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それぞれの旅立ち3  Thank you, let's see again


事件から一週間 ガルバーク帝国南の港

そこには国に来ていた人達の乗る船が密集していた


「趙炎!!」


自国の船に乗ろうとしていた趙炎を必死で走って来たラウルが止める


「ラウル……」


「もう行くのか?」


「はい 自国に戻って報告しなければいけないので…… 長くいた方です」


趙炎は不意に辺りを見渡す


「あの…… メモ……」


「趙炎!!! 早く乗らんか!!!」


後ろから巨体の妖龍が地響きを立てながら歩いてくる


「はい…… それではラウル またいつか会おう」


「あぁメモルは今話してるから来れないんだ」


「そうですか……」


落ち込む趙炎にラウルは少し疑問を持つ


「…………」


「いや……! 別に落ち込んでるわけではありません!! ではまた……」


不思議な空気を作りながら趙炎は小舟に乗り 大きな軍船へと乗り移って行く


ーー何を落ち込んでたんだ??


「相変わらず無愛想に帰っちゃいますね 漢の国は」


ラウルの後ろからヴァースとガタルゴ ルンウェイがやって来る

そして近付いてガタルゴの顔がラウルに傾いた


「!!?」


「ヌバババ!! 今回はやってくれたな小僧!!」


「あ~~ え~~と オーガさんの件ですよね?」


ラウルが覚悟を決めたその時

周辺に響き渡るような笑いが飛び交う


ガタルゴ「ヌバババ! 別に心配はいらん!」


ラウル「え??」


ルンウェイ「あの人のことですから 飛ばされた先で手を叩いて爆笑でもしてるんでしょうね」


ガタルゴの隣にいたルンウェイが分かってる口ぶりで納得している


「あのお方は勝手に国に戻っておられるだろう ラッキーだったな小僧」


「あ はい……」


少し安堵するラウルにガタルゴがさらに顔を押し寄せて


「気に入られたって事の意味を…… 理解しとけよ?」


ゾッとするような空気を残し ガタルゴ達は遠くに停めてある船に去って行った


「ハァ……」


「ここ数日疲れっぱなしだねラウル君」


「まぁ…… 仕方ないっす……」


「これを君に」


そう言うヴァースは ラウルの手のひらに得体の知れない鉱物が装飾されたネックレスを置いた


「これは……?」


「俺の力で精錬したネックレスだよ 特別な質で作ってあるからそう壊れない」


「なんなんですか?? これは??」


「君が俺を頼りたくなったらそれで呼ぶと良い 気分次第で駆けつけるよ」


そう言い残して彼は手を振りながら王宮に戻ろうとする


「ヴァースさんは国に帰らないんですか?」


「…………」


ヴァースは足を止め ラウルにニコッと微笑む


「俺は国を…… 地を踏む……」


「え?」


ーーどういう意味だ?




「ラウル!!」


空色の髪を波のように靡かせながら メモルが向こうから走ってきた


「お前は相変わらず元気だな……」


「エヘヘ! そうかな……」


嬉しそうに後ろ頭を撫でるメモル しかしその笑顔は無風の地に灯る火の様に徐々に消えてゆく


「ラウルにお別れを言いに来たんだ」


「え……?」


キョトンとするラウルを前に病室で会った謎の男が現れる


「ラウル君」


「アンタは確か…… 病室で」


「申し遅れました 私はウルヴェン

魔法都市カタストロフィアからある件でこの国にやってきました」


「魔法都市!!?」


ウルヴェンは手を差し出してラウルと握手を交わす中 メモルは深刻そうに話し始めた


「ラウルも気付いているかもしれないけど

私には私自身も制御できない程の膨大な魔力があるの」


「…………」


「だから…… えっとその……」


話し辛いメモルの続きをウルヴェンが代弁して


「メモルさんを都市に迎え入れ

魔法の知識 そして制御する為の教養をさせます」


「……それは 絶対なんですか?」


ラウルの発言にウルヴェンは躊躇なく返答する


「貴方はご存じの通りだと思います 神の力を……」


「!?」


「魔法もご存じですね? 聞けば最近身に付ける機会があったとか?」


「はい…… 魔蛍から創られる何かということは」


「まぁそういうことですが 問題はメモルさんが神と同等の魔力を秘めていることなんです」


「え? メモルが?」


「はい…… あのような力をましてや制御不可能ということになれば

この先どういうことが起きるか ラウル君でも想像できますね?」


「…………」


ウルヴェンの話にラウルとメモルは沈黙する

つい最近起きたあのハイゴレの暴動が一瞬で頭を過ぎったからだ


「すぐにでも出航します

国の事情で長居は不味いものでして 最後の別れをお願いしますね」


ウルヴェンはその場から姿を消した


「「 ………… 」」


ラウルはそのまま微動だにせず メモルはずっと海を見ている

時間は徐々に進む中 ラウルも海を見つめて口を開く


「まさか…… ここでお別れになるとはな」


「え……?」


「てっきりお前とまたあの列車に乗ると思ってた」


「私もそうなるんだと 列車を降りてから思ってた」


二人はふと停船しているWCTの方を見る

ジッと見つめるラウルは急に今言ったメモルの言葉に驚く


「え!?」


「えって何!? これからも一緒に旅しようって言ったじゃん!!」


「まぁ…… 流れ的にそう思ってたけどさ……」


ラウルは頬を赤めらせてメモルから視線を外す


「え?? 何?」


「いや…… ホントに俺と旅する気だったんだな~~って思ってさ」


「えっ……? ラウル照れてんの?!」


「照れてねぇし!!」


「顔赤いよ?」


「恥ずいこと言ったからだよ!」


「ふ~~ん……」


メモルはラウルにニヤついた顔を近付ける


「まぁ…… お別れだけどな……」


「……うん」


二人は悶々とした気持ちを抑制させる為に 当たり前のように海を見る


「ラウルはこれからどうするの?」


「ん~~ まだ行き先決まってないしな~~

予想も出来ない事が沢山あったし もうちょいこの国でゆっくりするかな?」


「予想もつかない事が起きるのが旅ってもんでしょ?!」


メモルの突然の発言にラウルは驚いた


「お! 言うようになったなメモル!」


「当たり前だよ! ずっとラウルを見てきたんだから」


「えっ?」


「あ!」


メモルは慌ててラウルから視線を逸らす


「ねぇラウル……」


「ん?」


「私さ 誰も思い出せず自分も分からないで旅してたって言ったでしょ?」


「そう…… だったな……」


「実はちょっと違うんだ……」


「え……?」


「私ね…… あのアンオーメンの町から生まれた気がするんだ

っていうのもあそこからの記憶しかないんだ」


「それってまさか……」


「あの島神(ウォージュ)のことは知らないよ

でもあそこから何かが始まったのかな~~って思っててさ」


「…………」


「ラウルとも出会ったし」


「……偶然だよ」


「偶然かなぁ……」


「何か知ってんの?」


「何も知らないから怖いの……」


「…………」


「……そろそろ行かなきゃ」


メモルはラウルに背を向けて歩き出した


ーー結局分かんないことだらけ

メモルという出会った時から引っかかる 周りとは違う そして何一つ近づけてないこの感じ

このままでは何も言えることは無い 出会ったのも最近だ なのに…… もどかしい


「俺は!!!」


「…………」


ラウルの大声にメモルは足を止める

空色の髪が風に吹かれて 露わになるメモルの顔がラウルを見つめていた


「俺には両親がいない…… そこはお前と一緒だ」


「…………」


「だけどそんな俺を育ててくれた人達がいた

守って貰わなきゃいけないガキの俺を助けてくれた」


ラウルは言いにくそうな言葉を 息を吸って思いっきり言い放つ


「そういう人達を見て俺は育った だから俺は……

お前を助けたい!! お前と一緒にいたい…… でもそれは叶わないからさ

友達でも家族でもどっちだって思っててくれて良い……

せめて〝行ってきます〟くらい言ってくれよ」


その瞬間メモルの目からは涙が流れた

涙を袖で強く拭き取り 鼻水が出てる笑顔で



「ありがとうラウル……!! 行ってきます!!」



それがメモルと別れるときに見た 最後の笑顔だった

メモルが悔いなく旅立つことが出来た証だろう

俺の姿が見えなくなるまでメモルを見送ってたなんて

彼女には知る由もない




振り向いてよ



振り向いていいの?



ありがとう



こちらこそ



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