始まりの国7 友達だからか
「おいガオン!!」
「オブァッ……!!」
その場で膝を着いて血を吐くガオンの前で ルーナイトはゆっくりと立ち上がる
「俺と同じブロックにいた選手だ…… こいつが元凶だったのか??」
マルナタはすぐに構えた
「どいてろ!!」
後ろから一人の選手が駆け抜けて行き 大きな金棒をルーナイトに振り下ろす
「……邪魔」
手のひらを選手の顔に照らし合わせてドス黒いオーラを浴びせる
「あ…… ががぁっ……!!」
選手の身体が徐々に黒ずみ やがて石造のように固まった
「な…… んだとぉ?!」
その一瞬を目の当たりにした選手は一瞬で度肝を抜かれ
「何なんだこいつは!?」
「こ…… 殺される……」
次々と選手達は逃げていく
「怯むな!! 相手はたかが一体だ!!」
ダン・カーリーの一声で多少士気は上がったが やせ我慢となんら変わりはしない
動揺を隠せずに誰一人として前へと進む者はいなかった
「俺が行く!! 皆は後に続け!!!!」
そんな中でルーナイトに臆することなく攻め入るダン・カーリー
ダンの戦意に共鳴したマルナタ・ヴィルチェ・ザンパイ・マクガイ・アライヴを含めた
有力選手等と共に間合いを詰めて一気に攻め立てる
「……邪魔と言った筈だ」
ルーナイトの黒く濁った手はダンの方へ向けられ 広範囲に黒いオーラを撃ち放つ
「くぅっ!!!」
ダン・カーリーはその極めた脚力と反射神経ですぐに上空へと跳ぶ
しかしすぐ下には目を覆う光景が待っている
「クソ……!」
彼は勢いを殺さず そのままルーナイトにかかと落としを決めようとするが
直撃したのはルーナイトが防ぐ腕だった
「こっち側がガラ空きだぜ?」
反対側がフリーになっていたルーナイトの脇腹にドル・マーフィーのボディブローが炸裂する
「甘いな……」
ルーナイトはまるで痛みを感じていないかのような無表情を保つ
「あのポイントだ 全力で叩き込め!!」
「手を組んでるわけじゃないんだ 巻き込みすまん!!」
指で指示する サドンの隣には既に準備を怠らないクリスチャンが構えており
「メガトン~~ シャインシューティング~~~~」
「あれは…… マズい」
ルーナイトは二人を強引に引き離して逃げる行動に出たが
「逃がすかよ……」
「我 武に恥じぬ行動を示す!!!」
二人はルーナイトを抑え込んで逃走を許さない その姿を見たクリスチャンの目に涙が溜まる
「ぉぉぉぉおおおおおおお!!!! ストレートォォォォゥゥゥ!!!!!」
一振りしただけでその膨大な衝撃波はルーナイト目掛けて一直線に走る
「よし…… これで…… ん!!?」
サドンの見た先は一瞬の出来事だった
あのダンとドルの二人が微動だにしてなかったが
ルーナイトの体から徐々に離れ 静かに地面に倒れ込んだではないか
「邪魔だと言ったのに……」
ルーナイトの体中を駆け巡る黒い電流
二人は密着したのが原因で感電という安易な敗因となってしまったのだと
サドンは哀れかつ己への失態を抱いていた
そして奴が体中から迸る放電を膨張させたとき 静かに目を閉じた
ーーここまでだな
「トーラ・レザイガ!!!!」
雷と闇が混じり合う黒雷の波動がクリスチャンの一撃を軽く打ち破り
二人を始め後ろで逃げていた選手全員を巻き込む程までに放たれた
「〝アイツ〟程では無かったな……」
ルーナイトの見る方向にはオーガが腕を構えながら宙に浮いていた
そして正面にはラウルの姿も
「ハァハァ…… ハァ……」
「おい小僧!! 足手まといだ引っ込んでろ!!!!」
「うるせぇ…… そっちこそ引っ込んでろよ!」
やや震え気味のラウルの発言に対しても普通にブチ切れる大人げないオーガは
「破波津膨創……」
上空に浮くオーガが構える拳の先は 真下にいるラウルに向けられていた
「クソ…… 約束したってのに……」
ラウルは太刀を握り戦闘態勢に入る
ーーやる気か…… クソガキめ!!
「オーガ国王!!」
どこからともなく聞こえた自分の名前を呼ばれるオーガはラウルから視線を逸らす
「お前は確かぁ…… この国の王だったかな?」
オーガとラウルの前に現れたのは ルドレイン王改めドレイルだった
「何をしておられるのです!! 敵はあの怪物ではないのですか!?」
「小国如きが俺に指図するんじゃねぇ!! このガキ潰したら速攻俺の手柄にしてやんよ!!」
オーガは既に自制心などは無かった
ただただ目の前のラウルが気に入らない
すぐ視界の入るところに国が滅ぶかもしれないという恐怖の塊が存在するというのに
ドレイルはオーガが何故あの子供に敵意を向けているのか理解出来ずにいた
「…………」
ルーナイトは凝視していた 一瞬の瞬きもせずにドレイルを見ている
そして怒りと共鳴して 身の内から漏れ出る黒いエネルギーが一気に膨れ上がった
「お前は!!!?」
まるで驚く猫の如く即座にドレイルの方向へ視線を向け 噛み付く勢いで飛び掛かった
「!?」
ドレイルは盾を構えたが ルーナイトの一殴りで一気に後ろへと吹き飛ぶ
「あぁ…… お前だけは…… お前だけは~~……!!!!」
ルーナイトはよろけながらも ゆっくりとドレイルの吹き飛んだ方向へと千鳥足で歩いていく
「王を守れぇぇぇぇ!!!!」
兵達はルーナイトの進行を必死に止めに掛かる しかし黒いオーラの前では無に等しい
「が…… あぁ……」
「邪魔だ…… 邪魔だ…… 目に入る全てが邪魔だ」
次々と黒く染まる前衛の兵達を見ても他の兵は逃げることは無い
「我々は…… ハァハァ…… 立ちあがったんだ!!」
ドレイルは膝を押さえながらゆっくりと立ち上がる
「…………」
「過去の過ちを報いながらも前に進むんだ……!! 私達は未来の為に戦おうと誓った」
剣を抜き まるで身を呈するかのように正面から斬り掛かるドレイル
兵達も同じくその後ろを付いて行く
「……それでママとパパは帰ってくるの?」
地面に手を突っ込み 地中に黒いオーラを流し込む
亀裂から生えてくる黒い触手が地盤を突き破って出て来た
「人の命は帰ってこない!! お前達がどれくらい改心しようが!!
戻ってこないんだから どうしようもないじゃなかぁぁぁぁ!!!!!!」
無数に現れた触手が次々と兵達の脆い身体を貫く
「うっ……!!!」
「ぐあぁっ!!」
兵は抵抗する間も無く無残に倒れて行く
そして触手一本一本が最後に虫の息のドレイルに集中して狙いを定めた
「…………」
「まだ何かほざくか?」
「すまなかった」
「わかった」
ルーナイトが手を上に そして同時に一本の触手が後ろに引く
下げると同時にその鋭い先端がドレイルの身体を捉えて襲い掛かった
その時 ルーナイトの手を正面で握る一人の少年が
「お前にもう人殺しはさせない」
「……!!?」
「約束されたし…… 友達だからな」




