始まりの国5 正しい王の器
「……ハァァァァァ」
ルーナイトは上空に手を振り翳した
上空には突如として黒い雷の球体が現れて膨張していく
そのルーナイトの目線の先はボルマー達だ
「おいやべぇぞ…… こっち見てねぇか??」
「ひ…… ひとまず逃げるぞ!!」
ヴィーラの掛け声と共に二人とヒズチを抱えた趙炎が 敵とは反対方向へと全力で駆け抜ける
ーー目に写る色は 黒だけでいい
ルーナイトはその手をゆっくりと振り下ろす
それと同時に上空に浮かぶ闘技場と同じ大きさの黒い雷の塊がボルマー達に向かって行く
「オーガさん!! 助けないんですか?!」
「…………」
ヴァースの声にオーガは耳を傾けない
「……ルンウェイ!! 今の内に魔力を溜めろ!」
「はい」
「くっ……」
魔力が足りてないヴァースだが 即座に剣を抜いて神器による神の魔装を施す
「待てヴァース! あいつらを助けて得があるのか?」
「俺は…… 我が国は〝お前ら〟とは違う」
ヴァースは雷の如き速さで 黒い塊の下へと潜り込んだ
「天地圧制!!」
左手で魔法を唱え 右手で握る剣に雷を集める
「神級魔法……!!! 〝雷鳳王神の巨太刀〟!!!!」
剣の周りに雷が集まり 巨人が持つ巨大な太刀が生まれた
重力魔法により動きがやや鈍くなった黒い塊に狙いを付けて一気に振り下ろす
「雷と闇…… お前の力は僕と同じだな……」
表面を帯びた雷とヴァースの雷が互角に衝突し合い
黒い球体がその雷を徐々に喰らい尽くす そしてボルマー達への勢いは止まらない
ミルク「くそぉ!! なんとかなんねぇのか!?」
ボルマー「どこへ逃げようと…… あの力からは逃げられねぇよ……」
ヴィーラ「アビア…… 父上…… 私は…… この国を守れませんでした」
誰もが生きることを諦めた その時
「うぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
自身の身長と同じくらいの長さの太刀を振り上げながら 背後から現れる一人の少年
「!!? ラウル!!」
太刀は神々しく光り出し 雷を帯びる黒い塊を真っ二つに割る
尚且つその割れた半球体が浄化し 消滅した
「…………っ!!」
「お前……」
ボルマー達はただただ呆然としてラウルを見つめていた
「この戦いは俺が終わらす!!」
「ラウル 正気に戻ったのか??」
いつの間にか姿を消していたマッドが ラウルが現れると同時に姿を見せる
「マッドテメェ…!! 今までどこにいた?!」
「俺は戦闘向きじゃないの 遠くで視察してました」
「こんの~~……」
自分が正しいと言わんばかりの表情を見せるマッドにボルマーはイラつくが
「それでラウル…… まずその強くなった理由を教えてくれないかい??」
ボルマーから目線を逸らし ラウルへ身を向けるマッドはその異常な強さを問い質す
「……無理!!」
「え……!?」
ラウルはマッドとボルマーを横切り ルーナイトのいる方へと歩く
「ちょっ!! ラウルなんで?!」
「俺もよくわかってないから……」
「……」
「ワハハハ!!! いいねいいね!!」
背後からラウルの頭を叩くオーガ
「さてと…… 十分力は蓄えた 反撃といこうか!!」
やる気に満ちているオーガを無視してラウルは勝手に前進する
「……!?」
「あいつは…… 俺一人で倒すからいいよ……」
「…………」
オーガの頭の中の何かがキレた
王宮内部 王の間
「…………」
ベッドに座り 深く考え込むドレイル
その光景はまるで石像 随分前からそのままの体勢を維持しておりピクリとも動かない
「王よ…… そろそろ自らの指示を!!
戦地にはヴィーラ隊長 そして七大国が奮闘しています
本国がこのまま何もしなというのは……」
「う…… うるさい!!!」
ドレイルは先の事を考えながらも
十年前に聞かされたモーガンのあの訳の解らない話をふと思い出していた
〝 人より一回り神秘の力を持つ神が なぜ人間に負けたと思う? 〟
ーー……っ!! モーガン王…… あの話に意味はあったのですか?
今になってもその意味は私には分かり兼ねます
〝 一人で戦う〝勇気〟と皆で戦う〝絆〟は 近いようで実は全然違うモノかもしれんな 〟
「…………」
ドレイルは急に表情を変え 徐々に顔を上げる
「……ルドレイン王??」
ーー私は…… 目指す指標は間違っていなかった
だが自分の手で何かを変えようとはしていなかったのだ
いつも口だけで国を変えるだけで王の様に自ら実行しようとはしなかった
ただ自己顕示欲を正当化して自身を楽させ…… それでは他の小国の王と変わらない
勇気だけ出せても本当の絆は示せてなかった 王は…… 判っていたのか?
「私は…… 王の器では無かったようだ」
「王?! いきなり何を……」
「おい! 国民の避難は済ませたな!? 全兵を闘技場に集めろ!!」
「え!? 全兵ですか?!」
「七大国なんぞに手柄を渡すか!! 神だろうが怪物だろうが敵は一体だ 私も出る!!」
「え……? え!!! お……王よ!! それは無茶ですよ!!」
焦る家臣を前にドレイルはずっと握っていない愛用の剣を数年振りに壁から手に取る
「〝お前達も武器を取れ〟と王宮にいる全員に伝えろ!!
今…… 国が滅ぼうとしている 王宮にいた方が安全と考える奴は放っておけ」
「…………」
ドレイルは鎧を纏って中庭に顔を出す
「王様!!?」
「王……」
ドレイルは警備の兵や家臣の前を横切って中庭の最先端に立った
そして王宮中に響き渡るほどの声を張り上げて
「聞けーー!!!! この国は時期に滅ぶ!!!!」
「「「「「 !!!? 」」」」」
「だが滅ぶだけだ!! 壊れたモノは直せばいい
だが元凶の壁を壊さねば一歩たりとも前には進めはしない!!!
国と共に滅びたい者はこの王宮に隠れてるがいい
これからのガルバークと民を守っていきたい者は私に付いて来い!!!!」
ドレイルは剣を掲げる それと同時に場に居る全員の声が雄叫びへと変わった
「「「「「 オオオォォォォォォォォ!!!! 」」」」」
ーー王よ…… 貴方にした事に罪を感じてはいません
ですがまだ貴方には遠く及ばなかったようです
しかし国を想う気持ちは負けておりません
今ここに 貴方に一番仕えた家臣が国を守ってみせます




