
監視員がその場に倒れ のたうち回っている
「爺さん無事か!?」
そこには数人の若者が老人の周りに集まっていた
「お前らは……」
「お前と一緒だ」
ガタイの良い奴隷は老人を担ぎ上げ ニクロのもとに走ってくる
「さあ! 出口を探そう」
「……あぁ」
周囲の火の渦は二クロ達を囲み
そんな中でもなんとか出口を探そうと進む奴隷達
事態が切迫した状況で 背終わられていた老人が虫の息で口を開いた
「ぅぅ…… 儂を置いていけ」
「そんなこと出来るかよ爺さん よく見ろ!!」
少し動いただけで体中に痛みを感じる老人は辺りを見回す そこには笑顔で老人を見る若者がいた
「俺達はガキの頃からアンタに育てられたようなもんだ
言葉や世界を教えてくれたり 倒れたときは庇ってくれた」
ガタイの良い奴隷は爺さんを担ぎながら生き生きと語りかける
「アンタは俺達の親代わりだったんだ 勝手に死なせらんねぇよ」
「くっ…… 馬鹿共が……!」
しかし奴隷達の前に現れたのは 銃を持った複数の監視員だった
「何をしている貴様等 奴隷が勝手に檻から逃げ出すとは!!」
「火だるまになれってか? 悪いが俺達は自由になる!!!」
するとガタイの良い奴隷は老人をニクロに預けた
「え!!?」
「お前はじいさんと一緒に逃げ道を探せ 俺達はここで足止めする」
「何言ってんだ…… お前が助けるんだろ!?」
「ここは俺達力のある奴の仕事だ 先に行け!!」
ガタイの良い奴隷に続き その他の奴隷達もニクロの背中を叩く
「俺達の親 頼んだぜ?!」
「生きて逃げ延びれたら 皆で一杯やろうや」
「……なんで?」
ニクロは意味が分からなかった 何故そこまで
「なんでそこまで…… 身代わりになれるんだよ」
「失って初めて気付くモノって あるだろ?」
奴隷達は一斉にニクロと老人に笑顔を見せ 監視員に立ち向かった
「…………」
ニクロは老人を担ぎ 別ルートを走って逃げる
ーーなんで…… なんで……
後ろから何十発の銃声が響き渡るが ニクロは立ち止らずに出口を探す




