始まりの国1 親愛と信頼
「っ……」
「……そう硬くならないでよ~~」
「お前は…… 今この国で暴れてる奴だろ?!」
「今から話すよ……」
ルーナイトはその場に座った しかしラウルは警戒を解かずにその場で構える
「僕は…… っていうか僕の本体は今闘技場にいる既に憎悪の塊だけになっている奴さ」
「…………」
「では僕は誰なのか…… 誰でしょう?」
「……何の茶番だ!!」
ラウルはけして友好的ではない目でルーナイトを凝視し続ける
「僕も君と同じで突然ここにやってきてさぁ…… 誰かが来るまで暇たったんだよ~~」
「何……?」
ラウルは言ってる意味が分からなかった
「正解は魂の一部!
さっき強い衝撃を受けてさ! 一度身体がバラバラになったんだよね~
それでその破片のほんの一握りが僕ってわけ!」
「……」
ラウルは状況がさっぱり追いついてない
「お前は…… つまり何なんだ?」
「僕の本体は怨念に浸食された憎悪の塊だったのに……
何故かもう一人の筈の僕は平常を保っている
いや…… 心がまるで無いと言いますか 自由に出来るといいますか……
他に例えるなら~~…… 良心的な部分なのか…… ホント謎だよ」
「…………」
ラウルは既に理解不能な状態でただただルーナイトの話を聞く姿勢に
「……あの薄黒い光 あれは何だと思う?」
「!?」
ラウルは〝黒い光〟に強い反応を見せた
「お前じゃないのか!!?」
「多分黒い光になったのは僕の所為…… だけどそこに光があったのは……」
「??」
「……そうだったんだ」
ルーナイトは一人で考えこむなり 一人で納得し始める
「そうだったんだね!」
「一人で何を言って……」
「もう僕は消滅するよ……」
「はぁ?!」
「ほんの一部分だけど楽になった…… ありがとうラウル」
「さっきから何言ってんだよ…… 訳分かんねぇよ!!」
ルーナイトは自己満足の笑みを見せる その笑顔は優しさを示していた
「ラウル! 手を出して」
「……何する気だ!」
警戒が解きかけていたラウルにルーナイトは 強引に彼の手を引き寄せて
「〝この力を君に〟って……」
「誰が?!」
「僕の愛する人からさ!! それを闘技場にいる本体の僕に」
「ちょっ…!! 待て!! 話が全く……!!」
ラウルは必死に呼び止めるが ルーナイトそのまま背を向けて次第に半透明になっていく
〝 ラウル…… 君は僕の過去を…… 取り憑いたときに見たよね? 〟
「……」
ラウルは夢だと思っていた
気が付く前に見た夢の中の映像
そこには幸せな笑みを余すことなく溢れ出ている家族の姿 その中心にいるルーナイト
文字通り幸せな一時だった そして突如訪れる地獄
業火の中で死す母親 成す術なく絶望に追い込まれるルーナイト
その痛みは一瞬ではあるがラウルの心を激しく突き刺すものだった
〝 君は僕がしたことは…… 復讐は正しかったかい? 間違いかい? 〟
「……っ!!」
ラウルは一瞬戸惑いを見せたが その後すぐに答えが出る
「……正しいで 良いんじゃないかな?」
〝 ……!! 〟
ラウルの返答にルーナイトは驚きを隠せない
そして遠くを見るように目線はラウルから逸れていって
〝 君がそう言うとは思わなかったな…… 〟
「〝俺は〟…… だけどね」
〝 ……? 〟
ラウルはルーナイトをジッと見つめて言った
「親の愛情ってもんは正直わかんねぇ……
多分ホントの親じゃ無いから何も思わないのかもしれないけど
ずっと語り掛ける声が お前に必死で伝えようとしている」
〝 ……ママ やっぱりそうだったんだね 〟
「光の正体はあの場で死んだお前のお母さんだったんだ……
そしてずっとこう言っている……」
両手を伸ばし ルーナイトに触れたいかのようにラウルの身体が前に傾きそして
〝 間違っているに決まってるじゃない!!! 〟
ラウルの姿は光に覆われ ルーナイトには十年前を最後に見た母親の姿へと変わっていた
ーー親の愛情に理屈は無い 旅をしていてもよく見るが
子を叱る言葉は誰でも使ってる安い物の筈なのに……
ルーナイトと母レベッカを側で見ているラウルの目からは微量の涙が
ーーいつもいつも…… 羨ましい……
レベッカはルーナイトを包み込むように抱き締めていた
そして二人の身体が徐々に魔蛍へと還り始め ルーナイトは真っ白な上空へと昇る
〝 ラウル…… 後は頼んだよ 〟
そういうとルーナイトは光と共に消え 残ったレベッカが話し掛ける
〝 ラウル君…… 〟
レベッカはラウルの側に近寄り 頭を軽く撫でてくれた
〝 この力は親と子が生み出す強い思い…… その力をあなたにお貸しします
言い方は悪いけど これから闇に堕ちてしまったルゥの本体を助けて出して欲しいの 〟
「…………」
〝 そして…… 友達になってくれてありがとう 〟
「いや…… 俺はまだ……」
〝 あの子はちょっと変わってるから 王国の王子と言えど人との接し方が苦手でね
ちょっと心配してたところもあったの……
でもこっちの国でのモルガナ様やヴィーラ君 アビアちゃんと遊んでるとき
次第に笑顔になっていくルゥを見ててね その時の表情が忘れられないって思ってたら……
あなたと話してた今のルゥもその時の顔を見せてくれた 〟
「っ……」
〝 ルゥをよろしくお願いね 〟
レベッカは最後に笑顔を残し 身体を光の粒子に変えてラウルの身体に纏った
ーー友達…… ねぇ……




