始まりの国9 天への旅
空中での一瞬一度の戦い
オーガは遠い海の果てまで吹き飛んでいった
「ルーナイトの母さん…… アンタすげぇ力持ってんな……」
〝 さぁラウル君早く地上へ!! ルゥの魔法が大陸を割ってしまうわ 〟
ラウルがすぐに後ろを振り向くと
あの巨大な剣が先ほどよりもデカさを増して大陸を分断出来る長さを誇っていた
「おい…… あんなのどうやって止めんだよ……」
「有りっ丈の魔力をぶつけるんだ!!」
不意に闘技場の方を見た
そこには神衣を纏った妖龍とヴァースが
「ラウル オーガさんは?」
「あ~~…… 仲良くしてもらえなかったんで結局争って……
今は海の果てで怒っていると思います!!」
ラウルの発言に二人は驚きを隠せずにいた
「驚く話だがぁ 今はこっちのバカデカい剣を粉砕することが先だ!!」
妖龍の背後にヴァースが続き ルーナイトの業の破壊に向かう
「「 神級魔法!! 」」
ルーナイトはこの国ごと全てを破壊する腹だった
「これがお前の選んだ結末だ ドレイル……」
狙いを定めるルーナイトの正面にはドレイルが倒れていた
「グフッゥ……!! 私を殺すのは構わん だが!! 国には手を出すな!」
「国には手を出すな? ……俺の国はお前に潰されたんだぞ?」
彼は憐れむ気持ちを顔に剥き出していた
そしてゆっくりと手を下げる それは巨大な剣を振り下ろす行為だった
「や…… やめてくれぇぇ!!」
泣きながら土下座をするドレイルにルーナイトはただただ嘲笑を見せる
「アハハハハハ!!!! どっちが悪かわかんないなぁ?!」
ゆっくりと落ちる巨剣を目前にして二人は現れた
「雷鳳王神の砲祀電!!!!」
「大千雲界 竜巣 億河雲龍!!」
左の空には先のヴァースが生み出したのと同じ 球体型の巨大な膜放電
右の空には妖龍が その周りには億を超える雲の龍が次から次へと上空の積乱雲より出現していた
「クッ…… まだこんな力が……」
ルーナイトは瞬時に巨剣の行き先を大陸から上空の方へと変えその剣先はヴァースに向けられる
「これ以上邪魔をするなぁぁぁああああああ!!!!」
彼の憎悪の一撃がヴァースに降りかかる しかし実力の差は埋まらなかった
ヴァースの一直線に走る雷撃が巨剣に触れた瞬間
次々とその原型は崩れ落ち 雷はそのままルーナイトに直撃した
それに続くように無数の雲竜が雨の様に降り注ぐ
「ふぅ…… さすがですね妖龍さん」
「……いや まだだ」
妖龍は力を解かなかった その理由は次第に地上の砂塵から姿を現す
「アァァァ…… せっ…かく…… 国を滅ぼすチャンスだったのに……」
かなりのダメージを喰らったのか 全身血まみれで弱々しく立ち上がるルーナイト
「ルーナイト……」
「…………」
目の前に立ちはだかるラウル
「お前は…… 一体何だ?」
「友達だ」
ラウルは剣を構える
「友として 俺はお前の母さんと一緒にお前を止める」
ラウルの言葉に到底理解出来ないルーナイト
その筈なのに何故か心は揺さ振られ
「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何も考えず 考えられず
ルーナイトはラウルに襲い掛かる
「さらば…… 友よ」
上半身に斜めの亀裂が走る
そのときラウルはルーナイトの顔を見た
一瞬でも殺した友の顔を目に焼き付けたのだ
そして裂け目の奥にはメモルが
「ラウル…… 泣いてる……」
「……当り前だ」
地上にいたヴァースと妖龍がラウルの下に駆け降りた
「終わったのか?!」
「まさか七大国がここまで本気にさせられるとはな…… 何かの前兆か?」
「まぁまぁ…… まずは安堵しましょうよ」
二人が話し合っている傍らでは ラウルとメモルがルーナイトの遺体を見ていた
いや正確には二人が見れない光景を二人は見ていた
〝 ルゥ? 〟
〝 マ…… マ……? 〟
〝 辛かったでしょ…… よくがんばったわね…… 〟
〝 何故…… 死んだ筈じゃ…… 〟
〝 君もようやく解放されたんだよ 僕 〟
横たわるルーナイトを 膝を枕にして頭を置いて上げるレベッカ
その後ろには先ほどラウルと会ったもう一人のルーナイトがいた
〝 ………… 〟
〝 ………… 〟
〝 そうか…… 闇に完全に侵されてしまったんだね 〟
〝 そう…… でももう大丈夫 完全に開放されたから
君と僕 僕と君は再び一つになり 成仏できるんだ 〟
ルーナイトはルーナイトに手を差し伸べた 闇はゆっくりと手を伸ばす
そして握手した瞬間に二人は複数の魔蛍へと変わり 一つの体になるよう密集した
〝 ママ…… 〟
〝 えぇ…… 行きましょう パパも待ってるわ 〟
レベッカは立ち上がり ルーナイトの手を握る
〝 ラウル君…… ありがとう 〟
レベッカがそう言うと 二人の体は神々しく光り始める
〝 待って! 〟
ルーナイトはレベッカの手をゆっくり離してラウルのもとへと走った
「なんだよ……」
〝 ヘヘヘ!! 〟
ルーナイトは手を差し出す
「…………」
ラウルは何がしたいのか分かっていた
普段はしない事だけど 自然に手を伸ばして握手を交わす
〝 約束忘れないでよ? 〟
「あぁ 忘れられる約束じゃねぇよ 友達なんて……」
〝 ヘヘ! 初めての友達が君で良かった 〟
握った手は静かに離たれ ルーナイトは母と共に天への階段を一歩一歩昇って行く
「ルゥ!!!!」
〝 !!? 〟
ルーナイトの背中を見つめるラウルは叫んだ
「生まれ変われよ!! 俺の最初の友達が死んだなんて後味悪ぃからな!!」
〝 ラウル…… 〟
ルーナイトが振り向くと 二人の目には涙が溜っていた
〝 ヘヘヘ!! 〟
「ハハ……」
〝 良い友達を持ったわね 私もラウル君好きよ 〟
〝 パパにも…… 自慢できるね! 〟
天への光が強くなる度に 僕らの体は軽く薄く
まるで生気が吸われる気分だった
だけど何故だか 怖くない 痛くも無い
後ろには心強い友がいたから 安心しか なかった
愛しい人に死を見届けられるってこんな感じなのかな?
だったらそれは とても大切な事だと僕は思う
だから
僕らは胸を張って逝かなければならない
残される人達が悲しまないように 強く 楽しく
恨みや憎しみは忘れない
でも 僕は友として 君を忘れない




