滅亡へと導かれる国1 悪の創世
ーーパパ…… パパ……
「ルーナイト お前は我が王族の代表として
今は遊んでいても後には国を背負っていかなければならない男
それをいつも自覚しておけよ」
「はい!」
「まぁまぁ~~ ルゥはまだ五歳なんですから」
ーー……ママ
「矯正してる訳じゃなだろ~? だが時が経つのはあっという間だと話しているんだ」
「別にルゥが王になってもならなくても良いのです! 私はこの子に自由を与えます」
「何を言っているんだレベッカ!?
我が家にはルーナイト一人しかいないんだぞ? 他に誰が王を継ぐというんだ?!」
「誰だっていいのです! ルゥならルゥ! 共に支えて来た大臣がなるのならそれも未来の選択
国が平穏に保たれるのなら誰だろうと構いません!!」
レベッカはルーナイトの頭を優しく撫でながら微笑む
「ルーナイト あなたはあなたのやりたい事を成しなさい
そうすれば自ずと自分の進む道が見えますから」
ーー……そう ……貴方は自由に
「ママ!! ママぁ!!!!」
「ルゥ!! あなたは逃げなさい 一人でも逃げるのよ!!」
「レベッカ様!! 貴女様もお逃げ…… ぐわぁぁっ!!」
燃え盛る町の中を ルーナイトとレベッカそして複数の護衛兵が当てもなく逃げていた
「ちくしょうモーガンめ!! 国ごと裏切ったのか?!」
「王は…… ディゴイル王は無事であられるのか?!」
護衛兵も混乱し先が真っ暗の中 いつか放火魔に捕まっていた
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
「くそっ!! うあああぁぁぁぁぁ!!」
兵が次々と火だるまになり 放火魔の持つ火炎放射器の口がレベッカに向かれた
「……ハァ ……ハァ……」
レベッカは目を瞑り 覚悟を決めたようにルーナイトの方へと笑顔を見せた
「ルゥ…… ありがとう」
レベッカはルーナイトの額に額を当て 優しく抱きしめる
そして額をゆっくりと離し 放火魔の方へとゆっくり歩き出した
「……ママ ……ママ?!」
振り向いてはいけない
振り向いてよ
「な……!! 何だこのアマぁ!!」
「こいつさえ殺せれば良いんだ さっさと殺れ!!」
レベッカは我武者羅に抵抗した
「ルーナイト!! 生きて!!」
「…………!!」
ーー逃げなきゃ
ルーナイトは放火魔の隙間を猛ダッシュで切り抜け
そのまま真っ直ぐ走り続けた すぐ後ろで死ぬまで残るであろう悲鳴を聴きながら
「ルー…… ナイト…… ォ…… ォォ……」
振り向いてはいけない
振り向いて 欲しかった
帝国の西海岸
ルーナイトは岩陰に身を潜めて隠れていた
「ハァ…… ハァ……」
「どうした少年!!」
「…………」
鋭い眼で睨む少年の目の前に笑顔の男が現れる
「相当な闇を見てきたようだな」
隅に渦巻く少年の頭を掴み 軽々と持ち上げた
「っ……!」
「どうした!? 悔しいんならやり返してみろ!!」
「殴ら…… ない……」
少年は半べそを掻きながら呟く
「ママと…… パパとの…… 約束だから!!」
「そのママとパパを殺したのは誰だ?!」
「うぅぅ…… ぅぅ……」
「この国だ!!! そうだろ!!!?」
「うぅ…… あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「お前の両親を殺した相手をそれでも許すか?! 仲良しこよしが幸せか?!! あぁ!?」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ルーナイトは男の腕を振り払い 両腕と頭を地面に擦り付けて泣き叫んだ
国中に響き渡るかの様 訴え掛けるかの様に泣き続けた
数日が経ち
「あれから二日…… いつまで不貞腐れてるんだクソガキ~~?」
「…………」
「ハァ…… 無視ですか?」
「誰だ……」
「はい?」
「お前はどちら様だって聞いてるんで…… 聞いてるんだ!!」
「ほぉ…… ほぉほぉ!!」
男にとって初めての少年からの言葉 故に感動した
「俺は鬼英 名は自国特有でな…… でも呼びやすいだろ??」
「……」
「んでお前は?」
「…………ルーナイト」
「ほぅ!! でルーナイト これからどうする気だ?!」
鬼英が話しかける度 ルーナイトは一度黙りこくる
「はぁ……」
深く溜息を漏らし 鬼英は荒れ果てたガルバークの町を見つめた
「一夜にして変わるもんだなぁ~~ って思わないか?」
「…………」
「……ハァ~~~~」
再び溜息を垂れ流すが
「なんで…… この国の王は国を捨てたんだ……」
「……さぁな 俺は知らねぇ」
「俺は?」
ルーナイトはいきなり質問攻めに入る
「おっと!! そこからは俺の質問の回答次第だな」
鬼英はルーナイトに手のひらを押し付け ニヤッと笑う
「俺について来い お前の復讐の手伝いも出来るぜ」
「……え?」
ルーナイトは首を傾げた
「俺達のやっている事は 謂わば世界の改善
上辺だけで国を思っても裏に隠された汚点を表には出さない
そんな人間だけが集う世界が今の世の中だ」
「……」
「お前が今まで会った中によ 半分以上露出しているボロボロの服を着てさ
見た瞬間に反吐が出そうな人間を見たことがあるか?」
「……?!」
話し続ける鬼英に意味がまるで分からないルーナイト
さっきから呆然と鬼英の顔を見つめているだけだった
「表では世界に数本しか無い酒をこの世の最高の酒と言う奴がいれば
裏ではドブに捨てられた酒の混じったドブ水を最高の酒と言う奴もいる
お前は今までどっちの人間を見てきた?」
「……」
ルーナイトは黙りつつも 記憶の中で見つけたとある異例の人種を思い出した
「裸の人間…… 鎖に繋がれた黒く汚れた生き物を見たことがある」
「それは古来から続く社会のシステムだ」
「システム??」
「知りたいんなら付いて来い」
鬼英は海岸へと向かったが
ルーナイトはすぐには付いていかなかった
町へと赴いて母を捜す
「ドレイル王バンザーイ!! バンザーイ!!! バンザーイ!!!!」
町のあちこちでドレイルに感謝を叫ぶ国民達
光が差す場所の裏では遺体を回収し 泣き崩れながら引き取る家族の光景もルーナイトの目に映る
そんな中でルーナイトは喜ばず悲しまずの無表情で
ましてや母親が生きているなどとは微塵も思ってはいなかった
町を一回りし 鬼英のいる海岸へと自然に到着すると
「いつでも出航出来るが…… 腹は決まったか?」
「……」
ルーナイトは目を瞑り 今までの思い出を振り返る そして
「復讐の為に生きる」
ーー〝復讐の放旅者〟 それが僕の進む道だ




