始まりの国4 次なる進化へ
「同盟組んだなら……!! 最後まで付け合えよ?!」
ヒズチの叫びに便乗するヴィーラ・ボルマー・ミルクが戦塵に飛び込む
「合縁奇縁と言うものでしょうか…… 妖刹さん 妖雷さんをお願いします!」
趙炎も同じくルーナイトの方へと一度降りた穴を駆け登る
「同盟は組んでいないが…… この気は逃さない」
「ヘハハハ…… 出し惜しみしねぇぞ!」
剣を構え 腕を後ろに引き 殺気を放つ
同時に穴から駆け上がった趙炎の燃える槍の先端が光り出し
ヴィーラ「ガルバーク剣術 射程拘束斬・百六十尺!!」
ボルマー「今日一番の渾身の一撃だぁ!!!」
ミルク「竜牙両爪・獣節玄!!」
趙炎「……肉片を残さず ……斬り刻む!!」
容赦ない四つの攻撃がルーナイトの身体を端から崩しに掛かる
それは一瞬にして塵へと変え 元のルーナイトの原型はあっという間に無くなった
「「「 ………… 」」」
しかしその光景を目の当たりにした七大国等の表情には笑みが見当たらず
「……おいおいマジかよ」
各自の出し切った力でも完全に無駄に思えるルーナイトの尋常ではない肉体の再生力
左義手を押さえていたボルマーの顔から一瞬で笑顔が消える
〝 ……アァァァ……アァァ…… 〟
ルーナイトから流れ出た黒い魔蛍がミルク達の場所から移動して少し離れた場所に密集する
「……構えろ」
「不死身だね…… ハハ…… 終わったな」
ミルクが哀しい顔で笑う それは絶望を表していた
密集した魔蛍はやがて一人の人体を創り終えると すぐに無数の触手を新たに生み出す
その触手は襲うこと無くルーナイト本体を覆って渦を巻き 蜷局状に一つの塊となった
「何が起こるんだ」
「んなことはいい! まずは妖雷の処置をしろ」
妖龍と妖刹は妖雷の盾になり 趙炎に応急処置を任せる
「ヌバババ…… こりゃぁもう摘みましたかな?」
「そんなこと言わないで下さいよ……」
ガタルゴの弱気な発言にヴァースは複雑な心境 その後ろからズカズカとオーガが横切る
「王……??」
「チャゴはもう休ませとけ ここからは俺も遊びは無しだ」
オーガは歪模様の神器を何も無い所から取り出し 魔力を集中させる
「七大国の神使い共!! 一斉攻撃で奴を魔蛍ごと消す! 手を貸せぇ!!」
オーガが準備している中でヴァースと火女桜の二人も戦闘形態に入る
しかし次の一手の準備をしていたのはルーナイトも同じ
〝 エゴゥル・ウボロ・ハイゴレ 〟
その蜷局に巻かれたルーナイトを守る壁がまるで尾が巻かれていたかのように無数の触手がバラけ
広範囲に渡る衝撃と共に闘技場にいる者達を薙ぎ払う
「……ガタルゴ!!!」
「ヌバババ…… やってやりますよ……」
ガタルゴは手と手を合わせ 地面に描かれた三つの魔法陣と共に魔蛍と呼応する
「超級魔法・光河の精霊壁!!!」
ガタルゴの高等魔法が発動された
何者も背後に通らせない聖属性の魔法壁
先程と違う所はルーナイトの全体攻撃の出だしで止めるという
半径1㎞に作られたドーム状の壁だった
衝撃波と黒い触手は容赦なく壁に衝突し それと同時にガタルゴの身体にかなりの負担が襲う
「ぐっ……ぅぅ……」
ガタルゴは血反吐を吐きながら膝を地面に着け
「大丈夫ですかガタルゴさん……?」
「他国の者が余計な心配をするな」
気に掛けるヴァースにオーガは澄んだ表情で制止
「生半可で俺の国の家臣をしてきてるわけじゃぁねぇ……
互いの信頼を築き上げてきたからこそ大国が成り立ってんだよ」
「……ぅぅぅぅぉぉぉぉぉおおおおおああああああああ!!!!」
ガタルゴは決死の覚悟だった
生ける瀕死の動物の如く この勝負を生涯で一番大事な瞬間と思わんばかりに敵の攻撃を防ぐ
数分経過でその衝撃は完全に殺された
「ハァ…… ハァ……」
ガタルゴは仕事を終えたかのようにその場に静かに倒れる
「御苦労……」
オーガはルーナイトに目を向けたまま 臣下に労いの言葉を贈る
「創造・維持・破壊を守る我に宿りし神々
ブランフーマ ヴィシュアヌ シーヴァよ
その名の下に力をこの肉体に纏い 君臨を明かせ!!!」
三種の神器を同時に宙に出現させ 三つの力がオーガの全身を包み込む
「神の力を…… 三つ同時だと?!」
後ろにいたヴァースが思わず後ろにのけ反った
〝 ………… 〟
ガタルゴに防がれたことにより多少の怒りを露わに出すルーナイト
しかしこちらも既に次の一手が出来上がっている
〝 フゥ…… 〟
全身に力を入れる どこからともなく黒い雷が辺りに迸り始めた
「ま…… まさか……」
「おいおい…… 忘れてたぜぇ?」
遠くに妖雷を担いで避難していた妖龍と妖刹がその雷を見れば一瞬にして理解する
「あの景品か……」
「ウソだろ……?」
ヴァース達もそれに気付いた
それはヴァース達 神を宿る者達と同じものだったからだ
「〝雷闘神〟の欠片か…… 今まで見せないから効力は無かったと思っていたが……」
黒い魔蛍に神の力 まさに絶望へと近付くこの国にジャミラ達はただただ笑みを浮かべていた
「ハァ…… ハァ…… 着いた」
〝 ラウル君!! 早く行きましょう!! 〟
「わかってますよ! ったくそれでも王妃だったすよね……」
〝 何か言いました?? 〟
「なんでもありません!!」
海岸沿い付近の病棟
「……!! ……ラウル?!」
ベッドの上で寝ていたメモルが急に立ち上がり 闘技場の見える窓を凝視する
「……行かなきゃ」




