悪の創世
「あ! いた!」
最後に会わなければならいない人達がいるラウルは
西海岸の岩陰に停泊している マッドの海賊船ケルマディック号を尋ねた
「ラウル!!」
一番に見かけたのがミルクだ
「ミルク……?! なんでここに?」
「仕事も終わったし マッドが家の近くの島まで通るって言うから乗せてって貰うのさ!」
「王宮に来ればよかったのに……」
「そうもいかないでしょ…… 俺等は一応表で目立っちゃいけない職種だからね」
二人の後ろから風呂上がりなのか 上半身裸のマッドがタオルで頭を拭きながら船から下りてきた
「一応俺女子なんだけど……」
「「 !? 」」
二人はわざとらしい咳払いをしながら何気なく話題を変えた
「そういえばヒズチは?」
「船内でぐぅすか寝てるよ~~ まったく神の力の使い過ぎだね」
両手でやれやれと言わんばかりのポーズを取るマッドにラウルは聞いた
「その神の力ってアンタに教えて貰ったのとまた違うの?」
「ん~~…… 話せば長くなるし~~ そろそろ出航しなきゃだし~~」
「じゃぁ一言で言うと?」
「君が生であの七大国の力を見て感じた通りだよ」
「「 ………… 」」
「船長!! 準備ができましたぜ?」
「わかったぁ!!」
マッドは人並み外れた脚力で船のマストの天辺まで跳ぶ
「おい! 俺まだ乗ってねぇよ!」
ミルクも急いで乗船する
「ラウル!」
「ん?」
ミルクは甲板に足音を鳴らしながらラウルの見えるところまで走って来ると
「俺まだ諦めてないからな!」
「はぁ? 何のことだ??」
「友達!」
「え!?」
ラウルは予想もしないミルクの発言に驚きを隠せなかった
「別に…… なってもいいけど……」
「…………」
「助けてもらたしな!」
「……助けたっけ?」
二人は笑い合いながら自然に友達へと成就した 上ではマッドも少なからず笑みを見せている
「ラウル!! 列車は大丈夫なのか?!」
「なんやかんやで二週間動かないらしいからもう少しこの国にいるよ!!」
「そうか!」
マッドが何か言いたげそうな表情をラウルは見逃さない
「どうかしたのか?」
「……ラウル 仲間にならないか?!」
「断る!!」
ラウルは笑顔で返した
マッドは疑問を持った感情と何処か淋しげな表情を見せ
その下ではミルクが大爆笑していた
「ハハハ……! ラウルらしい」
「俺には夢があるんだよ! じゃあな!!」
「敵わないなぁ……」
マッドは呆れるがすぐに立ち直り
「よっしゃ!! 出航!!!」
船は海原に向け ラウルは次の旅に向けてお互い正反対に進み出した
夜中の海辺沿いを歩き ふと砂浜に座った
ーー色んな奴に出逢って…… だけど全員と別れる日が訪れる
いや…… それぞれ新たな旅に出たんだよな……
俺ももっと剣術 そして魔蛍操作と力を磨いていかなければ……!!
浜辺で黄昏れるラウルの背後に近付く 月の光に照らされた人影
「!!」
ラウルは気配に気付き 直ぐさま海の方へと下がる
「ラウル…… 俺だ」
小声に話す男性はラウルを知ってる風だった
「誰だ…… 俺を知ってる?」
「分からないのか!? 俺だ アバルトだ!」
ーー……!!?
急にラウルは吐き気を伴う頭痛に追いやられた
「ラウル?!」
アバルトはすぐに倒れるラウルを抱き抱えた
「俺は…… 俺に…… 知り…… 合いなんて…… いない!」
「思い出すんだラウル!! お前がしなきゃいけないことは何だ?! 俺が言ったこと忘れたのか?!」
「うぁぁぁぁぁ!!!」
ラウルはアバルトの顔を無意識に殴る アバルトは海へと吹き飛ばされた
「ハァ…… ハァ……」
「ウェッ…… ゴホッオホッ……!!」
「知ってたよ…… 覚えてたよ」
「…………」
「奴隷だろ? 俺の両親……」
「そうだ……」
「アンタは俺を助けてくれた人だろ?」
「……そ そうだ!!」
「でも忘れた 忘れようとしてた」
「なんだと!?」
アバルトは海の抵抗を物ともせず走り出し ラウルの胸ぐらを掴む
「忘れようとした? お前は親を助けたいと思わなかったのか!!?」
「まだ四歳だったんだぞ!! 物心つく前に復讐覚えろってか?!!」
「…………」
「恐怖しか無かったよ イメージも無い振り返ることも出来なかったトラウマだ……」
アバルトは返す言葉も無く そっとラウルを下ろした
「アンタだって…… 助けた後で俺を置き去りにして行ったんじゃないのか……!?」
「違う……!!
俺じゃお前を守って逃げられなかったんだ……
だから…… だからお前を民家の小屋に隠した……
そのお陰で民家のゴアストラ家の養子になれたんだろ?」
「…………」
「生きててくれて救われた…… お前のお父さんとの約束だからね
あれからもお前のことだけを思って世界を逃げていた……」
「…………」
ラウルはその場に座り込んだ アバルトも気が抜けたように座る
「俺の両親は奴隷なんだよな…… 今も同じ場所で……」
「……死んだよ」
「…………」
一瞬の沈黙がアバルトの覚悟していた地獄だった
「今…… なんて……?」
「お前と逃げて…… 三年後くらいか……
お母さんは子供を何人も産まされて そして力尽きた……
お父さんは逃亡の共犯として ずっと拷問されて…… そして……」
「…………」
アバルトは願った 泣くなら早く泣いてくれ 胸が引き裂かれる前に
「……うっぅっ うぅっ……ぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!
あぁぁ!!!! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」
ラウルは国中に響くかのように泣き喚いた 抑えようのない悲しみが尽きること無く漏れ出す
「すまん…… 俺には何も出来なかった…… すまん…… すまん……」
ラウルは記憶の中で母との別れ際の映像が流れていた
ーーあの時…… 逃げる時…… 別れる時 母親の手を放さなければ良かった
ルゥ 今ならはっきり分かるよ
あのとき復讐が正しいって言ったのは この事を身体が覚えていたんだ
親がいなくなるってこういう事なんだよな 俺は押さえられなかったよ
他人事だと目を背けていた 俺はお前と同じだった
同じ境遇だと分かり合えるのかな だから友達になれたのかな 教えてくれよ友達だろ?
俺の旅はここまでだ そして新しい旅が始まる
〝復讐の放旅者〟
俺の復讐の旅が始まる
クロォンメモリアル歴 R994 第1章 旅の途中 完
次の物語は4年後




